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―――ここにホレ薬がありますっ!
さぁ、貴方ならどうする!?
「・・・って言われてもなぁ」
夜も大分更けた頃、銀時は酔って帰る道すがら、
ふと露店に置いてある看板に目を止め、序に足も止めた。
「胡散臭いし、値段高ぇし・・・なぁ、これ本物?」
フラフラと揺れる頭で銀時が問い掛けると、露店の主は
ニヤリと口元を上げた。
だが、それ以上は何も言わない主に、銀時は僅かに眉を顰める。
主の態度は胡散臭さに磨きをかける一方だが、
何故だか同じぐらいに信憑性にも磨きをかけている・・・気がする。
・・・って事は本物・・・か?
いや、でもそんなのある訳ねぇよ、うん。
だってホレ薬だよ?夢のお薬だよ?
や、別にそんなのなくても新ちゃんは俺に惚れてるけどね。
こんなのに頼らなくても全然大丈夫だけどね?
でもホラ、万が一っての、あるじゃん?
なんか最近、俺を見る目が冷ややかになってる気もするし・・・
って、いやいや、別に疑ってる訳じゃないけどね?
それにホラ、絶対偽物だって、コレ。
だってすっげぇ高いじゃん?
買ったら最後、財布の仕事を取り上げる感じになっちゃうじゃん?
・・・でも高いからこそ本物っぽくもあるんだよなぁ。
「あれ?旦那じゃねぇですかィ」
銀時が露店の前で唸っていると、不意に背後から声を掛けられた。
振り返ってみると、ソコには見慣れた黒い二人組みが・・・
「何やってんだよ、呑気にお散歩ですかぁ?」
「こんな危険人物と散歩するぐらいなら
引き篭もりを選ぶわっ!」
仕事だ仕事っ!と叫ぶ土方の横で、沖田がひょいと銀時に近付き、
今まで見ていたものへと視線を向ける。
「お、また怪しいもんを見てますねィ?」
沖田の言葉に、土方も寄って来て僅かに眉を顰めた。
「や、冷やかしてただけだから。
別に財布と真剣に話し合いとかしてないから、うん」
「思いっきり真剣に悩んでんじゃねぇか、ソレ。
なんだぁ?こんなのに頼らなきゃいけねぇぐれぇなのか?
自分に自信のねぇヤツは大変だなぁ、おい」
ハンッと鼻で笑う土方に、銀時はヒクリと頬を引き攣らせると
軽く肩を竦めた。
「やだねぇ、そんな事ある訳ねぇじゃん。
こんなのなくても全然大丈夫だから、俺等。
寧ろ自信ありまくりで何時もべったり引っ付いてるからね?
現に今日も新八の尻に敷かれまくってました。」
「いや、それは堂々と自慢げに言う事じゃねぇだろ」
「いや、これは自慢だろ。
だって新ちゃんの尻だもん。普通に良くね?」
「そういう意味じゃねぇよっ!!!
良いと思うけどなっ!」
「って事は旦那、これは買わないんで?」
言い争う二人を横目に、沖田が置いてある薬へと手を伸ばした。
ユラユラと揺すれば、小瓶の中でこの世とは思えぬ色合いの
液体が揺れる。
それがまた銀時の心を乱すものの、流石にこの二人の前では・・・
と、口を開いた。
「ま、まぁな?どうせ俺には必要ないし?」
そう答えるものの、目が泳いでいる時点であまり説得力がない。
沖田はその言葉にニヤリと口元を上げると、
「なら俺が買いまさァ」
と、小瓶を持ったまま財布を取り出す為、胸元へと手を差し入れた。
その行動に驚いたのは残りの二人だ。
「はぁ!?ちょ、待て、総悟っ!
それ買って一体どうする気だっ!!」
「どうするも何も、使う為に買うんじゃねぇですか。
頭ボケやしたか?ってかボケろよ、もう」
「って使うって誰にぃぃい!!!?
