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「旦那も結構なSだと思ってたんですがねェ・・・
実はそれ程でもないんじゃねぇですかィ?」
新八に隠れて甘味屋に行った帰り、偶々店で会った沖田君の
言葉に、俺は暫しポカンとしてしまった。
いやいや、それ程でもねぇってどう言う事よ。
万事屋に帰ると、新八は買い物にでも行っているようで
誰も居なかった。
神楽は何時ものように遊びにでも行っているのだろう。
よし、ナイスタイミング、俺。
若干、隠れて甘味屋に行ったり、それがバレなくて良かった・・・と
安心する自分が虚しく思えるが、仕方が無い。
だって怒ると怖いのだ、新八は。
そこまで思い、俺は先程の沖田君の言葉を思い出した。
確かに、こんな風に怖がるのはSっぽくない。
いや、違うっ!俺は生粋のSだった筈っ!
・・・と、とりあえずソファに腰を降ろし、俺は深く考え始めた。
新八や神楽辺りに知られたら、
「またくっだらない事を・・・」
と馬鹿にされそうだが、そんな事ないから。
銀さんの長年のポリシーが崩れるかどうかの
重大問題だから、これっ!!!
って事で、真剣に考えてみよう、うん。
まずは・・・アレだ。
さっきのは新八が怒るのが・・・ではなく、
新八に怒られて嫌われるかもしれないのが怖い
・・・ってやつだな。
うん、それなら仕方がない。
幾らSでも、好きなヤツに嫌われるのはイヤなもんだ。
だからさっきのはなしって事で・・・
で、普通に他人を甚振るのは好きだよな、うん。
ってか弄くるのは好きだよ、だって笑えるもん。
あ、でも大丈夫だよ?人様には迷惑掛けてないから。
ちゃんと人を選んでやってるからね、コレ。
ま、そいつの迷惑は考えてないけど。
そこら辺は親愛から来るものだと言う事にしておいて欲しい。
じゃないと単に俺の性格が悪いだけになっちゃうからね?
ちなみにさっちゃんは論外ね。
あんなに喜んで弄られに来ると、完璧引くから。
ヤな顔されるからいいんだからね、コレ。
なのであいつは、ある意味最高のMで
最強のSなんだろう。
是非そのまま一人でプレイしていって欲しい。
・・・あ、なんかやっぱSっぽくね?
やっぱり銀さん、Sじゃね?
そこまで考え、俺は一つ息を吐き、だらりとソファに身を預けた。
そうだよ、だって俺、新八の泣き顔なんて大好物じゃん?
我が侭言って困らせたりするの、大好きじゃん?
なんだよ、心配して損したぜ。
ったく、あのヤロー、どこ見て物を言ってんだってんだよ。
小さく舌打ちをしつつ、そのまま今はいない新八の事を考えた。
はっきり言って新八は、俺のツボど真ん中だ。
ま、痛めつけたいとは塵ほども思わないけれど。
そこら辺はちょっとドSの道から外れてるかもしれないが
仕方が無い。
新八が痛い目に合うのは絶対嫌なのだ。
それにあいつは、自分の痛みではきっと泣かない。
大抵が他人の為に流す涙だ。
その大部分が、俺が傷付いた時に流す涙だ。
ちょっとばかりヤンチャをして帰ってくると、新八は無言で手当てを
してくれる。
その顔は、俺が無茶をした事を怒っていて。
共に行けなかった自分の力不足を悔やんでいて。
俺の傷に悲しんでいる。
その時に浮かぶ涙に、何度ゾクリとした事か。
・・・って、アレ?
なんかこれだと俺が痛い目にあってない?
なんか痛い目に合って喜んでる人みたいじゃない?
再び浮かんできた疑惑に、俺はポカリと天井を見詰めた。
だがすぐに我に返り、プルプルと頭を振る。
いやいや、大丈夫。
俺は新八の涙にゾクゾクしているのであって、
決して痛みにゾクゾクしてる訳じゃないから。
新八の泣き顔が大好物なだけだから。
新八を泣かしたいだけだから。
あ、でもそうすると俺が痛い目に合わないといけねぇのか?
