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今日はある意味決戦なのだと思う。
新八は何時もの様に万事屋へ行くと、玄関の前で立ち止まり、
大きく息を吸った。
そう、本日はバレンタインデー。
贈る側の女性以上よりも、男性のほうがドッキドキな日だ。
本来なら、新八もそう言うドキドキ感を味合わなければ
いけないのだが、それはもういい。
既に朝一番で姉であるお妙に味合わされたばかりだ。
お陰でドキドキ・・・と言うより心臓が破裂するかの如き
ハラハラ感を味わった。
ちなみに今無事にここまで来れたのは、近藤と言う尊き犠牲が
あったからだ。
有難う、近藤さん。
貴方のお陰で手作りチョコから市販のチョコへと
格上げされました。
多分今日一日再起不能であろう近藤に、もう一度心の中で
手を合わせると、新八は覚悟を決めて玄関の扉を開けた。
そう、何時までもグダグダしていられない。
今日は糖分王との戦いの日なのだ。
・・・やっぱり予想通りか・・・
新八は朝食を終え、食器を洗いながら一つ息を吐いた。
とりあえず何時もの様にしよう。と、新八は朝ごはんを作り、
神楽や銀時を起こして朝食を食べさせた。
その光景は本当に普段通り・・・だったのだが、約一名、違う人物が居た。
銀時である。
自分では何時も通りにしているのだろうけど、まず視線が違う。
チラチラチラチラと神楽と新八の間を行ったりきたりしているのだ。
そして会話。
何気なさを装いつつも、懸命に今日がバレンタインデーだと言う事を
主張している。
普段以上にウザさ倍増だ。
ちなみに新八も神楽もそれらを軽く流している。
だって普段から糖分は控えろと言っている身なのだ。
それを自ら与えたくは無い。
けどあそこまでソワソワしている銀時も、あまり見たくはない。
ってかあの年でそこまでソワソワするってどうよ?
どちらかと言うと僕の方がそうしなきゃいけない年齢じゃね?
そんな事を考えながら、またもや溜息を零していると、不意に
袖をクイクイと引かれた。
「あれ?どうかしたの、神楽ちゃん」
そう言えば、神楽は人差指を立てて、シーッと新八の言葉を制した。
そしてチョイチョイと手招きをするので、新八は皿を洗うのを止めて
そっと神楽に耳を近づける。
「私、ちょっと行って来るヨ。」
「あぁ、もうそんな時間だっけ?」
神楽の言葉に、そう言えば今日は友達の家でチョコレートを
作る約束をしていると言っていた事を思い出す。
どうやら銀時を驚かしたいらしく、内緒にしといてくれと
頼まれてたっけ。
気をつけて行っておいで。そう言い神楽を送り出そうとした所で、
新八はある事に気付き、去りかけていた神楽を呼び止めた。
そして流しの下にある棚から何かを取り出すと、それを神楽へと渡す。
「銀さんには内緒ね」
「おぉ!有難うネ、新八。私のはまた後で渡すアル」
神楽は手渡された物をニッコリ笑ってポケットへと仕舞うと、
今度こそ外に出掛ける為、台所から出て行った。
それを見送りながら、新八は再び息を吐いた。
そう、実はちゃんとチョコレートを用意しているのだ。
用意はしているのだけれど・・・やっぱり素直には渡せない。
渡したら糖分解禁だと言って、堂々と貪り食うに決まってるのだ。
でも、渡したいと思ったからこそ、ちゃんと用意はしてある訳で・・・
なら他の物にすれば良かったのだが、やはりバレンタインには
チョコという感じがする。
あ~、僕ってこんなにグルグル考えるヤツだったっけ!?
