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その日、何時もの様に銀さんを起こそうと和室の襖を
開けた所、奇跡が起きていた。
「銀さん!もう起きてたんですか?」
布団の上で片膝を立てて俯いてる銀さんに思わずそう言えば、
ダラリと投げ出されていた手が軽く上げられた。
その仕草に、僕はちょっとだけ眉を顰める。
コレは多分あれだ。
寝惚けているとかじゃなくて、夢を引きずっているのだ、多分。
それもあまりよろしくない夢を。
銀さんは何も言わないけど・・・って言うか聞いても
大抵誤魔化されてしまうんだけど。
それはきっと、銀さんの昔に関係する夢で。
それが判るぐらいには、僕達は一緒に居る。
でもそれは聞いてあげたいと、教えて欲しいと思うほど
近い場所だけど、
同時に無理矢理聞き出してはいけないと判るほどの距離で。
だからこう言う時は何も言わず、そっとしておく。
・・・なんて出来るほど大人ではない訳で。
「はい、起きて起きて」
今日はいい天気ですよ~。なんて言いながら、ズカズカと
和室へと足を踏み入れる。
そこら辺に転がってそうな夢の残滓を蹴り散らかして。
そして窓に近付くと、勢い良く開けて部屋の中に
風を送り込む。
そのままどっかに吹き飛ばしちゃえ、そんな夢。
序とばかりに フン と腰に手を当てて大きく息を吐く。
「・・・寒いんだけど」
ポツリと言われた言葉に視線を向ければ、
俯いてた銀さんが僕の方を向いていた。
「動けば暖かくなりますよ」
でも・・・と、僕はニコリと笑って
銀さんに近付き、直ぐ傍に膝をついた。
そして未だぼんやりとしている銀さんの頭を
ぎゅっと抱え込む。
「少しだけお裾分けです」
暖かいでしょ。なんて言いながら、ぽんぽんと軽く銀さんの頭や
背中を叩く。
はいはい、さっさとこの人から離れてくださいね。
出来ればもう二度と来て欲しくないけど。
でもきっとそうもいかないんだろうなぁ。なんて思いながらも、
何度も何度も、銀さんから夢を叩き落とすように
ポンポンと叩く。
うん、何度来たって絶対引き剥がしてやる。
だってもう銀さんは、僕等の銀さんなのだ。
「え?ちょ、何このサービスデー。」
そう言ってワタワタと焦る銀さんは、体を少し離して見れば
何時もの銀さんで。
「なんでしょうね、このサービスデー」
僕は仕上げとばかりに、ちゅっ と小さく銀さんの頬に
唇を落とした。
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結局甘えてるのです、坂田は。