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「時々可愛く見えちゃうんですよね~」
そう言って新八は遠くに視線をやりながらパクリと溶けかけた
アイスを口にした。
同じように川原へと続く坂へと腰を降ろし、アイスを口にしていた
沖田は、へ~。と適当に相槌を打った。
巡察の途中、新八を見掛けた沖田が、アイスをエサに
暇潰しに誘ったのはい先程の事だ。
その後、キラキラと光る水面を見ながら、どうでもいい様な事を
話していたのだが・・・
「とりあえず俺に向って言ってんなら、お礼代わりに
今すぐそこの川のソコに沈めてやらぁ」
「安心して下さい。時々も何も
全くそう見えた事ないですから」
念の為・・・と沖田が聞いてみると、スパッと断ち切られる。
とりあえず男として可愛いと見られる事は嫌なので、
断ち切ってもらえて良かったのだが、断ち切るにも程があるだろう。
沖田はなんとなく面白くなさそうに あ、そう。と告げると、
残っていたアイスを全て口に入れ、手元に残った棒をフラフラと振る。
「じゃあ誰の事言ってんでィ?
まさかチャイナじゃねぇよなぁ?」
「何言ってんですか、そんな事ある訳ないでしょ?」
またもやスパッと断ち切られ、沖田は少しだけ目を丸める。
あぁ言ったものの、一番確立が高いのは神楽だと思っていたのだ。
性格と行動と頭と・・・まぁ言い出したらキリがないが、
色々と問題があるものの、パッと見は可愛らしいといえるだろう。
あくまでパッと見、
しかも完璧傍観者の立場として・・・だが。
だが、隣でポトリとアイスを落とし後悔している新八は
喧嘩もするしパシリにもされているのに、
神楽の事は大層可愛がっている。
それはもう、妹を通り越して娘の様な感じだ。
その新八が、神楽の事を可愛いと思ってないとは・・・
「神楽ちゃんは何時も可愛いと思ってますもん
時々じゃないです」
意外だ・・・と思ってたら、やっぱりそうではなかった。
と言うか、あの乱暴者と言う言葉は甘すぎるような少女の
身近に居て、どうしてそこまで可愛いと思えるのか・・・
あぁ、そう言えばあの放送禁止用語使いなマニア向けアイドルや
最怖の姐さんも新八にとってみれば敬愛するべき女性だったっけな。
きっと普通の女性と接した事がないからの発言だろう。
そう納得し、沖田は隣で神楽のいい所を語っている新八に
視線を向けた。
へ~、食べ終わった皿を運んでくれたんですかィ。
でもその後割られちゃ意味ねぇんじゃねぇのかィ?
しかも運ばした新八が悪いと逆切れされた・・・と。
「・・・とりあえず新八、眼鏡の度、変えなせぇ
後、頭の中の回路をちゃんと繋ぎ合わせなせェ」
「・・・どう言う意味ですか」
沖田の言葉にじっとりとした視線を向けてくる新八に、
そのままの意味でさァ。と返すと、沖田はその場に寝転んだ。
「・・・で?」
「何がですか?」
新八は沖田からアイスの棒と袋を受け取ると、自分の分も一緒に
持っていたビニール袋へと入れ、問い返した。
「何がじゃねぇよ。さっきの時々可愛く見えるって
やつでさァ」
このままじゃ気になって昼寝も出来やしない・・・と、
一体誰の事でィ。そう問い掛けると、新八はあぁ。と声をあげ、
次に深々と溜息を吐いた。
「それが・・・銀さんなんですよ」
「・・・・へ~」
「や、何ですかその一切の感情が篭ってない声は。
それにその目!ちょ、やめて下さいよ。
泣きますよ、僕」
「泣きたいのはこっちでさァ。
ってか泣いたらそこら辺から旦那が出てきそうだから
止めて下せェ」
「・・・アンタ、銀さんをなんだと思ってんですか。」
「新八マニア」
「・・・本気で泣きたくなる様な事をさらっと言わないで下さい」
でも、そんなのでも見えちゃうんですよ、可愛く・・・
と新八はカクリと肩を落とした。
「銀さんが呑みに行く時って大抵泊まるんですけど、
時々あの人、帰ってこないんですよ。
で、朝帰りしやがってコノヤローとか思って朝玄関開けると、
其処で寝てるんですよ、大の字で。
しかも何処で拾ってきたのか、看板とか抱き締めたまま、
僕の名前とか寝言で言ったりして。
ま、見ない振りして放置してるんですけどね。
え?キュンって来ないのかって?
う~ん・・・どっちかって言うと、ウザッてなりますね。
其れ故の放置ですから。
後、怖いテレビとか見た後、無理矢理泊まらせたかと思うと
夜中ず~っと喋り捲ってたりとか?
あ、別に大変じゃないですよ?
大抵ほっといて僕は速攻寝ちゃうんで。
他にも天パなのに寝癖気にしたりとか、立ち上がる時とか
必死になって『よいしょ』って言うの我慢してたりとか。
それでもやっぱり言っちゃって、ウザイくらいに落ち込むトコとか?
そう言うの見てると、可愛いな~って思っちゃって・・・」
なんでかなぁ?と再び溜息を吐く新八に、沖田は
呆れた顔で見返した。
それは既に可愛い大人ってよりも、
可哀想な大人だ。
とりあえず思った事を告げると、新八は一瞬キョトリと目を丸くし、
次に
「あぁっ!」
とポンと手を打った。
どうやら彼の疑問は無事解消されたようだ。
沖田はしきりに頷いて納得している新八を余所に、
心置きなく昼寝をする為、ゆっくりとその目を閉じたのだった。
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暑いので坂田苛め。(え?)