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「新八!買い物に行って来てやるから
何買うかさっさと白状するヨロシ」
「いや、言葉悪いからね?
お使い頼むのに白状するもなにもないから」
ニコニコと笑って手を差し出す神楽に、新八は少しだけ片頬を
引き攣らせたが、すぐに苦笑へと変えて財布の中から
お金を取り出した。
「おいおい、静かに下りろって何回言えば判るんだぃ?」
店の前を掃除していたお登勢が、
上から元気良く降りてくる神楽を見て大きく息を吐く。
「遊びに行く前からそんなに元気なんじゃ、
途中で疲れちまうだろ?」
「ハッそんな軟な体力じゃないネ。
それに今から行くのは遊びじゃなくてお使いヨ」
自慢げに胸を張る神楽に、少しは軟になってもいいんだけどねぇ。
と呟きながらも、続いた言葉にお登勢は少しだけ目を丸くする。
「なんだい、今日もお使いかい?
珍しい事が続くもんだねぇ」
確か昨日も行ってたんじゃなかったかぃ?と聞くお登勢に、
神楽はフフンと鼻を鳴らす。
「昨日だけじゃないヨ。一昨日も行ったネ。
お陰でもう買い物のプロネ」
お金も買い物メモもばっちりヨ。そう行って首から下げられている
赤地に可愛らしい桃色の花が刺繍されている
少し大きめの財布を突き出した。
それにお登勢はやんわりと口元を上げる。
「じゃあそのプロの腕前を試してみるかね?」
そう言って神楽に財布を開けるよう言うと、
自分の懐から財布を取り出し、そこから出したお金を
神楽の財布の中へと仕舞い込んだ。
「煙草を一箱買ってきておくれ。
釣りは駄賃としてやるからさ」
お登勢の言葉に、神楽の目が輝く。
「任しとくアル!
お菓子買って余ったら煙草買ってきてやるヨ!」
「おぉぉぉい、買い物のプロ!!?
それじゃ全然ダメじゃないかい!」
そう言うも神楽は既に走り出していて、お登勢は全く・・・と
苦笑すると、煙草を取り出して火をつけた。
「お、破壊兵器が堂々と大手を振って歩いてやすぜィ。
ちょっくら地に沈めてきていいですか?土方さん共々」
「んな事したらここら辺一帯が言葉の如く地に沈むわ。
ってかなんで俺共々ぉぉ!!?」
「・・・相変わらず馬鹿そのものネ」
買い物にいく途中、暴言を吐きながら歩いてくる沖田と土方に、
神楽はケッと舌打ちをする。
本来なら言葉の前に拳を繰り出すのだが、今は無理だ。
そんな事をして万が一汚れがついては堪らない。
神楽は言葉だけ吐き出す事にして目の前の二人を睨みつけた。
「おい、遊びに行くのは構わねぇがモノは壊すんじゃぇぞ」
「判りやした。
今日は大人しく昼寝だけする事にしまさァ」
「テメーに言ってんじゃねぇよっ!!」
パシリと沖田の頭を叩く土方に、神楽は人差指を立てて
チッチッチ と舌を鳴らす。
「何時までも私をそこらの洟垂れのガキと一緒にするんじゃないネ。
今から行くのは遊びじゃなくてお使いヨ」
そう言ってお登勢に見せたように、首から提げている財布を
二人の前に突き出した。
土方と沖田はそれに一瞬目を丸くするものの、直ぐに
口元を微かに緩ませた。
「ほ~、偉いじゃねぇか。
誰かさんにもその心意気を見習って欲しいもんだなぁ、おい」
「全くでさァ、見習えよ、土方」
「俺じゃねぇよっ!!」
ったく・・・と言いながら、土方は吸っていた煙草を
ポケットから出した携帯灰皿に押し付けた。
「ま、落とさねぇように気をつけるんだな」
「そんなドジはしないネ。それにもし落としても大丈夫ヨ」
神楽はそう言うと手にしていた財布を開け、中から一枚の
紙切れを取り出した。
「ホラ、落としても誰のか判るように
銀ちゃんが書いて入れてくれたネ」
そう言って見せる紙には、意外と綺麗な字で
