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「・・・何やってんでィ、アンタ」
どうやら今日の回収要請員は、土方さんと沖田さんらしい。
派手な音と共に現れた車から降りた途端、挨拶もなしに不審げな視線と
言葉を贈られた。
それを贈られた僕はと言えば、手には近藤さんから貰った紙袋と
エリザベスのぬいぐるみ。
・・・ここまでは多分普通だ。・・・多分。
けれど首には何故か万国旗が掛けられていて、足元には
未だ倒れたままの真選組局長・オプションで血塗れのハンカチ数枚だ。
・・・本当、何やってんだろう、僕。
ちなみに桂さん達は車の音を聞いて、さっさとこの場から
立ち去っていった。
・・・・・・・・・・・・・・ちっ!
「なんだ、近藤さんはまだ起きてないのか」
ってかなんでこんなトコで寝てんだ?と不思議そうにしながらも
土方さんが近寄り、その体を抱き起こそうとしていた。
が、隠した筈の灰皿が目に入ったらしい。
一瞬手が止まるのを僕は見た。
・・・ちなみにそっと視線が逸らされるのもしっかり見た。
うん、正しい判断だと思う。
だって僕のウチ、まだ灰皿ありますもん。
「いつもすまねぇな。・・・で、付き添っててくれたのは
有難ぇんだが・・・本当、何してたんだ?」
近藤さんを車の中に押し込め、タバコを吸いながら土方さんが
怪訝な表情で問い掛けてきた。
・・・聞かないで下さい、泣きたくなるから。
まさかこんな朝っぱらから、危険分子と名高い二人のテロリストに
誕生日を祝ってもらってました~☆・・・なんて言える訳もなく、
僕は乾いた笑いを零すしかなかった。
「・・・なんか泣きそうなツラですぜィ?まるで押し掛けマジシャンに
強制的に微妙にショボイマジックショーを見せられた感じでさァ」
「何、その妙に具体的な状況!!!
どっかに隠しカメラでもあるんですか!?」
思わず周囲を見回す僕に、沖田さんは軽く肩を竦める。
「イヤですねィ。そんなのありませんぜ。
警察の観察眼を舐めちゃぁいけやせん。
舐めるなら他の所にして下せぇ。てか舐めろ」
「ドコも舐めねぇよ!
ってか警察のセクハラに今まさに泣きそうだよ!!」
「だってよ。土方さん、いい加減にしなせぇ、その舐めるような視線。
俺が一般市民代表で抉り出してやらァ」
「おいぃぃぃぃ!!なんで俺ぇぇ!?
明らかにお前がしてんじゃねぇか!!!」
「うわっ。聞きやしたかィ?新八。この人、
今人に罪を擦り付けやがったぜィ?」
怒鳴る土方さんに、心外そうな表情をして沖田さんが僕の隣へと
やって来てそう告げた。
・・・きりがないよね、本当。
僕は少し大袈裟に溜息を吐くと、首に掛かっていた万国旗を外し、
風呂敷の中へと仕舞う。
・・・うん、一応誕生日プレゼントだしね、持って行かなきゃ。
高杉さんのだけならまだしも、僕の指紋もばっちりだからね。
「とりあえず僕に擦り付けなければいいですよ。
ってか、もう行ってもいいですか?」
エリザベスは・・・さすがにもう風呂敷には入らないか。と諦め、
腕に抱えたまま、まだ怒っている土方さんに聞いてみる。
隣で 酷ぇでさァ。 と文句を言ってる輩は無視だ。
一度『酷い』という言葉を辞書で引いてみろ。
すると、土方さんはハッとこちらを見て怒気を収めると、
「あぁ、有難うな。・・・てかそのままで行くのか?」
そう言って訝しげに僕の腕の中のエリザベスを見た。
確かに変だよね。僕、もう子供じゃないですもんね。
判ってますよ、えぇ、そりゃぁもう!
でも絶対懐には入れねーぞ、
コンチクショー。
力強く頷くと、土方さんはふと視線を上に向け、次に
少し待て。 と言って車の中へと体を突っ込んだ。
そしてゴソゴソと何かを漁ると、マヨネーズが数本入ったビニール袋を
携えて戻ってきた。
「オラ、これ使え」
「え?あ、いや有難いですけど・・・中身、入ってますよ?」
徐に差し出され、僕は暫し戸惑う。
けれどそんな僕を無視して、土方さんは腕の中からぬいぐるみを奪うと
ビニール袋の中にポイッと放り込み、そのまま手渡された。
「なんでィ、マヨ普及してマヨ人口増やすつもりですかィ?
