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銀さんがいそいそと家を出て行ってから早数時間。
既に日付も変わり、神楽ちゃんも夢の中だ。
「僕もそろそろ寝ようかな・・・」
ボソリと呟き、繕い終えた着物を置いて出ていた針を仕舞う。
銀さんが呑みに行く時、大抵僕は万事屋に泊まる。
幾ら神楽ちゃんが強くても、まだまだ子供だし、その上女の子だ。
定春が居ると言っても、一人になんかしておけない。
だけど銀さんは、
『オマエだってまだお子様でしょうが』・・・だの。
『ってかなんで銀さんが居ない時にお泊り!?』・・・だの。
『寧ろ神楽を泊まりに出して、二人で・・・』・・・なんて
頭の腐った発言しかしてきやがらない。
なので僕は銀さんが呑みに行った時だけ泊まろうと、
固く決心していたりする。
まぁそんな訳で、本日僕はお泊りだ。
電気を消し、一応銀さんの布団も敷いてある和室へと
引っ込もうとしたが突然力強く玄関が叩かれ、その足を止めた。
「え?まさか銀さん?」
咄嗟に時計を見れば、まだ帰ってくるには早い時間だ。
だって確か今日は、誰かの奢りだと言っていた。
ならばここぞとばかりに呑みまくって来るはず・・・
そう思っていると、またドンドンと玄関を叩かれた。
このままだと下からも押入れからも苦情が来てしまう。
でもこんな時間に来るお客なんて、碌な用件じゃないよなぁ。
なんて思いつつ、僕は早足で玄関へと向かった。
・・・ら、玄関で待っていたのは、碌な用件なんかじゃなく、
禄でもない輩だったりした訳で。
だってアレだモノ。
なんかユラユラ揺れてるもの。
二つのモジャモジャな影が
ユラユラユラユラとっ!!
・・・うん違うな。
きっと来る所間違えたんだよ。
だってこんな季節外れのナマハゲ、知らないもの。
それに悪い子なんか居ないしね、ここには。
悪い大人は居るけど、今は呑みに行ってていないから。
それに良い子は寝てる時間だしね。
僕、良い子だし。きっと寝てるし。
なのでここに居る僕は幻だし、
玄関の影はもっと幻だ。
そう自分に言い聞かせつつ、その場を後にしようと
体を反転させた所で、幻から声が掛けられた。
「お~い、新ちゃ~ん。ちょ、開けて~。
愛しの銀さんのお帰りだよ~。
何時もみたいに可愛い顔で、
『ご飯にする?それともお風呂?それか・・・僕?』
なんてほっぺ真っ赤にして出迎えて~」
「おぉ!何時もそんな事しちょるのか、金時ぃ。
羨ましいのぉ~、一遍死んで来い」
「あれ?坂本、なんか間違ってない?」
「あははは、すまんの、また名前間違えたかの」
「ん?他にもあった気がすっけど・・・ま、いっか。
それより新ちゃんのチューだよ、チュー。
お帰りのチュ~」
「そんな事までしちょるんか。
本当羨ましいぜよ、金時ぃ。とりあえず死ね」
「って誰がしとるか、そんな事ぉぉぉ!!!」
幻+幻聴だと言う事にしておこうと思ったけど、
あまりの妄想具合に我慢出来なくなった僕は、
つい勢い良く玄関を開けてしまった。
だが僕の怒りなんてなんのその。
玄関先に立っていたモジャモジャ達は、開いた玄関に
機嫌よく中へと入ってきた。
どうやら相当呑んできたらしい。
ゴツンゴツンと色んな所に体をぶつけながら、
居間へと向かっていく。
・・・どうせなら頭ぶつけちまえ、頭。
とりあえず入れてしまったものは仕方が無い。
僕は大きく息を吐いて玄関を閉めると、酔っ払いがいるであろう
居間へと足を向けた。
・・・ら、なんでだろう。
「おぉ、新八君。お邪魔しているぞ」
「っつうか酒ねぇのかよ、酒」
そう言って我が物顔でソファに座っている、
手配書で見慣れている顔の方々が。
あれ?僕、さっき玄関閉めたよね?
しかも仕方なしに入れたの、モジャ達だけだったよね?
なのになんで居るの、この人達ぃぃ!!!
ってかどっから入った!と視線を巡らせば、
何故か開いている和室の窓を発見し・・・
「・・・まともに入って来れないんですか」
と言うか一緒に呑んでたんですか、あんた等。
カクリと肩を落として力なく問えば、何故か呆れたように
高杉さんに鼻で笑われた。
「まともに入ってきてどうすんだよ。
一応手配書に載ってる身だぜ?」
「うむ。何処で誰に見られてるか判らないからな。」
どうやらそれなりに気を使ってくれてるらしい。
使う所、完全に間違えてると思うんだけどね!?
