[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
何時も通り仕事の無い万事屋。
その中で一人、忙しそうに部屋の中を掃除している新八の元に、
トコトコと神楽が近寄ってきた。
「何?酢昆布もう食べちゃったの?」
ありそうな事柄に、掃除機を止めて問い掛ければ、フルフルと首を
振られた。
「違うネ。アレはちゃんと言われた通り一つ一つ
大事に噛み締めながら食べてるから大丈夫ヨ。
それよりも爪切りどこネ?」
神楽はそう言いながら、人差指と親指をカリカリと弾いている
自分の指先に視線を落とした。
つられて新八も神楽の指先を覗き込む。
「あぁ、ちょっと伸びてるね。待ってて」
そう言うと、新八は掃除機を置き、箪笥の上部にある小物入れから
爪切りを取り出してきた。
「はい、ちゃんと新聞敷いて切ってね?」
新八の言葉に、判ってるネ。と答え、神楽は居間の床へと
新聞を敷くと、そのまま直に座り込み、パチリパチリと爪を切り出した。
その姿を見て、新八も自分の指先へと目を落とす。
日頃気をつけてはいるものの、ちょっと伸びているような気もする。
新八は序だし・・・と、神楽に次貸してくれるよう頼むと、
掃除の続きを再開した。
「あ?何新八、爪切ってんの?」
その日、いい加減キレたお登勢に呼び出された銀時が
疲労感も顕に帰ってくると、先程まで忙しなく家事をしていた
新八がパチリパチリと爪を切っていた。
「えぇ、ちょっと気になったんで」
答えながらも視線を上げず、真剣な表情で爪を切っている新八に、
銀時は思わず自分の指先へと視線を落とした。
が、そこには意外にもきっちりと切り揃えた爪。
「銀ちゃん、変なトコでマメアルナ」
伸びてるトコ、見た事ないヨ。同じように銀時の爪を
覗き込んでいた神楽が、意外そうな声で呟いた。
その額をペシリと叩き、銀時はソファへと腰を降ろす。
「変なトコってどう言う意味だよ。
言っとくけどなぁ、これぐらい嗜みよ、嗜み。
自分から見て、白い所が見えたらアウトだから」
「その割りに白い所、見え放題の跳ね放題ヨ」
「頭の事じゃねぇよ。
ってかこれが見えなくなったらアウトだろうが、逆にっ!」
「まぁまぁ。でも本当、そこら辺はきっちりしてるんですよね、銀さん。」
やっぱり危ないですもんね。使い終わった爪切りを仕舞いながら、
新八が言うと、そうそう。と大袈裟な程大きく銀時が頷いた。
それを見て、新八は少しは仕事について真面目に考えているのだと
ホッと胸を撫で下ろす。
万事屋と言うだけに、入ってくる仕事は色々だ。
手先の器用さを必要とするものから、力仕事。
それに偶に巻き込まれてしまう、危険な事柄。
・・・まぁ最後の方はこっちから首を突っ込んでしまう場合も
あるのだけれど。
でもそんな時、爪と言えども伸びていれば危ない時もある。
そこら辺、やっぱり判ってるんだな~。僕も確りしなきゃ。
新八は一人そう納得し、敷いてあった新聞を屑篭へ捨てようと
腰を上げ、
「やっぱ傷付けたくないからね、新ちゃんの。
これからもずっと銀さんが
お世話になるもんだからさ。
だから何時でも何処でもOKなように、
常日頃から爪には気をつけて・・・」
「そっちかぁぁぁぁ!!!!!」
そのまま勢い良く銀時の顔に蹴りを繰り出した。
「なんですか、アンタ。ってかそっちって何!?
や、そっちなんて知るかボケェェェ!!!」
新八の蹴りを受け、ソファに倒れこむ銀時を前に、
顔を赤らめて怒鳴る新八。
そこに、フラフラと頭を振りながら銀時が体を起こした。
「いや、そっちも何もナニ・・・」
「言わせねぇよ!?
何なんですかアンタ。そんな事しか考えてないんですかっ!」
「だからぁ、そんな事も何も、新八の事しか考えてません」
清々しいほどきっぱりと言い切る銀時に、思わず神楽の拍手が
送られる。
が、新八はフルフルと体を震わせるばかりだ。
「あれ?ナニ、新ちゃん。銀さんの言葉に感動しちゃった?」
やだなぁオイ。さっきのも照れ隠しかよ。等とニヤケタ顔で
言う銀時に、新八はゆらりと落としていた顔を上げた。
その頬には先程の赤さなどなく、代わりに張り付いていたのは
恐ろしいほどの笑顔だ。
その顔を見て、神楽はそろりとその場を抜け出す事にした。
だってアレは、姉御が時折見せる
真の姿そっくりネ。
だが銀時は気付かないようで、新八の笑みにニマニマと口元を
緩めている。
そんな銀時に、新八はより一層笑みを深めると、手にしていた
爪切りを目の前に翳した。
そして・・・
「そうですか・・・でもそんなに気を使ってもらうのも悪いので、
僕が責任持って剥がしてあげます、ソレ」
そう言い、ゆっくりと銀時に近付いていく新八。
「え?あ、あの・・・新ちゃん?」
新八の雰囲気に、流石に何か感じ取ったのか、銀時が
ソファの上を後ずさるが、その分だけ新八も前に進んでくる。
「や、銀さんそう言う風に気を使うのも大事だなぁとか
思ってるから、別にお前が気にしなくても・・・」
「いやいやそんなに遠慮しないで下さいよ。
大丈夫ですって。これからはちょっと生えてきても
ズバズバ剥がしていきますから。」
「いや、そんな事したら仕事もナニも出来ないからね?
なんにも手ぇつけられないからね!?」
「やだなぁ、元々仕事もナニもないでしょ?
いいからさっさと手ぇ出せやコラァァァ!!!!」
「いやぁぁぁぁぁああっ!!!!!」
「似合わない事するからネ、銀ちゃん」
銀時の絶叫を聞きながら、神楽は綺麗に切り揃えられた爪を
眺めた。
**********************************************
変な所で素直な坂田。