これ以上新八に不幸を背負わせてどうするつもりでィ。
ただでさえ眼鏡なのに」
「おいコラ。眼鏡を不幸の元にしてんじゃねーよ!!」
「てかマヨも不幸の元にすんじゃねーよ!!!
これは・・・その、アレだ。・・・誕生日だろうが、今日は」
だから持ってけ。そう言って土方さんは照れ臭そうに顔を逸らした。
・・・お約束を外さない人だなぁ、この人。
だけどこれは使いようがある。
万国旗なんかよりもよっぽど利用価値がある。
なので素直に礼を言い、頭を下げた。
・・・が、ある疑問が沸き上がる。
近藤さんならまだしも、
何で僕の誕生日を知ってるんだろう?
そう思っていると、下げた頭にポンと何かが乗せられた。
僅かに顔をずらし見てみれば、隣に居た沖田さんが何かを乗せていて。
「これは俺からでィ。ちなみに真選組の奴等は皆知ってますぜィ?
近藤さんが隊内カレンダーに付け加えてやしたから」
「燃やしちまえ、そんな下心見え見えのカレンダー。」
そう吐き捨て、乗せられた紙袋を落とさないよう気を付けながら
頭を起こす。
中を見ると、色んな駄菓子が入っていた。
「旦那に取られねぇよぉ、気ぃつけろよ?」
ニヤリと笑って告げられ、僕は苦笑を返す。
ちょっと楽しんでるだろ、おい。
うん、でも気を付けよう。
だってこれ、僕のだもん。
「土方さん、沖田さん、有難うございます」
笑って礼を言うと、土方さんには頭をクシャリと撫でられ、
沖田さんには軽く肩を小突かれた。
「おめでとさん、新八」
改めてそう言われ、走り去っていく車は
来た時よりも少しだけ優しい音がしていた。
・・・てか、来る時もそうしとけよ。
*********************
今回はこのお二人です。
なんか誕生日過ぎたって言うのにまだ終わりません(泣)
もう少しだけお付き合い下さい~ι
屯所に連絡を入れた後、再び倒れてしまった近藤さんの横に座り、
新たに風呂敷から取り出したハンカチを頭に当てる。
・・・うん、本当に何枚合っても困らない・・・て言うか、
何枚合っても足らねぇなぁ、オイ。
ボーっと血の滲んでくるハンカチを見て時間を潰していると、
不意に影が翳ったのに気付いた。
「ん?何をしているんだ?こんな所で」
聞き慣れた声に顔を上げると、其処には通常ならこんな朝っぱらから
往来に居てはいけない人が・・・
いや、別に天下の往来なんだから、誰が居てもいいんだけどね?
それでもやっぱり例外はあると思うんだ。
って言うか、なんでこの人まで!!!?
僕は頬を引き攣らせながら、僅かに腰を浮かせた。
「・・・お早うございます、桂さん。・・・と、高杉晋助・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さん?」
「おいおい、なんだぁ?その取ってつけたような『さん』付けは」
ギロリと睨まれるけど、仕方ないでしょうが。
アンタ、自分が何したのか判ってます?
あぁ、でもつい年上の人に対して尊称をつけてしまう自分が悲しい。
むぅっと口を尖らせば、高杉・・・さんは小さく舌打ちした。
「この場合は驚いて苗字呼び捨てか、
憎々しげにフルネーム呼び捨てだろうが」
「そっちかよ!!
何ソレ、どんだけ呼び捨てにされたいんですか、アンタ!!」
「まぁまぁ、落ち着け二人とも。それに高杉、新八君は今時珍しく
礼儀を弁えた少年なんだ。年上の、しかも初対面に等しいお前を
呼び捨てになぞ出来る訳がなかろう。ん?・・・だがエリザベスの事は
呼び捨てにしていたな?」
どういう事だ、新八君!!と、仲裁に入った筈の桂が真剣な表情で
詰め寄ってくる。
いや、どう言う思考回路してんだよ、指名手配犯。
僕は一先ず落ち着こうと息を吐き、その場に立ち上がる。
「最近は先輩と呼ばせて貰ってますよ。ってか、お二人とも
こんな朝っぱらからこんな所で何してるんですか」
初対面も何も、知り合いたくなかったTOP3に悠々ランクインしてしまう
指名手配犯二人に問い掛ける。
「いや何、昨夜ばったり会ったのでな、呑みに行ったのだ。
この近くに俺の隠れ屋的呑み屋があってな。
あ、銀時には秘密にしといてくれ。あいつはすぐたかるから」
桂さんの言葉に、隣で高杉さん(本人が呼び捨て希望したので
敢えて尊称付き)が あ~、確かに。 と嫌そうに頷いた。
隠れ屋的呑み屋・・・って、その前にきちんと隠れてろよ、テロリスト。
って言うかたかる銀さんも銀さんだけど、その言い方だと
・・・割り勘か、あんた等はきっちり割り勘なのか!?
