[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「・・・何なんですか、アンタ等」
神楽も既に眠りに付き、明日の朝食の準備も済んだ
新八は、突然叩かれた玄関の音に首を傾げた。
銀時が長谷川と呑みに行くと言って出てから、まだそんなに
時間は経っていない。
なので銀時ではないだろう・・・と思いつつも、
こんな時間にやって来る人に心当たりはない。
しいて言えば下のお登勢だが、今日は店を休んで
小旅行に行くと言っていた。
なら誰なんだろう。新八は一応警戒しながら
玄関へと向かい、先程の言葉を吐き出したのであった。
「いやなんて言うの?偶には家で呑むのもいいかな~?
なんて思ったりして?」
「嘘つけっ!ツケが溜まり過ぎて呑ませて
貰えなかっただけじゃん、銀さんは」
「うっせぇよっ!元はと言えば
金持ってこなかったテメーが悪いんじゃねぇかぁぁ!!」
「ちょ、言っとくけど自分の分は辛うじて持ってたからね?
一杯分ぐらいはあったからね、ちゃんとぉぉ!!」
「え?二人とも金ないの?
あれ?もしかしてこれって全部俺払い?
後払いとかじゃなくて?」
「テメーの金は元を辿れば俺らの税金だ。
ある意味俺らの奢りだぜ?感謝しろ、感謝」
「いや全然出来ないよね!?
明らかに俺の給料から
出てるよね、これぇぇ!!!」
ワイワイ言いながら居間へと上がり込み、何処かで買ってきた
らしい酒類をテーブルの上に並べ始めるマダオ三人。
「や、銀さんは後で本気で家の裏に
来てもらうとして、
・・・なんで近藤さんまで?」
もしかしてカモられてます?ってか明らかにカモられてますよね。
と、何故か銀時、長谷川と共に万事屋にやって来た
近藤に問い掛ければ、あ~。と銀時が変わりに
答え始めた。
「既にお妙のトコに行ってボラれて
ボコられてきたらしい」
・・・成る程。
そう言われてみれば、近藤の頬は微かに腫れている。
と言う事は、既に近藤の財布も空同然なんだろう。
・・・ってかこの二人に捕まった時点で空決定だ。
「ったく、財布だけ拾おうと思ったのに余分なのが
付いてくるしよぉ」
「いやいや銀さん、こうして酒買って貰えたんだし
いいじゃないの」
「え?やっぱり俺の奢りぃぃ!!?」
「ちっげぇよ。俺らの奢りだ」
とりあえずそれなりに酒が入っているらしい三人の馬鹿話に、
新八は大きく息を吐く。
そして、あんまり騒がないで下さいよ。
と告げると、はーい。と言うとても良いお返事が返って来た。
・・・が、返事が良ければ良い程、
不信感だけが溢れてくるから不思議だ。
新八はもう一つ、深々と溜息を落とした。
「ってかそんなに美味しいんですか?」
お金もないのに呑みたがるほど。と、新八はササッと作ってきた
おつまみを出しながら、銀時達に問い掛ける。
「あれ?新八君って呑んだ事ないの?」
銀さんのトコに居るのに。と不思議そうに首を傾げる長谷川の
頭を、銀時がパシリと叩く。
「人聞き悪い事言ってんじゃねぇよ。
言っとくけどアレだよ?銀さん、教育にはちょっと煩いからね?」
「そう言うならまず生活態度を改めて下さい」
「ちなみに俺は自分で呑んでるよりお妙さんが
呑んでる方が多いぞ?」
「・・・それは楽しい・・・んですね、すみません」
「ならさ、ちょっと呑んでみるかい?」
ニコニコと嬉しそうに不憫な事を告げてくる近藤に、
少しだけ哀れみの視線を送っている新八に、長谷川が
ヒョイッと酒の入ったコップを差し出してきた。
「え・・・でも・・・」
「おいおい、何言ってんの?ダメだって言ったでしょうが。」
戸惑う新八に、銀時が割り込んできてコップを遠ざける。
「大体アレだよ?新ちゃんが酔っ払っちゃったら誰が
俺の事介抱してくれるってんだよ。
言っとくけどそん時だけだよ?