もしかして新ちゃん!?新八に使う気か、コノヤロー!」
「何っ!?そうなのか、総悟っ!!!」
鬼気迫る表情で沖田に迫る銀時達に、沖田は軽く溜息を吐いた。
そしてヤレヤレと言った感じに肩を竦ませ、首を振る。
「全く、なんでそうなるんでィ。
言っときやすが、そんな事して好きになって貰っても
嬉しくも何ともねぇでさァ」
その言葉に、グッと言葉が詰まる土方と銀時。
確かに、こんな薬で好きになって貰っても虚しいだけだろう。
黙り込む二人に、沖田はブラブラと小瓶を振った。
「それにこんなのなくても
調教すりゃぁいいだけの話で」
「おぉぉぉおいっ!!
ちょ、待てコラ。
今良い話的に終わる感じじゃありませんでしたかぁぁ!!
ってコラクソ天パッ!テメーも『その手があったかっ!』みたいな
顔してんじゃねぇよっ!」
叫びつつ、胸倉を掴んでくる土方に、銀時は まぁまぁ。と両手を上げる。
「だってよぉ、ホラ、良く考えてみ?
・・・それだと楽しみ倍増じゃね?」
「無駄に真面目な顔してよく言いやがったな、コノヤロー。
ってかオメーも本当に買おうとしてんじゃねぇぇっ!
一体何に使う気だっ!」
土方の声に銀時も視線を向ければ、ソコには露店の主に
金を渡そうとしている沖田が。
そう、新八に使うのでないとすれば、一体何に使う気なのか。
と言うか、誰に使う気なのか。
訝しげに見詰める銀時達の前で、料金を払い終えた沖田が
薬の入った小瓶を掲げ、ニヤリと口元を上げた。
「勿論・・・旦那にでさァ」
その言葉に、ポカリと口を開ける二人。
そして銀時は少しずつ顔を青褪めさせ、土方は銀時の胸元を掴んでいた
手をポトリと落とした。
「え?あれ?なんか幻聴聞こえちゃったよ?
おっかしぃなぁ、呑みすぎたかな、これ」
あははと乾いた笑い声を上げる銀時に、土方が落とした手を上げ、
ポンと銀時の肩に置いた。
その顔は、何故か清々しい笑顔だ。
「安心しろ。ドS同士、完全無敵にお似合いだ」
「何に安心!?完全無敵に最悪じゃねぇか!
反発しまくりで寧ろ離れる一方だよっ!
その方がいいんだけどね!?
てか幻聴に答えてんじゃねぇぞコノヤロー!!」
先程とは違い、今度は銀時が土方の胸倉を掴み上げる。
だが、すぐさまその手を土方に掴み返されてしまった。
気が付けば時既に遅し。
がっちりと捕まれた腕に、逃げ場のない事を知った銀時の顔から
どんどん血の気が失せていく。
「現実逃避もそこまでだな」
「ちょっ、テメーッ!!!
って言うか逃避なら今すぐさせろ、マジで」
暴れだす銀時をしっかりと捕まえたまま、土方がニヤリと笑う。
「よぅし、総悟。俺からの祝いだ。
捕まえててやるから今すぐサクッと飲ませちまえ」
「や、マジでタンマッ!
ほら、アレだから。そんな事になったら新ちゃんが泣いちゃうから。
銀さんも本気で泣くから。」
「大丈夫だ、新八の涙は俺が拭いてやる。
テメーのは総悟に拭いてもらえ」
「させねぇし、しねぇよっ!
何ソレ、聞いてるだけで怒りと恐怖で涙が出てくらぁ!!」
なんとか脱出しようとする銀時に、全力で捕まえていようとする土方。
そんな二人に、沖田が肩を竦ませながら近寄っていく。
そして・・・
「全く・・・夜も遅いんですから静かにして下せェ。
とりあえず土方さんも賛成のようですから・・・」
はい。と、持っていた小瓶を土方へと差し出した。
その瞬間、ピタリと動きを止める二人。
「・・・いや、はいってあの・・・飲ませる・・・んだよなぁ?」
小瓶に視線を向けながらも、恐る恐る土方が沖田に問い掛けると、
至って普通に そうですぜィ。 と頷かれた。
「旦那に、土方さんが」
と、楽しげに微笑まれながら。
「って、なんで俺ぇぇぇぇ!!!?」
オマエが飲ますんじゃねぇのかよっ!と叫ぶ土方に、沖田は
緩く首を振って返す。
「なんで俺が旦那に飲ませなきゃいけねぇんですかィ。
そんな人生を棒に振る程世間を儚んでいやせんぜィ?」
「あれ?なんか酷い事言われてる?