思わず細かいトコまできっちり計算して出し合ってる姿や
レジを前に「俺が」「いやここは俺が」と言い合ってる姿を
想像してしまい、脱力する。
僕、テレビとか見すぎかな?
想像してた指名手配犯と哀しいほど違うんですけど。
って言うか警察は何してんだよぉぉぉぉお!!!
・・・・あぁ、ここで倒れてたっけ。
とりあえずまだ意識が戻らなそうなので、そのままにしておく。
だって、幾ら朝っぱらから堂々と歩いてる人達であっても
テロリストだしね。
こっちは意識ないストーカーだけど、真選組局長だしね。
ここ、まだウチの近くだしね。
流石に近所で殺傷沙汰は避けて欲しい。
「しかし良い所で会った。」
念の為・・・と、近藤さんを隠すように立ち位置を直していると、
不意に桂さんがそう言い、懐から何かを取り出した。
それは・・・
「ステファンのぬいぐるみ??」
「エリザベスのぬいぐるみだ」
そう言い直すと、僕の方へ差し出してくる。
「今日が誕生日なのだろう?おめでとう、新八君」
柔らかい笑みを浮かべた桂さんにそう言われ、僕は驚きながらも
それを受け取った。
「ちなみに手作りだ。どうだ?細部までリアルに作ってあるだろう?」
そう言われ、思わず受け取った手に力が入る。
あ、良かった。中はフカフカだ。
中までリアルに作られてたらどうしてやろうかと思っていたが、
杞憂だったらしい。
僕はホッと息を吐くと、それを抱き締めお礼を言った。
すると、それを見ていた高杉さんが、
「なんだ、オマエ誕生日なのか?仕方ねぇなぁ。ちょっと待ってろ。
今鳩出してやる」
と言って何やらゴソゴソとしだした。
「いやいやいやいや。え?なんでそうなるんですか?
ってか、本当は誰ですか?」
「鬼○郎なんつったら目ん玉一つ抉り出して仲間入りさせてやるぜぇ。
って、なんだ?万国旗の方がいいのか?
っち!注文の多いガキだなぁ、おい」
「誰も注文してねぇよ!!
大体なんでそんなもの常備してんですか!!!」
「そうだぞ、高杉!!そんなに何でもかんでも懐に入れてるんじゃない!!」
「入れてたからお前も俺もあん時助かったんじゃねぇか。
それにテメェも変なモン懐から出しただろうが、たった今」
「変なモンじゃない!エリザベスだ!!」
「変なモン以外の何物でもねぇな。
大体なぁ、俺達ゃ仮にも指名手配されてるだろうが。
色々準備しとかなくてどうするよ、あぁ?
行き成り懐から鳩が出てきたらビビルだろうがよ。
そうなりゃぁ隙が出来て、こっちとしちゃぁ斬り放題ってもんだろうが。」
まぁ、そんなもんなくても斬りたくなりゃぁ斬るがな、俺は。
ニヤリと笑う高杉さんに、一瞬血の気が引くが、よく考えると
違う意味で引く。
だって、鈍く光る刃が走り、血が舞い、
序に鳩も舞って万国旗がたなびく
阿鼻叫喚図。
・・・何、その血みどろマジックショー。
って、何アンタも納得してんですか。
いや、無理ですから。
確かに逃げる時、エリザベスが懐から出てきたらびっくりするけど、
本物は入りませんから!!
それはもう単なるおかしな二人羽織状態ですから!!!