ベッタベタに甘えさせてくれるの。
それにもし酒癖悪かったらどうすんだよ。
これでもあのメスゴリラの弟だよ?
んな事になったらシャレになんねぇよ」
「何を言うっ!言っとくが酔っ払ったお妙さんは
滅茶苦茶可愛いぞ!?
こう、まるでハンターの如き鋭さとなる瞳!
勝利に高揚してるかの如き赤き頬!
そして理性が崩壊したかの如き、
とんでもない拳!!
思わず心臓が破裂しそうな勢いだ、うん!」
「それは単なる命の危機だ。」
ってか滅茶苦茶酒癖悪いじゃねぇか。力説する近藤に、
些か引き気味の銀時。
「や、でもこう言うのは人それぞれだからね?」
「そうなんですか?」
「まぁな。でも止めとけって。
お妙までとはいかないまでも、突然泣き出したり
笑い出したり脱ぎだしたりなんかしたらオマエ・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・とりあえず一杯な?」
「いや、なんで?」
突然主張を変えて、長谷川から奪い取ったコップを
新八へと手渡す銀時。
それを不審げに見詰めると、銀時は軽く手を振って
話し出した。
「いやいや、やっぱアレじゃん?
思春期の好奇心を押さえ込んで爆発されても困るじゃん?
知らない内に台所で呑んだくられても困るじゃん?
ならいっそ俺の目の届く所で・・・と思ってよぉ」
「・・・別にそこまで興味がある訳じゃないんですけど。
ってか台所でって明らかに思春期の行動じゃないですよね?
思いっきり主婦層ですよね、それ!?」
そう言うものの、やはり少しだけお酒と言うものに
興味がある年頃な新八としてはいい機会である訳で。
「まぁまぁ新八君。
一杯ぐらい呑んでみなよ。
保護者もいいって言ってるんだしさ~」
「・・・なら一杯だけ・・・」
長谷川にも勧められ、新八は戸惑いながらも嬉しそうに
コップへと口をつけた。
「・・・あ、意外と美味しい」
「お、意外といける口だね、新八君!」
半分ほど呑んだ所で、新八がそう感想を述べると、
ニコニコと長谷川が酒を注ぎ足してくる。
「あ、ちょ・・・もういいですって!」
新八は慌ててコップを置こうとするが、まぁまぁと
近藤に宥められてしまう。
「いや~、こうも早く義弟と酒が呑めるなんてなぁ」
「お前はまず金が絡まない酒を
お妙と呑める様になってからこい」
ってかこれなら今度、晩酌に付き合ってくれよ。と嬉しそうに
銀時も告げてきたので、新八は新たに注がれた酒に
笑って口を付けたのであった。
それからどれだけ時間が経ったのであろう。
銀時はコトンと肩に寄り掛ってくる存在に気が付いた。
「ん?どったの、新ちゃん?」
そう言って肩に頭を寄せている新八の顔を覗き込めば、
頬を真っ赤にさせて目をトロンとさせている。
「何?新八君眠くなっちゃった?」
「ん~、そうみたいだな。おら、もう止めとけって」
長谷川の言葉に肯定しつつ、新八の手からコップを
取ろうとするが、新八はイヤイヤと頭を振って手放そうとしない。
「さすがお妙さんの弟。酔い方も可愛いなぁ」
「や、本気で関係ないだろ。
寧ろ真逆だろ、この酔い方。
っつうかマジ可愛いな、おい!!」
なんとか銀時がコップを奪い取ると、変わりにとばかりに
長谷川が水の入ったコップを新八へと手渡す。
「でも結構呑んだよな。お酒気に入った?」
そう問うと、新八は両手でコップを抱えたまま
コクリと頷く。
そして・・・
「思ったより美味しかったです。
お金も仕事もないのにどうにかして呑もうと
言う気持ちは全く判らないですけど」
と、物凄くいい笑顔で口を開いた。
「え?・・・いやあの・・・新八君?」
「と言うか気分も良くなるから、
それ目当てで呑んでるんですか?