でも今はよしっ!
って、あんま良くねぇよっ!状況変わってねぇじゃん、ソレっ!!」
「いいからさっさと飲ませて惚れさせて下せェ。
そうすりゃ面白い上に新八ゲットで最高でさァ」
「最高じゃねぇよっ!
飲ませる訳ねぇだろうが、そんなのっ!!」
「だよなっ!信じてたよ、多串君。
やっぱやる時はやってくれる子だよ、お前はっ!!」
土方が慌てて銀時を離すと、二人は急いで沖田から距離を取った。
それに大きく溜息を吐く沖田。
「全く・・・いいじゃねぇですかィ。
そんだけ長く生きたんだ。残りの僅かな人生ぐらい
景気良く捨てて下せぇよ」
「良くねぇよっ!どんだけ短い天寿設定だ、コラ。」
「仕方ねぇ・・・おい、親父。
この薬、他にやり方はねぇのかィ?」
ジリジリと後ずさっていく二人に、沖田はじっと視線を向けながら、
背後に居る露店の主へと問い掛けた。
「へい、直接飲ますのがダメなら、髪の毛を薬の中に
入れて飲ませばばっちり効きますよ」
主の言葉に、ゆるりと笑う沖田。
「ってっ!なんで行き成り喋ってんだよ、このクソ親父っ!!」
さっきまで自分が問い掛けても笑うばかりだったのにっ!と憤る銀時に、
露店の主がニタリと笑う。
「お客様へのアフターサービスです」
「そんなサービス精神は遠くに投げ捨てとけぇぇっ!!!」
そう叫ぶなり、銀時と土方は脱兎の如くその場から逃げ出したのであった。
その後、病的な程几帳面に自分の周りを掃除する土方が見られ、
万事屋では何も口にせず、一歩も外に出ようとしない銀時の
姿が見られたと言う。
ちなみに、その後の万事屋・・・
「って!ちょ、神楽。何人の髪引っ張ってんだよ。
弱ってる銀さんに追い討ちですか!?」
「引っ張ってないネ、引っこ抜いただけヨ」
「あぁ?白髪でも見っけたのか?」
「見分けつかないでしょ、ソレ。
って言うかどうしたの?神楽ちゃん、苛め?」
「ならもっと徹底的にやるネ。
これはドSから頼まれたヨ」
そう言って銀時の髪を一本掴み、プラプラと揺らす神楽。
新八は不思議そうに首を傾げ、銀時の顔から血の気が抜ける。
「銀ちゃんの髪の毛一本が酢昆布三箱に変身ネ。
マダオも偶には役に立つアル」
にししと神楽は笑うと、じゃあ行ってくるアル。と言って
万事屋を飛び出していった。
「・・・なんなんですかね?
もしかして呪いの標的にでもなりました?」
銀さんの髪の毛が欲しいなんて。と、微かに苦笑しながら
新八は銀時の方へと視線を向け・・・ようとしたが、
既にその姿はなく・・・
「ちょ、待て神楽っ!
酢昆布四箱あげるからっ!おまけに300円あげるからっ!!
本当、もう・・お待ちになって下さいやがれコノヤロー!!!」
と言う声だけが、万事屋の外から聞こえてきたのだった。
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三万打お礼企画・第三弾
もんちょ様からのリクで「惚れ薬ネタで新ちゃん総受け」
と言う事でしたが・・・如何でしたでしょうか。
なんか総受けなのに、ほぼ新ちゃんが
出て来なかったんですけどぉぉぉぉ!!!(泣)
本当、すみませんι
こんな感じになりましたが、少しでも楽しんで頂けたら
嬉しい限りです。
企画参加、本当に有難うございましたvv