いやしかし・・・と、真剣に検討し始める桂さんと、
どこか楽しげに何かを仕込みだす高杉さん。
それに一々ツッコミながらも、ふと爽快に晴れ上がった空を見詰めた。
・・・なんで朝っぱらからこんなに疲れてるんだろう、僕。
喉の痛みが気になりだした誕生日の朝でした。
・・・ってかもうどうなってもいいから早く来いよ、警察共。
************************
すんません。ホント、色々すんませーん!!(土下座)
欲望が押さえつけられませんでしたぁぁぁぁ!!!
その上もう少しだけ続きますι
その日、起きるともう姉上が起きていて近藤さんを締め上げていた。
・・・ある意味凄い眠気覚ましだよな、この光景。
そう思いながらも近付き声を掛けると、爽やかな朝に似合う笑顔で
「あら、お早う、新ちゃん」
と告げ、笑顔に不釣合いな勢いで締め上げていた近藤さんを
庭へと投げ飛ばした。
「・・・お早うございます、姉上」
引き攣りながらも挨拶を返し、ご飯を作る為台所へ行こうとしたが、
不意に呼び止められ、振り返る。
すると、恐れ多い事に姉上が朝ごはんを作ると言い出し、
僕は一瞬意識が飛んだ。
って、飛ばしてる場合じゃない!!
そんな事になったら意識所か魂が飛んでいってしまう、
永久に!!
僕は慌てて遠慮したが、どうやら姉上は殺る気満々らしい。
どうしよう!!と泣きそうになったその時、何時の間に復活してきたのか
近藤さんが傍に来ていて、
「いや~、朝からお妙さんの手料理が食べられるとは・・・
近藤勲、天にも昇る気持ちです!!」
と叫び、姉上の足蹴りにより本当に天に上った。
・・・どうやら先程から同じような事を繰り返していたらしい。
近藤さん、本当に有難う。
貴方の犠牲は無駄にしません!!
その隙を付いて急いで朝食の支度をしてしまう。
だって僕はまだ天に昇りたくない。
なんとか出来上がった朝食を見て姉上が心底残念そうな顔をしたが、
すぐに笑顔を取り戻すと一旦自室へと戻り、何かの包みを持ってきた。
そしてそれを僕へと差し出して来たので、不思議に思いながらも
受け取り、中を見させてもらった。
出てきたのは新しい単の着物と袴。
どちらも涼しげでこれから着るのに丁度良さそうだ。
でも、なんで?
その時の僕は本当に不思議そうな顔をしていたのだろう。
姉上は 仕方ない子ね。 と苦笑しながら、
「今日は新ちゃんの誕生日でしょ?」
と教えてくれた。そして今度こそ本当に優しげな笑みを浮かべると、
「お誕生日、おめでとう」
そう祝いの言葉を贈ってくれた。
―――こうして僕の誕生日は始まったのである。
「今夜は仕事で都合がつかないけど、明日はお休み貰ったから
一緒にお買い物にでも行きましょうね」
姉上に送り出される時そう言われ、照れ臭いながらも嬉しくて、
自然と足取りが軽くなる。
軽くなる・・・が、突如その足が重くなった。
と言うか、何かに捕まれた!!?
びっくりして下を見れば、其処にはボロボロになったゴリラ・・・じゃなくて
先程僕の命を、ある意味身を挺して救ってくれた近藤さんが。
「こ、近藤さん!!?どうしたんですか、こんな所で・・・」
・・・って、あぁ・・・さっき姉上に塀の外に蹴り飛ばされてたっけ・・・
「え~っとあの・・・・・・・すみません」
とりあえず謝りながら、倒れて僕の足を掴んでいる近藤さんの横に
しゃがみ込んだ。
そして懐からハンカチを取り出し、未だ流れ出ている頭の血を拭き取り、
傷口部分を軽く押さえる。
あ、なんか一枚じゃ足りなさそう・・・
上半身を起こした近藤さんに、当てたハンカチを任せ、僕は新しいハンカチを
今度は風呂敷から取り出した。
ちなみに僕は常に何枚か予備を持ち歩いている。
が、最近それじゃ間に合わないので、いっその事タオルでも持ち歩いて
やろうかと考えてたりする。
「いや~、すまなかったね、朝から」
血を流しながら豪快に笑う近藤さんに、苦笑が漏れる。
「今日は助かりましたけどね。でもそう思うなら
自重して下さいよ?本当」
「いやいや、やはりここは街を守る者として、愛する人を守る一人の男として
だね、お妙さんの身を守ろうと・・・」
「あ、近藤さん。携帯持ってます?」
「ん?あぁ持ってるけど、どうするの?」
頬を薄っすら染めながら語りだした近藤さんにそう問い掛け、手を出すと
人好きのする笑顔で近藤さんが懐から携帯を取り出し、渡してくれた。
それをニッコリと笑って受け取ると、
「ストーカーを捕まえて貰おうと思って」
そう言って既に覚えてしまった屯所の番号を押していく。
「ちょ!ストーカーじゃないから!
