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ダラダラとテレビを見ていると、台所から俺を呼ぶ新八の声が
聞こえてきた。
なんだよ。と顔を出せば、困った顔で 味噌が足りないんです。と
言う。
おいおい何だよ、銀さんに買いに行けってか。
言っとくけどアレだから。銀さん、今忙しいから。
ダラダラしてるように見えるけど、
ダラダラするのに忙しいってのもあるんだからね?
でも新ちゃんがチューしてくれたら、
何を差置いても新ちゃんを抱き締めます。
「つっこむ気すら起きないような事
並べ立てないで下さい。
そうじゃなくて、ちょっとお登勢さんのトコに
貰いに行ってくるんで、火、見といて貰えます?」
「あ?ないんだったら買いに行きゃあいいじゃねぇか。」
どうせ必要になるんだし。不思議に思いそう聞くと、
新八はキッと視線をキツクさせた。
「明日特売だって判ってるのに、なんで前日に
定価で買わなきゃいけないんですか」
「・・・ですよね~」
って事は、明日は買出しデーか・・・とほんの少しだけ頬を
引き攣らせる。
侮るなかれ、味噌は案外凶器になる。
特に特売だと一個や二個じゃすまないしな。
「なら俺が貰ってきてやるよ」
ババァんトコだろ?そう言うと新八は驚いたように目を開いた。
・・・や、ソコまで驚くことでもないんじゃね?
大体俺が火なんか見ててみろ。
本当に見てるだけになっからな?
第一、オマエが行ったらババァの長話に付き合って
中々帰って来ねぇじゃねぇか。
ダメだから、それ。
何時も言ってるだろ?
時は金なり。人生に無駄な時間はありません。
そんな暇あんなら、もっと銀さんを構ってくださいって。
って事で俺がさっと行ってさっと強奪してきてやんよ。
俺は慌てたように ちゃんとお礼言ってきて下さいよ? と告げてくる
新八に背を向けて軽く手を振り、玄関へと足を向けた。
「って事で味噌くれ、ババァ」
「挨拶もなしに味噌強盗かい。
アンタに必要なのはまず脳みその方だよ」
扉を開けてそう言った俺に呆れた顔をするものの、
ババァは 少し待ってな。 と言って奥へと引っ込んでいった。
「はいよ。どうせ後少しだからコレ毎持っていきな」
そう言って持って来たのは、中身が三分の一程に減った
味噌のパックで・・・
「って、バァサンもコレ使ってたのかよ」
ウチで見慣れたお徳用の味噌に、少し驚く。
「なんだい、文句でもあるのかい?」
「や、そうじゃなくてよ。なんとなくこう・・・バァサンは
こだわり系のヤツを使ってっかな~ってよ」
そう言う俺に、バァサンは まぁ以前はそうだったけどね。
と煙草を手に取り、火をつけた。
「でも新八がこっちの方が塩分控えめな上に味もそんなに
変わらないって教えてくれてねぇ」
確かにそうだったんで、今じゃずっとコレさ。
煙を吐き出しながら笑ってそう言うバァサンに、
俺は へ~。 と言うしかない。
・・・ってかただ安いだけじゃなかったんだな、これ。
「あ、序にこれ、持ってきな。」
ぼんやりと味噌を手に眺めていると、バァサンが皿を取り出し、
鍋から煮物を移すと、俺へと差し出してきた。
「皿はアンタんトコのだから返さなくていいよ。」
「あ?なんでウチの皿がここにあんだよ」
「昨日新八がお裾分けって大根煮たのを持ってきてくれたんだよ。
美味しかったよって言っといておくれ」
そう言われ、俺は夕べのオカズを思い浮かべた。
・・・うん、確かにアレは美味しかった。
「・・・ってかよ・・・」
俺は店を出て階段の所で少し立ち止まる。
手には新八から言われた味噌と、貰った煮物。
これはこのまま今日の夕飯として出されるのだろう。
そして多分、バァサンのトコも。
で、昨日は昨日で、ウチと同じオカズがバァサンの
食卓にも並んでいて。
今まで気付かなかったが、きっと毎朝、中身は違うが
同じ味噌を使った味噌汁がどちらにも出てた筈で。
それはまるで・・・
なんと言うか、まるで・・・
同じ家に住んでいるような・・・
「・・・や、確かに同じ屋根の下だけどよ?
そのまんま一軒の家だけどよ?
だけど・・・」
・・・やべ、なんか緩む。
頬とか顔とか言わず、なんか全体的に。
「・・・ったく、仕方ねぇなぁ」
重いついでだ。
明日はバァサンの分まで味噌買ってきてやっか。
多分これを見せたら新八も同じこと言うだろうし。
そう思い、階段を登る為に上げた足は、
やはり何処か軽くて何時もよりフワフワしていた気がした。
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多分カレーは同じ日に(笑)