大体自覚あるなら、まず呑みに行くな。
「ごめんなぁ、新ちゃ~ん。
もうさ、こいつらがど~しても、俺と新ちゃんの
新婚生活具合を見て見たいって言いやがってよぉ」
思わず半目で残念な大人達を見ていると、
更に残念な大人が擦り寄ってきた。
「何を言っておる、銀時。
お前がくだらん妄想をグダグダと言い募るから、
店から追い出されただけだろうっ!」
そう言って桂さんが銀さんの頭をパカリと叩く。
・・・どうせならカチ割る勢いでやって下さい。
と言うか・・・
「追い出された?」
耳に入った言葉に、コトリと首を傾げる。
だって妄想・・・ってのはキツイけど、ただ話してただけでしょ?
なのに追い出されるってどんな状況?
「妄想っつうか・・・
普通に通報されるレベルだな、ありゃ」
そんな僕の心境を察したのか、高杉さんがフッと渋く
笑いながら答えをくれた。
いや、そんなカッコ良く言われても、なんか傍に変なモノ
抱えてますからね、高杉さん。
なんですか、それ。
なんか角の薬局の前で見た事ある
ゾウさんなんですけどぉぉ!?
ってかさっきからちゃんと答えてくれて
普通にいい人ですね、高杉さんんん!!
・・・って、それよりもっ!
僕は古き良き伝統のお呪いをする為に持ってきていた
箒を勢い良く、足元に居る白モジャに振り下ろした。
「おいこら、天パ。」
「あ、ヤバイ新ちゃん。その目、ヤバイ。
なんか銀さんゾクゾクしてきたから。
箒が鞭に見えてきたから。
え、何コレ。新しい世界への第一歩!?」
「あははは。キモイぜよ、金時~」
何故かウニョウニョと体をくねらせる銀さんに、
楽しげに笑いながらもそっと銀さんから離れていく坂本さん。
ちょ、モジャ仲間なんだからどうにかして下さいよ、コレっ!
僕も本気でキモイんですけどぉぉ!!
一先ず綿埃を払うように箒を動かし、
銀さんを足元から離れさせる。
そんな僕等に、桂さんが深々と息を吐いた。
「銀時・・・いい加減にしないか。
俺達は新婚生活具合を見に来ただけで、
夜の生活まで見るつもりは・・・」
「おおおぉいっ!!
結局見に来てんじゃないですかっ!
違いますからね!そんなんじゃないですからっ!!」
「恥ずかしがらなくてもいいぞ、新八君。
人にはそれぞれ趣味嗜好というものがあって、
それを否定する程俺達も野暮じゃない」
「そこじゃねぇよ、違うのはっ!
そんな事考える自分の頭を否定しろよ、コンチキショー」
「あ、忘れてたがこれ、土産だ」
「じゃないですよね、高杉さん。
それ明らかに途中でなんとなく持ってきた
角の薬局の前にあるゾウさんですよね。
なんですか、邪魔になったんですか!?」
「んな事ある訳あるめぇよ。
なんだ?カエルの方が良かったのか?
でも新婚家庭にはこっちの方がいいだろうよ。
いいから遠慮なく受け取れ。
コイツがあると足の置き場がねぇんだよ」
「違いが全く判らないんですけど。
ってか結局邪魔なんじゃねぇかぁぁ!!」
「そうじゃ、チ○ポチ君。
ちょっとトイレ貸してくれんかの~」
「アンタはまず人の名前覚えやがれ。
何爽やかに人の名前を伏字部位にしてんだ、コノヤロー」
なんかもうやだ・・・僕は持っていた箒の柄を床に着き、
カクリと肩を落とした。
そこには、ニヨニヨと僕の足に縋り寄ってくる
白いモジャモジャが居て・・・
僕は箒を持ち上げると、そのモジャ目掛けて再度柄を
突き下ろした。
・・・うん、なんかカエルが潰れたような音がしたけど、
きっと幻聴だ。
だってもう真夜中だもん。
いい子は寝てる時間だもん。
僕だってもう寝ようとしてた所だもん。
だから幻聴ぐらい聞こえたって仕方ないよ、うん。
あぁ、でも目の前の煩い幻覚共は
消えないんだろうな~。
なら・・・と、突いてた柄をグリグリと力強く押して止めをさし、
僕はすっと押入れの前まで移動した。
そして残念な大人達の方を向き、にこりと笑う。
「皆さん、お休みなさい」
そう言って不思議そうにこちらを見ている銀さん達を余所に、
僕は勢い良く押し入れを開け放った。
そこには勿論、きちんと寝ていた良い子の見本である筈の
神楽ちゃんが、物凄い形相で起きていたりした訳で。
・・・ま、アレだけ騒いでれば起きるよね、普通。
瞬間、色を失くした大人達に向かって、小さな影が
物凄い勢いで飛び掛っていきました。
うん、自主的に消えないなら、
消せばいいだけの話だしね。
その後、少しだけ風通しは良くなったものの、
とても静かに眠ることが出来たのは言うまでもない。
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何時も色々とお世話になってる蒼さんへv
こんな感じになりましたが捧げさせて下さいぃぃ!!