お早うからお休みまで。そしてお休みからお早うまで
きっちり見守ってるだけだからぁぁぁああ!!!!」
「思いっきりそのまんまじゃねぇか!!!」
ペシリと新しく取り出したハンカチを微かに腫れだした頬に当てると、
近くにあった多分姉上への贈り物だったであろう紙袋を手渡し、
序に手を取って立たせる。
「もう・・・いい加減体壊しますよ、本当」
それだと姉上が犯罪者になってしまう。それだけは避けなければ。
そんな想いから思わず言い聞かせるように口に出すと、
近藤さんは嬉しそうに笑って
「心配してくれて有難う」
新八君はいい子だな~。と、僕の頭を撫でてくれた。
・・・こう言う所があるから心から憎めないんだよね。
大きな手に苦笑していると、頭から離れていった手が
手渡した紙袋の中へと消えた。
「そうだ。はい、これ」
そう言って出てきたのは少し小さめの・・・けれど厚みのある袋で。
僕はコトリと首を傾げた。
そして一つの心当たりに突き当たり、そっと眉を顰めた。
「あの、近藤さん。幾ら僕に渡されても姉上は受け取らないと思いますよ?」
「え?・・・あぁ、いや違うよ?これは新八君に」
僕の言葉に一瞬目を丸くするが、直ぐに目を細めて笑うと はい。 と
その紙袋を僕の手の上に置いた。
今度は僕が目を丸くする番だ。
思ったよりも柔らかいその感触の贈り物に、再び首を傾げる。
何だろう、まさか僕から懐柔していく作戦とか?
そう言えば局中法度にも妙なのがあったっけ・・・
そんな思いからつい胡散臭げな目で、手の上の物を見詰めていると、
「誕生日、おめでとう」
と言う思いもしなかった言葉が頭の上から聞こえてきた。
思わず顔を上げると、照れ臭そうに笑う近藤さんが。
「いつも世話になってるからね。
まぁたいした物じゃなくて悪いんだが」
沢山合っても困らないと思ってね。そう言われ、中を見させてもらえば
其処には色々な柄のハンカチが。
確かにこれは、何枚合っても困らない。
と言うか、今既に二枚血まみれになってるし。
血液って中々落ちないんだよね~。
でもやっぱり嬉しくて、
「有難うございます」
と、頭を下げた瞬間、頭上から何かが落ちてくる音と物凄く鈍い音が聞こえた。
そして視界の隅に、後頭部から新たな血を噴出しながら倒れてくる
近藤さんの姿が。
・・・そう言えばまだここは危険地帯(志村家近くの脇の道)だった。
僕はゆっくりと頭を上げると、まだ僕が持っていた近藤さんの携帯で
先程途中まで押した屯所の番号を最後まで押した。
「あ、お早うございます、志村です。いつもの
回収要請お願いします。」
ちなみに近藤さんの傍に落ちていた、見覚えのあるような灰皿は
そっと近くの電柱の影に押し込んだ。
うん、道にこんなのが転がってたら
危ないモンね。
****************************
一万打リクを少しお休みして、新ちゃん誕生日話です。
ちょっと続きます。
本日、何時もの様に万事屋へと向かっていた僕、志村新八ですが・・・
今現在、真選組屯所に居るのは何故なんでしょう。
「そいつは俺がお招きしたからでさァ」
屯所内の一室で、呆然としている新八に向けて、その室内の主である
沖田が、実に爽やかな笑顔でそう答えた。
「お招き・・・僕、招かれたんですね、アレで」
沖田の答えに新八は乾いた笑みを浮かべ、そして大きく肩を落とした。
ここに来るまで・・・確かに新八の足は万事屋へと向いていた。
その隣に突然車が横付けされたと思ったら、次の瞬間にはその車内へと
引きずり込まれていた。
慌てて見れば、そこには楽しそうな顔の沖田が、がっちりと自分を
ホールドしており、運転席では
「ごめん、ごめんよ~、新八君んんん!!!」
と、泣きながら謝り続けている山崎の姿が。
謝るぐらいなら加担すんなよ。
とも思ったが、彼の置かれた状況も痛いほど判ったので、何も言わずにおいた。
・・・でも、今度ミントンに誘われても、絶対断ろう。
地味に報復を決め、新八は早々に抵抗するのを諦めたのだった。
とりあえず茶菓子でも持って来まさァ。沖田はそう言うと部屋から出て行った。
残された新八は、一人になった部屋の中を興味深そうにキョロリと
見回す。
すると、軒下に吊るされたテルテル坊主が目に入った。
「沖田さんが作ったのかな?」
見れば何個か連なっており、新八はクスリと笑みを零す。
そう言えば昨日は七夕だったっけ。もしかしてその為に?
