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その日、定春を洗おうと言う無謀なチャレンジの末
万事屋のお風呂が壊れ、早めに帰宅する新八と共に、
銀時と神楽も志村家へと向う事となった。
ちなみに一々来るのも面倒と言うこともあって、
数日間のお泊りセットもばっちり持参だ。
「定春だけで大丈夫ですかね?」
心配気に言う新八に、隣を歩いていた神楽が自信有り気に
胸を叩く。
「大丈夫ネ。定春は何処かのマダオみたいに
一人寝が寂しくて自棄酒&不貞寝なんかしない良い子ネ」
「・・・何処のマダオだよ。
別に知りたくも無いけど。
じゃなくて、泥棒とか・・・」
まぁまた朝には行くから、エサとかは大丈夫だろうけど。
と、眉を下げる新八に、今度は神楽の隣を歩いていた銀時が
ダルそうに答える。
「それこそ大丈夫じゃね?
アイツの存在はセ○ム以上だ。
あ、それとも泥棒の心配か?なら安心しろって。
ちゃんと掘って埋めとくだろ。
ヤツの犬の習性を信じろ。」
「安心できねぇよ。
ってかそれのどの部分で安心できるんですかっ!
これから疑心暗鬼な毎日じゃんっ!!」
いっその事一緒に連れてくれば良かった・・・と思い、大きく息を吐いた。
だが、昼間ならまだしも、要塞モード状態となった夜の庭に
あの巨体で入られたらシャレにならないし、常時在住とも言える
自称愛のハンターを本物の野生の本能で狩られても困る。
それに万が一何かがあって、定春の
犬の習性に頼る羽目になっても、
なんだか普通に蘇ってきそうだし。
・・・多分それは安心していい所なんだろうけど、
やっぱり普通に怖いしキモイ。
結果、定春だけはお留守番と言う事になったのだが・・・
「・・・今更な心配だったかな・・・」
ははっと乾いた笑みで呟く新八の視線の先。
辿り着いた志村家からは、現在進行形で
本物のハンターによる雄叫びと、
狩られているだろうゴリラの悲鳴
が聞こえてきた。
「あら、皆お帰りなさい」
そう言ってやんわりと微笑みながら銀時達を迎えてくれたお妙だが、
どうした事だろう。
すぐさま『いってらっしゃい』と言って見送って欲しいと
切に願ってしまうのは。
そうは思うものの、躾はきっちりと、それこそ文字通り
体に刻み込まれた新八は、なるべく下を見ないようにして
帰宅の言葉をお妙に告げた。
それに続き、神楽や銀時までもがきちんと帰宅の言葉を告げる。
やはり視線はひたすら真っ直ぐ、おまけに背筋も真っ直ぐだ。
「え!?何ソレ。
なんで万事屋までここに帰って来てんのぉぉ!!!?」
だが、不意に銀時達の足元から驚きの声が上がり、
銀時と新八は溜息を、そして神楽は冷ややかな視線を落とした。
「って言うかそれはこっちの台詞なんですけど。
なんでここに居るんですか、近藤さん」
「新八、それは愚問ネ。
寧ろ居ない方が不思議ヨ」
「てかなんで足蹴にされてんだよ。
プレイか?そう言うプレイなのか?
止めてくんない?こっちは年頃の子達が居るんだからさぁ。」
「馬鹿を言うな、万事屋っ!
これはそんな如何わしいモンじゃなくて
愛の重みと暖かさを伝えてもらっている
最も尊い行為なんだぞっ!!
ね、お妙さん」
「やだわ~近藤さん。馬鹿な事しか言わないのは貴方もでしょ。
って言うか誰が重いって?ああん??」
「ぐぅほっ!
い、いやお妙さんが重い訳ないじゃないですかっ!
寧ろ天使の如く軽く、今にもこの地から飛び立ってしまいそうな・・・」
「あら、なら近藤さんは相当重いのかしら。
地面に減り込んでますよ、顔。
そのまま地獄の果てにでも落ちて行きそうなぐらい・・・
ってか落ちろよ、もう」
「・・・や、姉上。もう本当に落ちる寸前ですから、それ」
笑ってはいるが、明らかに背負っているオーラがその表情を
裏切っている。
ギリギリと近藤の頭に乗せている足に体重を掛けていくお妙に、
流石に不憫に思ったのか、新八からストップが掛けられた。
その声に、渋々足を下ろすお妙だったが、直ぐに表情を変え、
今度こそ本当の笑顔を浮かべた。
「ま、いいわね。時間・・・と言うか人生の無駄だし。
それより今日は神楽ちゃん達も泊まっていくんでしょ?