神楽の名前と万事屋の住所、電話番号が書かれていた。
「これさえあればちゃんと戻ってくるアル」
そう言ってニコニコ笑う神楽に、なら・・・と
沖田は懐から薄いケース入れを取り出した。
「これも入れときなせェ。そうすりゃ中身諸共返ってくる
確立が上がりまさァ」
そう言って神楽に渡したのは、一枚の紙で・・・
「って、なんでテメーが俺の名刺持ってんだぁぁ!!?」
「あ、本当だ。俺のじゃねぇや。
ミスプリントですかねィ?」
「そんな正解が一欠けらもねぇのは、
最早ミスプリントと言わねぇよ!」
「安心して下せぇ、土方さん。
別にこればら撒いてアンタの評判落とすとか、
そんな事しか考えてねぇんで」
「全く安心出来ねぇよな、それ。
寧ろ不安しか残されないよな、それぇぇ!!」
「・・・なんかマヨの呪いが掛けられた気がするヨ」
「なら序に俺の呪いも掛けといてやらァ」
怒鳴り続ける土方を余所に、沖田はもう一枚名刺を取り出すと
神楽へと手渡した。
「天下の真選組の名刺でィ。
入れときゃ誰も手出し出来やしねぇよ」
じゃあな。と言って歩き出す沖田に、土方は大きく息を吐くと
気ぃつけていけよ。と神楽に告げ、同じように歩き出した。
「・・・仕方ない、とりあえず貰っといてやるネ」
神楽はそう言うと、二枚の名刺を財布の中に入れ、
途中だった買い物への道を歩き出した。
「あ?何やってんだ、オマエ」
頼まれたモノを全て買い終え、お登勢の煙草も買い、後は
後は帰るだけ・・・といったその時、
不意に神楽は背後から声を掛けられた。
振り返ればそこにはダルそうにこちらへと歩いてくる銀時が居て。
「銀ちゃんこそ何やってるネ。
パチンコか?またパチンコで叶わぬ夢でも見てきたアルカ?」
「うっせぇよ。俺が何時でもそんなガキ見てぇな事してると思うなよ?
今日はスロットだ」
「・・・どっちも同じネ」
白けた視線を向けてくる神楽をペシリと叩き、銀時は
神楽が持っていたビニール袋を取り上げた。
「お、お使いか?」
取り上げたビニール袋の中身を掲げ、入ってるものを眺めてから
そう聞くと、神楽はニンマリと頬を緩めた。
「そうヨ。私のお財布でばっちりお使いネ」
そう言って笑う神楽の首からは、大き目の赤い財布がぶら下がっていて。
「そっか・・・ならその内俺のお使いも頼むわ」
銀時はそう言うと、ポンポンと神楽の頭を撫でた。
「おぅ、私に任せるネ!
・・・あ!新八に定春!」
突然前を見てブンブンと手を振る神楽に、同じように目をやれば
少し離れた所に新八と定春の姿があった。
「どうしたネ、新八。
私、遅かったアルカ?」
足早に新八達の下へと駆け寄った神楽が、少し不安げに問い掛けると、
新八は 違う違う と笑って手を振り、
「定春の散歩がてらフラフラしてただけだよ。
それよりちゃんと買い物出来たんだね」
ご苦労様、神楽ちゃん。そう言ってやんわりと笑い、神楽の頭を
撫でてくる新八に、神楽もニヘッと頬を緩ます。
「この財布があれば百人力ヨ。」
有難うネ。笑う神楽に、新八の頬もますます緩む。
そして神楽は定春に飛びつくと、そのまま先に歩き出した。
その後ろを、新八と銀時が続く。
「・・・ですって。
気に入ってくれて良かったですね、銀さん?」
楽しそうに定春に財布を見せながら歩く神楽を見詰めながら、
新八は隣を歩く銀時に声を掛けた。
「・・・ま、すぐ飽きなきゃいいけどな。
ってか腹減ったわ、銀さん。」
さっさと帰んぞ。そう言って新八の頭をポンと叩く銀時の
頬は、仄かに赤くなっているような気がして。
新八は はいはい。 と緩む頬を押さえ、銀時と共に
神楽の後を追ったのであった。
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遅れましたが神楽ちゃんハピバ話。