新八は沖田の罪のない子供らしさを見れた気がして、益々笑みを深めた。
「何笑ってるんでィ」
そこに沖田が茶菓子やら急須の乗ったお盆を片手に帰って来た。
新八はそれを受け取りながら、先程まで見ていたテルテル坊主を指差した。
「あれですよ。もしかして沖田さんが作ったんですか?」
「勿論でさァ。中々の力作でね?」
沖田は吊り下げてあるテルテル坊主の所まで行くと、その中の一つを
ヒョイと掴んだ。
「・・・・・あの・・・一つ聞いてもいいですか?」
「ん?なんでィ」
「いや・・・あの、なんでテルテル坊主に土方さんの顔写真が・・・」
恐る恐る聞いてみれば、沖田はキョトンとした顔で新八を見返してきた。
「テルテル坊主?何言ってんでィ。これは土方のヤローに
確実に訪れるであろう未来予想図でさァ」
「おいぃぃぃいい!!何不気味なモン軒下にぶら下げてんですか!!」
「あぁ、確かに土方さんのツラは
不気味極まりねぇな」
「ってそこじゃねぇよ!!
あぁ、もう可哀想だから止めたげて下さいよ」
と言うか本当、不気味なんで障子閉めてください。力なくそう頼む新八に、
沖田は肩を竦ませると大人しく言う事を聞き、新八の向かいへと
腰を下ろした。
「中々壮観な眺めなんですがねィ。
やっぱ本物じゃねぇと情緒がねぇか」
「言葉だけなら普通に聞こえますけど、
明らかに怖いですからね、それ」
で、今日はなんなんですか。新八は一つ息を吐きそう言うと、沖田の持ってきた
湯呑みにお茶を汲み、一つを沖田の前へと置いた。
「いや、暇だったんでねェ」
「僕の人生はアンタの暇潰しの道具か、コラ」
それならサボらず仕事して下さいよ。そう言いながらも新八は アレ? と
首を傾げる。
沖田はサボるときでも堂々と隊服を着ている。
だが今は・・・
新八の視線に気付いたのか、沖田はお茶を一口飲むとニヤリと口角を上げた。
「幾ら勤勉な俺でも、休みの日ぐらい仕事から離れたいんだけどねィ」
そう、目の前に居る沖田は隊服ではなく私服なのだ。
と言う事は沖田の言葉どおり、本当に休みなのだろう。
・・・一部ウソが混じっていたけれど。
「ならのんびりするとか、予定入れるとかすれば良かったじゃないですか」
自分を巻き込んだりせず。呆れ顔でそう告げると、
「のんびりすんのは性にあわねぇよ。それに今朝急に決まった休みでねィ。
予定入れる暇もなかったんでさァ」
「どの口が言ってんですか、ソレ。
って言うか、真選組ってそんなに急に休みが決まったりするんですか?」
こうなったら遠慮はいらない。と、新八は半ば開き直って
お茶菓子として持ってこられた団子を手にしながらそう問い掛けた。
沖田も同じように団子に手を伸ばし、
「ま、仕事柄休みがなくなったり・・・とかあるからねィ。
その代わりの休みが・・・てのだったら急に貰えたりもしますが・・・」
今回は違いまさァ。そう言い、手にした団子に齧り付いた。
「じゃあ今回はどうして貰えたんです?」
「七夕の短冊にお願い事を書いてみたんでさァ」
「・・・・・・・・・・・・・は?」
沖田の言葉に、思いっきり眉を顰める新八。
それを見て おいおい酷ぇな、その反応。 と笑い、沖田は懐から
紙を一枚取り出し、新八に手渡した。
「ほら、これでさァ。書いてあるだろ?」
「っておぉぉおおいぃぃ!!!これ、短冊違う!
