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「もうさ・・・これくらいでいいんじゃね?
良くやったよ、俺達は。ってか偉いね、感心するね、マジで」
「って、この惨状を前にそんな事を言ってのける精神に
感心するわぁぁぁ!!!」
うんうんと自分の言葉に頷く銀時の頭に、新八の言葉と紙紐の束が投げられる。
モノ自体は凶器と掛け離れているが、何分勢いと量が半端ない。
思わず前のめりに頭を吹っ飛ばす銀時に、机に座っていた神楽が
フンッと鼻を鳴らした。
「自業自得ネ。鋏じゃなかっただけ有難いと思うヨ」
「・・・や、神楽ちゃんも働こうよ。ってかそんなトコに座っちゃ
ダメでしょ!!」
そう言って仁王立ちする新八は、三角巾に襷掛けという
やる気十分な格好だ。
万事屋銀ちゃん。そんな訳で現在大掃除真っ最中です。
「大体毎日掃除してんだからよ、今日ぐらい別にいいじゃねぇか」
「それは僕の台詞です。
何勝手に人の仕事を自分の手柄みたいにしてんですか」
ホラ、さっさと手を動かす!新八にそう言われ、銀時はブチブチと文句を
言いながらもジャ○プを纏める手を動かした。
「大体そんなに溜めるから後で苦労するんでしょ。」
「仕方ねぇだろ?ジャ○プぐらいしか溜めるモンがねぇんだからよ。
あ、違うな。家賃も溜まるな、自然に。」
「それ買わなかったら金が溜まるんだよ!
家賃も普通に払えるんだよ!
ってか何自然発生みたいな感じにしてるんですか!
そんなんで溜まるのは銀さんの血糖値ぐらいですよ」
「新八~、これ捨ててもいいアルカ?なんか腐臭がするネ」
「ちょ、神楽!?
それ銀さんの着物ぉぉぉぉ!!!!」
「・・・加齢臭の間違いだったアルカ」
「神楽ちゃん、それは捨てないで洗濯籠ね。
そんなんでも買うとお金が掛かるから」
「・・・あれ?なんか銀さん、泣いてもいい状況じゃね?
ってか寧ろ泣くべき所じゃね?」
「泣いてもいいですから手は動かしてくださいね」
そうにっこりと笑って告げてくる新八は、背後に修羅を飼っている。
銀時と神楽は黙々と手を動かし始めた。
・・・が、やはりやり慣れていないものは楽しくないもので。
銀時はある程度ジャ○プを纏め終えると、鼻歌交じりで窓を拭いている
新八へと視線を向けた。
・・・何がそんなに楽しいんだか。
ニコニコと笑っている新八に不審げな視線を向けていると、
それに気付いたのか不意に新八が拭いていた窓から視線を上げた。
そしてバチリと合う視線。
またあの薄ら寒い笑顔を向けられては困る・・・と、銀時は慌てて
手元のジャ○プへと視線を落とした。
その姿に新八のクスリと笑う声が落ち、銀時はムッと唇を尖らす。
「新八君はいいね~。何しても楽しいお年頃みたいで」
銀さん、そう言う時期過ぎてるから判んないわぁ。
そう嫌みったらしく言う銀時に、新八は笑いを深める。
「年齢は関係ないでしょ。ってか、楽しくありません?なんか」
「悪ぃ。銀さんSだから、寒空の下一銭にもならない労働を
強いられてる事について何一つ楽しみは見出せねぇよ。
ってか何?新ちゃん楽しいの?
奉仕するのが楽しいの?んだよ、ならさっさと言えってぇの。
それなら今夜と言わず今からでも別の奉仕作業を・・・」
「引き千切って介護と言う名の奉仕を
受けさせてあげましょうか?」
「本当にすんませんでしたぁぁぁ!!
ちょっと変な方向に楽しみ見出してました、銀さんんんん!!!」
ギリギリと手にしていた雑巾を笑顔で捻り始める新八に、
銀時が慌てて頭を下げる。
微妙に腰が引けているように見えるのは、無理もない事だろう。
必死な銀時を見て新八は小さく苦笑する。
「全く・・・僕だってただ掃除が楽しいってのじゃないですよ?
でもこれってあれでしょ?一年間お世話になったお礼と、
また一年よろしくお願いします。って事でしょ?」
そう言って新八は、そっと窓のサッシに手を添えた。
「いっぱい、いっぱい色んな事がありましたもん、ここで。
だからすっごく綺麗にして、また来年も色んな事をしたいんです」
これからも、ここで。そう少し照れ臭そうに言う新八に、銀時はポカリと
目を丸くした。
そんな銀時の反応が、ますます気恥ずかしかったのか、新八の頬が
赤く染まってきた時、風呂場の方から神楽の声が銀時達の元へと届いた。
風呂場担当になった神楽だったが、どうにも落ちない水垢を発見したらしい。
新八はこれ幸い・・・とばかりに返事をし、銀時の視線から
体を外した。
そうして風呂場へと去っていく新八を、自然と目で追ってしまう銀時。
本当は何か言いたいのだが、何を言っていいのかが判らない。
と言うか、なんで行き成りそんな可愛らしい事を言いやがるのだ、
この眼鏡っ子は!
そんな気持ちから、パクパクと口を開けているだけの銀時に、
廊下へと出て後姿だけを残した新八が不意にその足を止めた。
そして少しだけ後姿を見せたまま、
「ちなみに銀さんも同じですからね。今日のお風呂で
ピカピカに磨き上げてあげますから覚悟しといて下さい!」
と、口早に宣言すると、今度こそその後姿を完全に銀時の視界から
消したのであった。
その後、漸く銀時の口から出た言葉にならない叫びと共に、
急スピードで磨き上げられていく万事屋があったのは言うまでも無い。
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多分今年最後のお話です。
皆様、よいお年を。
そして、来年もどうぞよろしくお願いします。<(_ _)>