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遠くで聞こえる小鳥の声に、僕はまだ少し重い目蓋を開いた。
そして何時もの様に、枕元に置いてある目覚まし時計へと手を伸ばす。
見れば目覚まし設定している時間よりも僅かに早い。
ここで再び寝ても、直ぐに起こされる事になるだろう・・・と、
時計を置いて、僕は体を起こした。
途端、押し寄せる冷たい空気にブルリと体を震わせ・・・た所で
一瞬、妙な感触を感じ、ハタリと目を瞬く。
・・・あれ?なんか変な感じが・・・
そのまま素直に視線を落とせば、寝巻きの合わせ目から
僕の生活とは無縁なモノがチラリと見えて・・・
「はぁぁぁぁああ!!!?」
志村新八。お通ちゃん親衛隊隊長として、
今日も抜群の発声量です。
「あら~、ここら辺全体がそうみたいよ?
マユゾンの時といい、何か呪われているのかしらね、この土地」
「姉上・・・そんな呑気な口調でに恐ろしい事を言わないで下さい」
「やだわ、新ちゃん。今は兄上でしょ、兄上」
そうにこやかに返してくる人は、確かに僕の姉上だ。
・・・そう、昨日までは。
だが、今目の前で僕の出したお茶を飲み、テレビを眺めているのは
その言葉通り、男性で。
「姉上・・・順応能力高すぎです」
僕は大きく溜息を吐いた。
そう、目が覚めた時に僕が見てしまったのは、十八歳未満は見ては
いけないものだったのだ。
お陰で大声を上げてしまい、寝入ればなを起こされた姉上に
再び夢の国へと送り込まれてしまった。
や、それでも起きた時に全てが夢だったらな~なんて思ったりも
したのだが、どうにも現実はそんなに甘くないらしい。
なんとか意識を復活させてみれば、目の前には見知っているけど
知らない姉上が居て、テレビでは情報が溢れていた。
どうも天人のせいで、ここら辺一帯のみ、性別が逆転してしまう
と言う現象が起こっているようだ。
・・・便利迷惑だなぁ、天人設定。
「あら、だってこんな事滅多にないのよ?
楽しまなきゃ」
そう言う姉上は、普段の着物とは違い、渋い色目の着流し姿だ。
見た目も少し男らしくなっていて、はっきり言ってカッコいい。
・・・のだが、その話口調のお陰でちょっと微妙になっている。
や、そこまで変えられたらシャレになんないからいいんだけどね。
でも楽しむって・・・まぁそこまでカッコ良ければ
色々楽しいんだろうけどさ!
あぁ・・・なんでこうも違うんだろう。
僕が姉上と同じ年齢になっても、そこに辿り着けるか
自信が全くないんですけどぉぉぉっ!
「だから、新ちゃんもそれに協力してね」
地味に凹んでいると、不意に姉上にそう声を掛けられた。
ハッと我に返ってみれば、そこには大変楽しそうに色取り取りの
女物の着物を抱えている姉上の姿が・・・
「あ、姉上?」
思わず座ったまま後ずさると、その分姉上が僕に近付いてくる。
恐ろしくもにこやかに。
「言ったでしょ?私、可愛い妹も欲しかったのよ?」
それとも強制的に剥かれたい?という姉上の言葉に、
出来れば強制的に眠らせて下さい。と願ったのも無理ない事だと思う。
・・・まぁどっちにしろ行き着く先は
同じなんだろうけどさ、コンチキショー。
「うん、やっぱり可愛いわ、新ちゃん」
「・・・そうですか」
満面の笑みを浮かべてそう言う姉上に、僕は疲れきった声を返した。
かまっ娘倶楽部で着た事があるとは言え、さすがに日常生活で、
しかもこんな昼間っから女装をする羽目になるなんて・・・
あ、違うか。今は体も女なんだから、女装って言わないんだっけ。
あれ?それなら西郷さん達はどうなってるんだろう。
この場合、お店の看板はかまっ娘倶楽部のままでいいのかな?
思わずどうでもいい事に思考を飛ばしていると、最後の仕上げとばかりに
姉上は僕の髪の毛に小さな花が付いている簪を挿した。
「折角なんだから、髪の毛も伸びてれば良かったのに。」
姉上は悔しそうに言い、そのまま僕の短い髪を撫でた。
「や、そこまで変化はしないでしょう」
「だって妙なモノが立派に生えてるのよ?髪ぐらい伸びても・・・」
「ちょ、それはダメェェェ!!!!
女の人がそんな事言っちゃダメですっ!」
慌てて僕がそう言えば、姉上は 今は男よ? とケロリとした表情で
返してきた。
・・・や、男でもダメだから。
ってか立派なのぉぉぉ!!?
ダメだ、僕。色々ダメージくらい過ぎだよ。
「でも・・・本当、可愛いくて良かったわ、新ちゃん」
そう言うと、姉上は髪を撫でていた手をそっと降ろし、そのまま
僕の肩へと落ち・・・
「だって私、まだ新ちゃんとお別れしたくなかったもの」
と、がっしりと僕の胸を鷲掴んだ。
「本当、可愛くて良かった」
「ってソコォォォォ!!!?
何ですか、見た目の事を言ってたんじゃないんですかぁぁ!!!」
慌てて身を引き、胸を隠すように両手で覆う僕に、姉上は
やだわ~。と払われた手を自分の頬に添えた。
「見た目も十分可愛いわよ?安心して、新ちゃん」
私は安心したわ。と言う姉上に、僕は今度こそ致命的とも言える
ダメージを食らう事となった。
や、良かったんだけどね。
お陰で命救われたし。
そんなのあっても困るだけだし。
でも・・・でもぉぉぉ!!!!!
こうしてなんとなく納得がいかないまま、奇妙な一日は始まったのであった。
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三万打お礼企画・第四段。
もち様からのリクで『男女逆転』と言う事でしたが・・・
すみません、無駄に長くなりそうなんで
一度切らせてもらいます~(滝汗)