あれ?やっぱSじゃなくね?
堂々巡りになってしまっている思考の奥で、不意に玄関が開く音が
耳に入り込んできた。
次に俺の名前を呼ぶ新八の声。
「あ、やっぱり居た。もう、何処に行ってたんですかっ!」
買出しに付き合って貰いたかったのに。居間に顔を出し、
唇を尖らしてそう言う新八に、俺はヒラヒラと手を振る事で
答える。
だって今大事な考え事の最中だしね。
銀さんの真実が問われている所だから、これ。
すると、そんな俺の態度が気に障ったのか、買い物袋を持ったまま
新八が俺の元へとズカズカやって来た。
そして俺の前に仁王立ちすると、荷物を置いた手を腰に当て、ギロリと
強い視線を落としてきた。
「ど・こ・に、行ってきたんですか!?」
・・・や、怖いからね、それ。
なんか言葉も出ない勢いの怖さだからね、本当。
決して隠れて甘味屋に行ったのがバレるのが怖いとか、
そう言うみみっちい事から何も言えないとかじゃないから。
何も言えず無言で視線を逸らす俺に、新八が深く息を吐いたのが判った。
そして何故だか感じる、暖かい空気・・・って、えぇ!?
硬直し、それでもなんとか視線を動かせば、
そこには形のいい美味しそうな耳と首筋が・・・
そして俺の耳の直ぐ傍で聞こえた、クンと鳴る、新八が息を吸い込む音。
ちょ、何してくれてるんですか新八君んんん!!!
そんな至近距離でオマッ!
有難いじゃねぇかコノヤロー!!!
突然の行為にただただ硬直していると、俺の頭が活動し始める前に
新八はなんの躊躇もなく、俺に向けて倒していた上半身を起こしてしまった。
そして再び腰に手を当てて、呆れた顔で俺を見下ろしてくる。
「アンタ・・・甘味屋に行ってましたね?」
「へ?」
相当間抜けな顔をしていたのだろう、新八は深々と溜息を吐くと、
先程の行為の理由を説明してくれた。
新八曰く、
甘い臭いがすれば甘味屋。
タバコの匂いがすればパチンコ。
・・・だそうだ、俺の行った先は。
成る程、どうりで何時もバレる訳だ。
ちなみに怪我しても直ぐ判りますからね、隠さないで下さいよ。との
お言葉も貰った。
・・・鼻が利くもの考えもんだねぇ、こりゃ。
でも隠したくなる男心も判って下さい。
特に糖関係。
苦笑し、そんな事を考えていると、新八が大きく息を吐いて
腰に当てていた手を降ろした。
そして置いてあった買い物袋を手に取ると、ツンと顔を背ける。
「折角お団子が安かったから買ってきたのに。
銀さんはなしですからね。」
そう言い捨てると、新八はそのまま俺に背を向けて
居間から出て行こうとした。
えぇ!?うっそ、マジで!!?
新八の言葉に、俺は急いでソファから立ち上がり、新八の手を取ると
速攻で謝る事にした。
だってアレだろ?
一人で食べる甘味よりも、新八と食べる団子の方が
美味しいに決まってんじゃねぇか。
何考えてたんだよ、少し前の俺っ!
勝手に隠れて甘味なんて食いやがって・・・反省しろ、反省!
すると、俺の謝罪を受け入れてくれたのか、新八の口元に笑みが
浮かぶのが見えた。
「もう・・・明日は糖分なしですからね?
で、今はダメです・・・夕飯の後、三人で食べましょ。」
そう言ってやんわりと笑う新八に、
あぁ、俺はやっぱりS失格なのかもしれないと・・・思ってしまう。
ま、いいけどね、別にもうそれで。
沖田くんも偶には鋭いトコさすもんだ。
だって泣き顔よりも何よりも、この笑顔の方がずっと好きだし。
何より新八が居れば、どんなのでも全然OKってなもんよ、本当。
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ウチの坂田がSっぽく見えない理由。