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服に着いた知らない残り香や、口紅の痕。
よくある修羅場移行へのお約束だ。
でも僕は男だし、あくまで気をつける方であって、
気付くほうではない筈だ。
・・・まぁ、色々あって気付く方にもなるって
立場になったのだけれど。
でも、そんなのはドラマとかの中だけで、
実際そんな事はないと思っていた。
かなり認めたくはないが、案外モテる銀さんではある・・・
が、何故かそう言うのとは結びつかなかったし。
だから、まさか銀さんの洗濯物を前に、
固まってしまうなんて事態、想像も出来なかったんだ。
どうしよう・・・これ。
手にした銀さんの着流しを見詰め、暫し呆然とする。
そんな僕とは裏腹に、風呂場から聞こえる銀さんの鼻歌は
異様に明るく耳に入り込んでくる。
それを聞いて、上機嫌な理由はコレなのかな。なんて
思わず考えてしまう。
考えてしまうので、余計戸惑ってしまう。
これは・・・怒っていいべきか。
それとも見ない振りをした方がいいのだろうか。
だって銀さんだっていい大人だ。
やって良い事と、悪い事の区別ぐらい判っている筈だ。
それにもしかしたら僕の勘違いって事もあるかもしれない。
そう、そうだよっ!
だって今までちゃんとしてきたじゃないか。
上手いことやってきたじゃないか。
だからきっと僕の勘違いだよ、うん。
そう結論付けた所で、不意に風呂場から声を掛けられた。
「新八~、どうかしたか~?」
どうやらずっと脱衣所に居る僕を不思議に思ったらしい。
一瞬ビクリとするものの、慌てて返事を返した。
「や、別になんでもないんですけど・・・
えっと、銀さん?今日って何処に行ってたんですか?」
「・・・・・・パチンコだけど、なんで?」
思わず出てしまった僕の問い掛けに、銀さんは少しだけ
低くなった声でそう答えてきた。
・・・その間は一体なんなんですか、銀さん。
湧き上がってくる不信感に、手にした着物をギュッと握る。
「いえ・・・なんか銀さんの服から甘い匂いが
したような気がして・・・」
「・・・タバコの匂いじゃねぇか?
甘い匂いのやつって結構あるし」
「そう・・・ですか」
銀さんの言葉に一応頷くものの、明らかにタバコとは違う
匂いにますます不信感は沸いてくる。
それに、もしこの匂いが銀さんの言う通りタバコの移り香だとしても、
この着物についた痕は・・・
「明らかに餡子の痕だろうが、コノヤロォォ!!!!」
やっぱり見ない振りなど出来ないので、風呂場に乗り込んで
鉄拳制裁させて頂きました。
全く、最近珍しく買い食いも隠し糖分もしてなかった
と思ったら、外で食ってきやがって。
しかもそれをなんとか誤魔化そうとするなんて・・・
銀さん、アンタ自分がいい大人なんだって事、
そろそろ自覚して下さい。
まぁ開き直って言ってきても、即 鉄 拳 ですが。
とりあえずお風呂から出てきた銀さんを正座させて、
お説教タイムスタートだ。
・・・と、意気込んでいたら、銀さんはしおらしい態度で
小さな包みを僕へと差し出してきた。
何だろう。と首を傾げると、銀さんは少しだけ照れくさそうに
『今日、ホワイトデーだからよ。お返し・・・みたいな?』
なんて言って来た。
どうやら銀さんは、今日一日甘味屋で悩みに悩んで
これを買ってきてくれたらしい。
着物の匂いはそこでついたもので、餡子は試食した時に
ついたんじゃないのか?と言う事だった。
「絶対ぇ美味しいからよ、それ。
もう銀さんの保障付き」
だから、一緒に食べね?なんて目の前に立っている僕を
上目遣いでおずおずと見てくるものだから、僕はつい
口元を緩めてしまった。
全く、銀さんたら・・・
アホですね、本当。
大体何に対してのお返しなんですか?
僕、チョコなんてあげてないですよね?
寧ろ貰いましたよね、今年もアンタから。
ってか保障しちゃうほど試食してきた訳ですか。
そりゃそうですよね、着物に匂いつくほど
店にいたんですからね?
その上これも公然と食べたいって事ですか。
「とりあえず説教と言う名の拷問決定ですね。」
にっこりと笑って最終通告を銀さんに告げさせて貰った。
どうやらウチの場合、修羅場移行する為のアイテムは、
甘味の移り香と餡子の痕らしいです。
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イベントであろうと、うっかりさせません。
寧ろイベントだからこそ、うっかりしません(え?)