何コレ、何で近藤さんがウチの塀に登ってカメラ構えてるの!!?」
「写真と言う名の短冊でさァ。
ちなみにコレに願い事を書いて笹に吊るしといたらあ~ら不思議。
妙に低姿勢な近藤さんが
願いを叶えてくれやした」
「いや、それ違いますから。
脅迫ですから、コレ」
大体休みが願い事って・・・と言って、新八は受け取った写真を
裏返してみた。
「・・・もしかして今朝の山崎さんも・・・」
「あぁ、アレも願い事の一つでさァ。ちょっと足が欲しかったんでねィ」
その分の短冊も見ますかィ?笑顔でそう告げてくる沖田に、新八は
力なく首を振った。
「もしかして僕用の短冊もあるんですか?」
「用意しようとは思いやしたがね。願い事は自分の手で叶えるもんだと
思い直しやしてねィ」
用意したようなしなかったような・・・。沖田の言葉に、どっちだよ。
とツッコミそうになる・・・が。
別にそんな事しなくても、皆お祝いぐらいしたいのに。
と、苦笑した。
あぁ、でもこの人は、そう言う事が苦手そうだ。
だからこそ、こういう変化球で来たのだろう。
近藤さん達も大変だな。と、新八は笑みを零すと、
自分への変化球が来る前に・・・と、素直な言葉を沖田へと贈った。
**********************
沖田ハピバ話。
彼は素直に祝われてくれなそう(笑)
まだ夜も明けてそんなに経っていない頃。
土方は徹夜明けの体を引きずり自室に帰る途中で、山崎に呼び止められた。
少しでも体を横にして休みたい土方にとって、それは目つきも悪くなるのに
拍車を掛けたが、既に慣れつつある山崎にそんなものは効きやしない。
けれど、好き好んで八つ当たりを受けたい訳でもないので、山崎は
至ってシンプルに呼び止めた用件を告げた。
それを聞いた土方は、大きく溜息を零して項垂れ、あと少しで辿り着ける
自室に背中を向けた。
まだ人通りも少ない道を歩き、土方は無事目的地へと辿り着いた。
古くはあるが、それなりに立派な玄関の前で来訪を告げれば、
奥の方から少し高めの声が返ってくる。
そして軽い足音と共に、この家の住人である眼鏡の少年の姿が現れた。
「あ、土方さん。お早うございます」
「あぁ・・・何時も悪いな。で、近藤さんは?」
ニコやかに挨拶をしてくる新八に、軽く手を上げて答え、
土方は 庭か? と視線をそちらへと動かした。
そんな土方に、 それが・・・と、新八は困ったように眉を下げた。
「どうした?」
「いえ、あの電話した時は何時もどおり倒れてたんです、庭で。
で、電話した後縁側まで運んだんですけど、そこに姉上が来て、
ハーゲ○ダッツがないわね・・・って言った瞬間・・・」
「・・・・行ったのか」
「・・・はい。そりゃ~もぅ凄い勢いで飛び起きて、そのまま・・・
一応その後真選組に電話したんですけど、もう土方さん、出られた後
だったみたいで・・・」
すみません。と頭を下げる新八に、土方は出そうになる溜息を飲み込み、
下げられた頭へと手を伸ばす。
「別にオマエのせいじゃねぇだろ。気にすんな。それに元々は
こっちが迷惑かけてんだしな」
「あはは、そうでした。」
軽く撫でながら言う土方の言葉に、新八の顔に笑顔が戻る。
それに安心した土方は、少し待たせてもらえるか・・・と聞き、
了解を得ると家の中へと足を踏み入れた。
「にしても、今日は車じゃないんですね」
何時もなら気絶した近藤を迎えに来るので、大抵車でやって来る。
なので、今日みたいな事があったとしても、無線で連絡が行くのだが・・・
縁側へと案内した新八が不思議に思い聞いてみると、
「あぁ。徹夜明けでな、事故りそうだったんで歩きだ」
と言う答えと、小さな欠伸が返ってきた。
土方にしては珍しいその行動に、新八の目が少し見開く。
「・・・本当に眠そうですね」
「まぁな・・・ここの所忙しくてな、きちんと眠れたのは確か・・・」
縁側に腰を下ろしつつ、指折り数え始めた土方に、新八の顔が心配げな
ものへと変わる。
「大丈夫なんですか?」