折角だから私も仕事、お休みしたのよ?」
一緒にお風呂、入りましょうね。そう言うとお妙は神楽を
連れて家の中へと入っていった。
「・・・で、コレどうすんの?」
二人を見送った銀時達の足元には、止めた甲斐なく、
既に落ちてしまった近藤の姿が・・・
新八はカクリと頭を垂れると、中に連れて行きましょう。と告げた。
「そんな事して怒んねぇの?お前のネェちゃん」
「既に何時もの事ですからね。
すみませんが縁側にでも運んでおいて下さい」
僕、救急箱持ってくるんで。新八にそう言われ、銀時は
軽く返事をしながら、未だ沈黙している近藤の足を掴んだ。
「・・・・・あ?」
「あ、戻ってきやがった」
掛けられた声に視線を向ければ、座敷に座ってお茶を飲んでいる
銀時の姿が見え、近藤は微かに目を瞬かせた。
何時もなら気付いた自分に声を掛けてくれるのは新八君なんだが・・・
なんで万事屋?・・・と、ソコまで思い、そして落ちる寸前の会話を
思い出して、小さく納得の声を上げ・・・
「・・・ってちっげぇよっ!
ちょ、なんでお前がここに帰ってきてんのぉぉぉ!!!?」
しかも泊りってっ!!勢い良く体を起こし、にじり寄って来る近藤に、
銀時はペシリと湯呑みを置いた手を振り下ろす。
「うるせぇよ。仕方ねぇだろ?風呂が壊れたんだから」
「だからって何で泊まりぃぃ!!?帰ればいいじゃん。
普通に帰ればいいじゃん、そんなの!」
「湯冷めすっだろうが。
大体なんで態々自分から新八と離れなきゃいけねぇんだよ。
そんな選択肢なんか存在するわきゃねぇだろ。
俺の足は常に新八に向って突き進んでいるんですぅ」
「俺の足だって常にお妙さんへと突き進んでいるわぁぁ!!
よし、そう言う事で俺も泊まろう」
「いや、その前にお前の時間が止まるから。
確実に人生の終着駅へと
迷い無く突き進んでるからな、ソレ。
ってか何お前、本当なんなの?
何時もあんな事されてるんですかコノヤロー」
突然眉を顰めて睨みつけてくる銀時に、近藤は何の事か判らなく
首を傾げる。
すると突く・・・と言うには勢いがあり過ぎる感じで額に
人差指を突き立てられた。
その瞬間に走った痛みに、近藤は小さく悲鳴を上げると慌てて身を引き、
突き立てられた部分に手を翳した。
そして感じる、サラリとした布の感触。
見れば腕にも手当てされた跡があり、あぁ。と近藤は
恥ずかしそうに笑みを浮かべた。
「また新八君に面倒を掛けてしまったか・・・」
「掛けてしまったかじゃねぇよ。そう言うのは俺の特権なんですぅ。
何?そんなに人生儚んでんの?
自殺願望故の行動だと受け取るよ?俺」
言い方はアレだがキラリと光る目が銀時の本気を物語っている。
・・・ってかなんで延命処置的なモノが
真逆のモノに受け取られてんのぉぉぉぉ!!?
慌てて首を振って違うと示すが、どうも相手は納得していないようだ。
嫌な汗を流す近藤と、無駄に目が煌いている銀時。
そんな二人の間に、一つの声が落ちてきた。
「あ、近藤さん気付きましたか」
「し、新八君~!!!」
「え?なんで涙目?
そんなに今日のはきつかったんですか?」
心配げに聞いてくる新八に、近藤は緩く首を振った。
その顔は涙目ながらも何処かホッとしているようで、新八は軽く首を
傾げるものの、直ぐに近藤へとお茶を入れて差し出す。
「とりあえず真選組には連絡しておきましたから、
もう少ししたら迎えに来て貰えると思いますよ?」
近藤はその言葉とお茶に礼を言いながら湯呑みを受け取ると、
不意に横から空になった湯飲みが新八へと差し出された。
「本当、少し加減てものを覚えて下さいね。
連絡するのもタダじゃないんですから」
無言のまま差し出されたソレを、新八は近藤にお小言を言いながら
受け取り、お茶を注いで差し出した銀時の元へと返した。
それを受け取り、黙ったままお茶を飲む銀時と、自分の分を
注ぎだす新八。
その光景を見て、近藤はふとある違和感を感じた。
見れば二人の湯呑みは大きさに違いはあるものの、何処か似ている
造りのもので。
新八が持って来たお盆の上に伏せられている他の二つも、
やはり似ている造りのもので。
だが・・・と視線を落とせば、ソコには明らかに客用と見られる
モノが自分の手の中にあって。
・・・あれ?
