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「・・・本当、勘弁してよ」
久しぶりに晴れた昼下がり、新八は天下の往来で深々と
溜息を零していた。
「おう、新八じゃねぇか。
こんなトコでボーッと何突っ立ってんでィ。
仕事サボってんじゃねぇよ」
とりあえず道のど真ん中で突っ立ってるのもアレなので、
脇の方へと身を寄せていた新八に、聞きなれた声が掛かる。
視線を向ければ、ジュース片手にこちらへと歩いてくる
沖田の姿が。
「アンタに言われたくない言葉
第一位ですよ、それ。」
「あぁ、そりゃSとしてはナイスチョイスだねィ。
で、何サボってんでィ」
「・・・そもそもサボる為の仕事がありませんが?」
「判ってまさァ」
今更何言ってんだ?と言わんばかりの沖田の表情に、
軽くイラッとくる。
だが、それを表面上に出しても、沖田を喜ばすだけだ。
新八は大きく深呼吸をする事で一先ず落ち着き、
持っていたビニール袋を軽く上げた。
「・・・ま、一応買い物の帰りですけどね。
買い物が仕事に入るかどうか、
物凄く疑問ですが。
でも、一応サボっている訳じゃないですよ?」
待ってるんです。そう言って新八はチラリと視線を動かした。
それに釣られて沖田も視線を向ければ・・・
「あ~・・・アレね」
二人の視線の先、そこには周囲の視線も何のその。
丸っきり無視して激しく言い争う大の大人が二人。
「一緒に買い物に来たんですけど、フラッとどっか
行っちゃって。
で、漸く見つけたと思ったら、・・・アレですよ」
一応声掛けたんですけどね・・・新八はそう言うと、
カクリと肩を落とした。
「なんでィ、旦那ともあろう御人が
新八の事を無視したんですかィ?
旦那ともあろう御人が?」
「・・・どんな御人なんですか、沖田さんの中で」
「どんなに離れていようと新八の危機には必ず
駆けつける。
寧ろ危機じゃなくても駆けつける。
ならいっその事ずっと傍に居ろよ、
ってぇか居るじゃん、もう。
・・・てしみじみ思わせる御人でィ」
「すみません、本当にどんな御人なんですか
それっ!」
淡々と説明する沖田に、新八が声を荒げれば、
「あそこに居る御人でィ」
と、気持ち良いぐらいきっぱりと少し離れた所に居る
銀時を指差した。
「だから、新八が声を掛ければ一発だと思うんだけどねィ」
心底不思議だと言う風に、沖田が首を傾げた。
「一体今日はなんで喧嘩してんでさァ。
土方さんの開いてる瞳孔にガンでもつけられたのかィ?
そりゃ仕方ねぇや。あの人ぁそれが通常の目つきだからねィ。
生れ落ちた瞬間からそれだから。
傍迷惑極まりねぇよなぁ、本当。
潰れちまえよ、そんな目ん玉ぁ。
んで飛び出した目ん玉抉り出して貰って、
勝手にレッツパーリィィしてきやがれ。
後は俺が地に落としてやっから。
あ、それともマヨ臭でも移されちまいやしたか?
っつうても旦那だって糖分とアルコール臭と
マダオ臭撒き散らしてんだから、相殺って
感じだけどねィ。
っつうか寧ろ即殺って感じだねィ、俺的には。
で?理由はなんでィ?」
ま、理由なしでも普通に喧嘩してっけど。
そう言って沖田は新八へと視線を戻した。
それに対し・・・なのか、それとも全体に対してなのか。
新八は深々と溜息を吐くと、沖田の疑問に答えを返した。
「・・・朝御飯です」
「・・・は?」
思わぬ返答に、沖田の目が少し見開かれる。
それに新八は だからっ! と呆れた様に言葉を続けた。
「朝御飯ですよ。ほら、今日のお迎えって土方さん
だったじゃないですか」
そう言われ、沖田は あぁ。 と頷いた。
既に日常の一部と化してしまった、志村家への
近藤回収だが、時間が合えば、時折新八が朝御飯を
出してくれたりする。
現に沖田も既に何回か御呼ばれになっているし、
お礼と迷惑料を兼ねて、手土産を持って行ったりしている
訳だが・・・
それが何で喧嘩に?
多分、今日迎えに行った土方も、新八の朝御飯を
ご馳走になったのだろう。
でも、それと銀時が新八を構わずに土方と言い争いを
している事がどう繋がるのかが判らない。
尚も不思議そうにしている沖田に、新八は少しだけ
頬を染めて言葉を続けた。
「だから・・・その・・・どうも土方さんに会った時に
銀さん、それを聞いたみたいで・・・許せねぇって。
僕の朝御飯、土方さんから吐き出させるまで待ってろって」
「はぁ・・・」
気の抜けた声を出しながら、沖田は未だ言い争っている
二人へと視線を向けた。
相変わらず銀時は真剣に怒ってて、土方も真剣に
言い返している。
それはそうだ。
天下の往来・・・と言うか往来でなくても、
吐き出したくはない。
と言うか普通に無理だ。
けれど、銀時としてはそのままは許せなくて・・・
・・・まぁアレだ。
「愛されてんねェ、新八は。
全く羨ましくねぇけど」
「・・・でしょうね。
ほっといて下さい」
そう言うが、やっぱり新八の頬はほんのり赤く、
沖田はひっそりと口元を緩ませた。
「てか、吐き出させるより腹ぁ掻っ捌いて
中身出した方が早くねぇかィ?
あれ?俺超良い事言ったんじゃね?
やべ、旦那にアドバイスしてこねぇと。
寧ろ参加してこねぇと」
「ちょっ!土方さん、逃げてぇぇぇ!!!」
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ウチの坂田は心が狭いです。