「あぁ、今日は午後からだし、もう少しすれば少しは楽になるからな」
土方はそう言うと、新しいタバコを取り出し、火を着けた。
新八はそれを見ると、近くの座敷に常備されている灰皿を持って来て
土方の隣へと置いた。
「・・・わりぃな」
「いえ、これもう真選組専用なんで」
気にしないで使ってください。
笑ってはいるが、どこか怖いその表情に、土方は少し首を傾げる・・・が、
その専用灰皿を見て納得した。
・・・この薄っすらとついてる染みは近藤さんのか・・・
細い部分に見える赤い染みに、この灰皿の本来とは違う使用例に気付いた
土方は今度こそ大きく溜息を零した。
「本当・・・わりぃ」
「いえ、もう慣れました。あ、今お茶持ってきますね」
肩を落とす土方に、先程とは違った本当の笑顔を送ると、そのまま台所へと
姿を消した。
縁側に残ったのは土方一人。
ナニをする訳でもなく、ただ目の前の庭を見詰めていると、
ドコからか小鳥の鳴く声が聞こえてきた。
気温は寒くもなく、かと言って暑くもなく。
・・・今眠ったら気持ちいいだろうなぁ。
等と思ってしまうのも無理はない。
だが、ここはただでさえ迷惑を掛け捲っている志村家の縁側なのだ。
・・・まぁ万事屋には色々とこちらも迷惑を掛けられてはいるが、それは
あくまであの銀髪に・・・な訳で。
大体一般常識を考えても、そんなに親しくない人様の家で寝る事は
出来ないだろう。
年若いながらも、キチンと背筋が伸びている新八の事を、
土方は気に入っているのだ。
そんな少年の前で、だらしない態度を見せる事は出来ない。
土方は遠くなりそうな意識を戻す為、力いっぱい頭を振ると、
短くなったタバコを灰皿へと押し付け、新しいものを口に咥えた。
「あ、土方さん。吸いすぎですよ?」
すると、背後から咎める様な声が土方にかかった。
それを緩慢な動きで振り返ると、
「眠気覚ましだ」
とだけ答えた。
その答えに新八はムッと口を歪める。
「そんな不健康な眠気覚ましは止めて下さい」
はい、どうぞ。そう言って手にしていたお盆を置き、土方に進める。
「おい・・・これ」
見ればソコには暖かそんな湯気を出すお茶と、美味しそうなお握りが。
「朝ごはん、まだですよね?」
僕もまだなんで一緒に食べましょう。そう言って笑う新八に、少し戸惑う。
ただでさえ眠いのだ。これで腹を満たしたら、眠気所じゃなく
一気に爆睡だろう。
「で、食べたら少しでもいいから寝てって下さい。
どうせ近藤さんが帰って来るまで待ってるんでしょう?
時間は有効に使わなきゃ」
迷う土方を他所に、ニコリと笑って 頂きます。
と言うと、新八はお握りの一つを手に取り、食べだした。
土方は、そんな新八にフッと笑いを零すと、同じようにお握りへと
手を伸ばした。
「って言うかマヨネーズはねぇのか?」
「中身はツナマヨですよ。それで我慢して下さい」
土方の要望をキッパリと斬って捨てると、新八が あ と声を零した。
その視線を追えば、そこには何処かの家で上げられていく鯉幟の姿が。
「そう言えば今日はこどもの日でしたね」
新八の言葉に、土方は今日の日付を思い出す。
疲れた体を引きずって、漸く休めると思えば、近藤の回収要請。
しかも来てみれば本人はいなく、睡魔と戦いつつの待機状態。
あと数時間もすれば、また激務の始まりだ。
だが・・・
土方は手にしていたお握りに齧り付き、優雅に泳ぎ始めた鯉幟に目をやる。
穏やかな朝日の中、美味しい握り飯にありつけた。
しかもその後は、近藤が帰って来るまで・・・と言う期限付きではあるが、
安らかな睡眠時間を手に入れる事が出来た。
おまけに隣には、結構気に入っている眼鏡の少年だ。
・・・中々いい誕生日なんじゃねぇのか?これは。
「いい日になりそうですね、今日」
「・・・・だな」
青い空を見上げ、そう笑う新八に、土方は口元を緩く上げ、答えた。
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少し遅れましたが、トッシー誕生日話です。