いや、こうまで考えさせるほど血糖値が高いのに頓着しない
あの天パが悪いんだ。
「あ?なんだ、神楽出かけたのか?」
そんな事を考えていると、不意に背後から声を掛けられた。
振り返ってみれば、のっそりと台所に入ってくる銀時の姿が。
「えぇ、なんか友達と約束してるらしくって」
さっき出掛けましたよ。そう言い、新八は銀時に背を向けると
洗い終わった皿を丁寧に布巾で拭い始めた。
「ふ~ん、友達ねぇ・・・」
そう呟くものの、銀時は台所から出ようとはしなかった。
・・・と言うか、先程からチラチラチラチラと視線が痛い。
新八は背中に銀時の視線を受けながらも、そ知らぬ顔で皿を
拭き続けた。
全く、外に出ればそれこそ顔見知りからワンサカとチョコを
貰えるだろうに。
そう、仕事柄かその性分故か、銀時の顔は広い。
多分今日なんて道を歩けば義理・本命関わらず沢山のチョコを
手にする事が出来るだろう。
なのにここに居るって言う事は・・・
一つでも多くの糖をゲットしたいと言う事だろうか?
なら余計渡したくないな~。等と思っていると、窺うような声色で名前を
呼ばれた。
振り返ってみれば、やっぱりソワソワしている銀時が。
なんだろう、やっぱり糖分王としても、この日に自らチョコを
強請るのは気が引けるのだろうか。
「なんですか?銀さん」
コトリと首を傾げ、新八が問い掛けると、銀時は忙しなく視線を
彷徨わせた。
心なしかその顔は赤く、そんなに恥ずかしいなら諦めればいいのに。
と新八が思っていると、漸く覚悟を決めたのか、銀時が再度新八の
名を呼んだ。
「だからなんですか?銀さん」
って言うか、ここまでしてチョコが欲しいと言うのなら、
もう上げてしまおうか。
一気に食べないって約束させればいい事だし。
苦笑を浮かべてそんな事を思っていると、不意に銀時が
新八に向けて手を差し出してきた。
その手に、新八の目がパチクリと瞬く。
銀時は新八の表情にパッと目を逸らすと、ガシガシと自分の頭を掻いた。
「ったく、そこまで驚くなよ。目ん玉落っこちるぞ?」
「や、だってこれ・・・僕に?」
そう聞けば、銀時は視線を逸らしたままコクリと頷いた。
と言うか驚くなと言う方が無理だろう。
差し出された銀時の手。
その手の上には、可愛くラッピングされたチョコが乗せられているのだから。
「ま、なんだ。なんか逆チョコってのがあるらしくてよ。
だからまぁ・・・そう言うことだよコノヤロー」
オラ。と、中々受け取らない新八に焦れたのか、銀時は新八の手を
取ると、手にしていたチョコをその手に落とした。
そして新八がちゃんとチョコを手にした事を見届けると、
クルリと背を向けて台所から出て行く。
「あ、言っとくけどアレだぞ?銀さんが糖分やるなんて
ものっそい事だからね!?その辺弁えて確り隠れて食え。」
間違えても目の前で食うんじゃねぇぞ!!等と照れ混じりに怒鳴りながら。
「確かに凄い事かも・・・」
新八は既に見えなくなった銀時の背中に、呆然とそんな事を呟いた。
そして自分の手の中にある物に視線を落とし、一気に顔を赤くする。
ってかあの人、チョコを貰いたくてソワソワしてたんじゃなくて、
渡したくてソワソワしてたのかよっ!
しかも僕にっ!!
反則だっ!もうものっそい反則だ、これっ!!!
新八はチョコを握ったままその場にしゃがみ込むと、手の中にある
チョコを見詰めた。
「凄すぎて、隠れても何も、食べる気がしないよ」
寧ろ大事に取っておきたい。
そんな事を思ってしまう自分に、益々顔が赤くなる。
あぁ、でも・・・
新八は棚に仕舞ってある銀時用のチョコを思い出した。
どうせなら僕も今あげて、一緒に食べてしまおうか。
目の前で食べられるのは恥ずかしいけど、きっと物凄く美味しい筈だ。
新八はその考えにやんわりと頬を緩めると、銀時から貰ったチョコと共に、
自分のチョコも携えて、今頃恥ずかしさのあまりのた打ち回っているだろう
銀時の元に行く為、居間と足を向けた。
仕方ない。本日限定で糖分解禁ですよ。銀さん。
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今年の腐女子の救世主・逆/チョコ(おいι)