ふと湧き上がった疑問に、近藤が首を傾げる間もなく、
新しい声が座敷の中へと入ってきた。
「新八~、銀ちゃ~ん。私、今日は姉御と一緒に寝るネ」
どうやら風呂に入っていたらしい。
タオルを首に掛け、髪を濡らしたまま入ってきた神楽に、
慌てて新八が腰を浮かす。
「あぁもうっ!ちゃんと髪の毛拭いてきてって何時も言ってるでしょ!」
そう言うものの、新八の手は既にタオルへと伸びていて、
神楽をその場に座らせると、優しい手付きで髪を拭いていく。
「それはいい・・・ってか大歓迎だけどな。
あんま迷惑掛けんなよ?怒らすと怖ぇからな、マジで」
銀時は髪を拭いている新八へと手を伸ばすと、そのままタオルを
受け取り、変わりに些か強めにその手を動かした。
それを見て、新八がドライヤーを持ってくると言ってその場を後にした。
残された神楽と銀時は、乱暴だの我慢しろだのと騒ぎながら
髪を乾かしていたが、ふと視線を感じ、二人して
その視線の元へと顔を向けた。
「・・・何ネ。ニヤニヤして気持ち悪いヨ。」
神楽が吐き出すように視線の主である近藤に告げるが、
近藤は気にもしていないようにヘラリと頬を緩めるのを
止めなかった。
それに訝しげな視線を送る二人。
それを受け、近藤が笑顔のまま いや、何て言うかさ。と答え、
「さっきは泊りがどうとか言ったが・・・見てるとアレだな。
嫁さんの実家に泊まりに来た家族みたいだな、お前ら」
と、益々笑みを深めた。
それを聞き、銀時と神楽は一瞬キョトンとしたものの、
直ぐにニヤリと口元を緩める。
「当然ネ。私達は家族も同然ヨ。
だから私達の家は私達の。
新八の家も当然私達の家ネ」
「ってかゴリもアレだね。中々良いトコ見てんじゃないの。
流石野生は違うね、いいよ~、その観察眼。
後で取って置きの覗き場所教えてやる」
「いや、野性でもないし、誰でも判るからね、その雰囲気。
ってそんな場所があるのかぁ!?よし、防犯上の事もあるので、
詳しく明細に教えてくださぁぁぁぁぁいっ!!!!」
銀時の言葉に、近藤が勢い良く頭を下げ・・・序に畳みに
額を減り込ませた。
見ればソコには、近藤の頭に足を乗せ、菩薩の笑みを
浮かべている修羅が・・・
「あぁら、こんな所にゴリラの敷物があるわぁ。
これって燃えるゴミに出せるのかしら?」
そう言うとお妙は白目を向いた近藤の襟に手を掛け、
勢い良く庭へと放り捨てた。
それを見送り、思わず拍手を送る銀時と神楽。
「どうかしました・・・って、あぁまた・・・」
ドライヤーを片手に戻ってきた新八は、目の前の惨状に
大きく息を吐いた。
そして、また手当てしなきゃなぁ。と思わず遠くを眺めたくなり、
飛ばした途中で、ふとお妙の所でその視線を止めた。
「あれ?姉上、お風呂入ってきたんですよね?」
「えぇ、そうよ?」
それがどうかした?と問い掛けるお妙に、新八は不思議そうに
首を傾げた。
「ならどうしてまだお化粧してるんです?」
「・・・・・・・・女の嗜みです」
そう答えたお妙の顔は、何時もと同じ表情ではあったが、
微かに頬が赤くなっている様な気がして・・・
今度は銀時と神楽が、今現在庭で意識を絶っている人物へと
やんわりとした笑みを送る事となったのだが、
送られた本人がそれに気づくのは、まだ先のお話になりそうである。
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三万打お礼企画・第七弾。
団子様からのリクで「坂田家とノーマルCPが絡む話」
と言う事でしたが・・・如何でしたでしょうか。
最後にほんの少しだけ近妙風味になれた気がするんですがι
・・・気のせいですかね?(おいぃぃ!!)
外れてるなんてとんでもないv毎度素敵なリクを
有難うございますvvv
少しでも気に入って頂けたら、嬉しい限りですvvv
企画参加、有難うございましたv