あ、もしかして現実逃避?
そうですよね~、したくもなりますよね~。
暖簾見たら入りたくもなりますよね~、
帰る家も待ってる人も居ませんし。
ぶっちゃけそのお金溜めてせめて部屋を
借りたらどうです?それがダメなら
せめてダンボールハウスを・・・って言いたいけど
止めときますね?所詮他人事だし。」
「や、ちょ・・・止めてぇぇ!!
無性に泣きたくなるから止めてぇぇ!!!」
ニコニコと笑いながらとんでもない事を話し始めた
新八に、長谷川が心からの声を上げた。
・・・が、新八は止まらない。
唖然としている銀時を振り返り、ニコリと笑う。
「銀さんもやっぱり同じですか?」
「や、お、俺は違うよ?
そんな現実逃避したくなるほどじゃねぇし」
「でもよく呑みに行きますよね?
この場合は人生から?それとも天パから?
あ、どっちもですね。
でもね?そんなに悪くないですよ、天パ。
そう言う事にしといてあげるんで、
毎朝鏡の前を陣取るの止めてください。
マジウザイです。
ってかぶっちゃけ寝癖なのか天パなのか判りませんから。
誰もそこまで銀さんに注目してませんからね?
僕も適当に相手してますし」
「だからしてねぇって言ってんじゃん!!
え、何この子。ものっそく可愛いのに
とんでもない毒吐いてるよ!?」
でも可愛いぃぃぃ!!!と、少し涙目になりながらも
新八を抱き締める銀時。
その腕から苦しそうに顔を出すと、新八は
コテリと首を傾げて苦笑する。
「もう銀さんったら・・・
マジウゼェ」
その瞬間、新八を抱き締めていた銀時から、
微かにすすり泣くような音が聞こえて来た。
「あ・・・あの新八君?
そろそろ本気で寝た方がいいんじゃないかな~」
この分だと次の餌食は自分だろう。
ならば・・・っ!
と、覚悟を決めた近藤が、それでも恐る恐る声を掛けると、
ニコニコと笑い続ける新八がクルリと視線を向けた。
そしてゴクリと息を飲み込み、来るだろう衝撃に
近藤が身構えていると・・・
何故だかとても柔らかい笑みを浮かべて、
何度か頷くだけで終わってしまった。
「・・・って何でだぁぁ!!?
言う事あるよね?俺にもなんかあるよね?
ほら、ゴリラとかケツ毛とかさぁ、もう突っ込み所も
毒吐く所も満載だよねぇぇ!!?
なのになんでそんな慈愛に満ちた微笑みぃぃ!!?
なんかすっごい辛いんだけど!
毒吐かれるよりきついんだけどぉぉぉ!!!?」
「うっせぇよ、ゴリ!!
っつうか毒じゃねぇから!
さっきのは毒と言う名の愛だから!
ウザイ程の愛だからぁぁ!!!」
「やっぱ作るならダンボールよりビニールシートかな?
あ、でも買う金すらねぇや、ははは・・・」
その夜、突如泣き上戸となった大人三人を
ニコニコと楽しげに眺めていた新八は、次の日
とんでもない頭痛に襲われ、もう二度と酒は呑まないと
言って、今度は喜びの涙を銀時達に流させたのであった。
*****************
五万打企画第五弾。蒼月様からのリクで、
『実は酒癖の悪い新ちゃんで。
キス魔とか抱き付き魔とかそう言う可愛らしいのじゃなく、
笑顔でマダオ共貶して凹ます』との事でしたが、
如何だったでしょうか?個人的に
あんまりのり移れませんでしたのが反省点です(おいι)
・・・もっといっちゃった方が良かったですかね?(笑)
こんな感じになりましたが、少しでも心すっきりと
なって頂ければ嬉しいですvv(笑)
企画参加、有難うございましたvv