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本日も朝っぱらから通い慣れた三途の川へと旅立っている近藤を
介抱していると、見慣れた人物が庭へと姿を現し、
「お早うごぜぇや~す。今日も朝から回収に来やしたぜィ・・・
って事で早速何か寄越して序に賛辞を並べまくって下せェ」
「え?何そのオブラートに包んでるけど
明確なカツアゲ」
一見爽やかな笑顔でカツアゲされました。
「あ~あ、今日もまた見事に魂切り離してまさァ
何か寄越せよ」
「や、まだ切り離してないですからね?
ギリギリ繋がってますから、魂の糸」
「ギリギリ繋がってるのは警察としての立場でさァ
何か寄越せよ」
「そこがまだ繋がってるのが不思議なんですけどね~」
「本当、権力って素敵でさァ何か寄越せよ」
「え?揉消し肯定宣言!?
ってさっきから何語尾につけてんですかぁぁぁ!!!」
ウザッ!マジでウザッ!!と、縁側で横になっている近藤さんを
挟んで顔を向かい合っている沖田さんに突っ込む。
「ん?何か聞こえやしたかィ?
あ、きっとアレでさァ、天の声か神の声でさァ。
その通りにしとかねぇと、容赦ない不運を落とすぜィ」
「白々しい上に自ら神発言だよ。
大体高給取りが薄給・・・と言うか寧ろ無いに等しい中で
なんとか生活している少年から何を奪う気ですか」
しらっと、しかも怖い事を言い切られたのでそう訴えると、
沖田さんは一瞬キョトンとし、次に違う違うと軽く手を振って笑った。
「奪うんじゃなくて、貢がせるだけでさァ」
「・・・それ、もっと酷くなってますからね?」
見た目がいいだけに、沖田さんの笑顔はとても爽やかで
清々しいが、言ってる言葉はとんでもなく真逆の存在だ。
ウンザリしながらそう言うと、沖田さんは僕の言葉が
気に入らなかったのか、ムッと唇を尖らせた。
「酷いも何も、今日はそう言う日なんでさァ」
「一体どんな日ですか、そんなモノがまかり通る日ってのは」
「んなの誕生日に決まってんだろ」
溜息を吐きつつそう言った所、とても簡潔な答えが返って来た。
あぁ、誕生日ね、誕生日。
若干間違っている様な気がしないでもないが、
ある意味あっていると言えばあっている・・・のかなぁ?
でも、この人にかかればそう言う事になっちゃうんだろうなぁ・・・
「・・・って、はぁ?」
返って来た言葉に、そんな風に思考を飛ばしてしまったけど
直ぐに戻ってきて驚いてしまった。
「え、誕生日って・・・」
改めてそう聞いてみると、僕の心情が判ったのか
非常にいい笑顔を浮かべた沖田さんがゆったりと頷いた。
「今日は俺の誕生日なんでさァ」
さぁ、心置きなく賛辞を述べまくった後何か寄越しなせェ。
「えっと・・・何もありませんけど」
と、とりあえず横たわっている近藤さんをそっと沖田さんの方へと
押してみる。
「いっその事ない方が有難てぇでさァ」
が、直ぐに押し返されてしまった。
いや、それこっちの台詞だから。
でもそれならそれで・・・と。
「ならお言葉に甘えて・・・お誕生日おめでとうございます。」
言葉だけを贈る事にして軽く頭を下げた・・・が、
途中でペシリと沖田さんの手が額に当てられ、そのまま
押し上げられてしまった。
そして目の前に近付けられたのは、やっぱり何か良い笑顔の沖田さん。
「男たるもの、早々人様の言葉に甘えちゃダメですぜィ?」
「・・・社会と生活が厳しすぎるんで、
せめて言葉にぐらいは甘えたいと思うのですが・・・」
「甘い言葉には気を付けた方がいいですぜィ?
その裏には社会や生活の厳しさが生温く思えるほどの
モノが隠されてるのが常でさァ」
「・・・みたいですね」
ニコニコと楽しそうな沖田さんに、逃げるのは無理だろう・・・と
諦めた僕は、もう一つ息を吐き出した。
うん、他の人の甘い言葉は違うかもしれないけど、
この人の場合はきっとそれが正しい。
だって雰囲気には全く隠されてないもの。
なんか駄々漏れだもの、甘くないものが。
「ま、そんなに期待もしてないんで
朝御飯ぐらいでいいでさァ。ちゃんと抜いてきたんで」
「ある意味思いっきり期待してるじゃないですか、それ」
全く・・・と額に当てられていた沖田さんの手を離し、
僕は朝御飯の準備をするべく、その場から腰を上げた。
「そんなに大層なモノ出せませんからね?」
そう言うと、沖田さんは後ろ手についてゆったりと
その場に体を落ち着かせた。
どうやらこの場で朝食が出来るのを待つつもりらしい。
「判ってまさァ。
あ、ローソクは恥ずかしいんでやらなくていいですぜィ?」
「ケーキ出せってか!?
んなもの用意してある訳ないでしょ!!
ご飯にお箸突き刺して出しますよ!?」
ヒラヒラと手を振って僕を見送る沖田さんに一喝し、
僕はそのまま足取り荒く台所へと足を進めた。
あぁ、でも戸棚に頂き物のお饅頭があったっけ。
とりあえずおまけとしてそれでも出してあげよう。
本当は今日万事屋に持っていくつもりだったけど、
仕方ないよね?
だって今日はそれがまかり通る日だもの。
僕の吐いた溜息と重なって、後ろの方から楽しげな鼻歌が聞こえてきた。
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遅れましたが沖誕話。