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銀魂(新八中心)の同人要素満載のサイトです。 苦手な方はご注意を。
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ぼんやりとした視界の先に、これまたぼんやりとした
空があった。

そして微かに漂ってくる腐臭と血の匂い。
僅かに体を動かせば、背中越しに伝わってくる固い土の感触。


あぁ、そうか・・・


そこで漸く俺のぼんやりとした頭が少しだけ動いた。

ここは戦場だ。
それも、もう誰も生者のいない。

ならここにはもう用はない。

そう思っても、何故だか体が動かない。

どうしたもんだか、このままだと雨に降られてしまう。
別に今更そんな事を気にする性質でもないが、
今はとても寒いので、勘弁して欲しい。

そうこうしている内に、ポツリと一粒の雨が頬に落ちてきた。

あぁ、ヤバイな。

思わず手を翳した所で、俺は何故体が動かないかと言う理由を知った。

ポタリポタリと翳した手から、雨粒の変わりに血が頬へと
降り落ちてくるのに一つ、息を吐く。


まぁ仕方ないか。


いい加減上げているのに疲れた手を戻し、そう思う。

動けないなら仕方がない、ここで終わりだ。
それに誰も居ないと言うなら丁度いい。
誰にも迷惑を掛けずに逝けるだろうし、
何より見っとも無い姿を晒さなくて済む。

なら、それでいい。

安心して目を閉じようとしたその時、突然静かだったその場所に、
少し甲高い声が響いた。

驚いてついそちらに頭を向けると、なんともまぁ場違いな姿の
少年が立っていた。
そして袴の裾が汚れるのも構わず、こちらへと走ってくると、
勢い良く俺の傍へと膝を付き、序に俺を抱き上げた。

「何やってんですか、アンタ!」

再びぼんやりとしてきた俺の視界に、少年の顔はよく見えない。
だが、必死なのは良く判った。

判ったが、それはこちらの台詞だ。
何やってんだ、オマエ。そんなトコ座ったら着物汚れっぞ。
しかも血塗れの俺まで抱えて。
血は洗濯しても中々落ちねえんだから、後で怒られっぞ。

「そんな事どうでもいいんです!今はアンタの事でしょ!?」

や、それこそどうでもいいだろ。
俺、もう逝くし。
だから放っておいてくれ。

「ダメです、嫌です!」

嫌ってオマエ・・・
いいから放っといてくれって。
頼むから俺の事何て見なかった事にしてくれ。

「・・・なんでそんな事言うんですか」

だってオマエ、死んでく所なんて見たくねぇだろ?

「生きてはくれないんですか?」

そりゃ無理な相談だ。
だって俺、もうギリギリだし。

「ならせめてそれまで傍に居ます」

だから嫌なんだって、それ。
俺は一人で逝きたいの。
見っとも無ぇ醜態晒したくねぇんだよ。

「・・・でも、傍に居ます」

・・・強情だね、オマエ。
俺、結構カッコつけだから、そんな姿晒したくねぇんだけど。

「ごめんなさい」

謝るぐらいなら、俺のお願い聞いてくんねぇ?

「幾らでも謝るから、僕のお願いを聞いてください」


そう言うとソイツはそっと暖かい手を俺の頬へと這わせた。
そして先程落とした雨粒や血を、優しく拭っていく。


「もう無理なら、本当に無理なら、
せめて少しでも長く貴方の傍に居させて」


・・・ね?銀さん。

 

柔らかい声と共に、今度は雨でも血でもない、
暖かい雫がポタリポタリと降ってきて。

あぁ、オマエのお願いなら聞かなきゃダメだな、これ。

なんて思った俺が居た。

 

 

 

 

 

 





 

 

 


再び目を開けると、今度はぼんやりした空ではなく、見慣れた天井が
目に入った。

「あ、銀さん起きました~?」

もうすぐお昼ですよ。ぼんやりとした俺に、聞き慣れた声が
掛けられる。

頭をぐるりと向ければ、箒を片手に家事に勤しんでいる新八の
姿が。

「・・・新八~」

「何ですか~?」

「オマエって結構強情な」

「は?」

「後、意外とおねだり上手」

「・・・寝惚けてんですか?」

「俺、見っとも無くね?」

「寝癖がのっそいですけどね」

「でも居てくれんの?」

そう言うと、新八は動かしていた手を止め不思議そうに
俺を見詰めてきた。
そして近寄ってきて傍に膝を付くと、そっと俺の頬を
撫でてくる。

「変な夢でも見ました?」

「ん~ん、どっちかって言うと良い夢だな」

暖かい手に自分の手を添え、序に頬も擦り付ける。

「で、どうなの?」

 

 

問えばぼんやりと揺れる視界の先で、『当然でしょ』なんて
柔らかい声が落ちてきて。

 

 

 

 

 






 

あぁ、これでもう、一人でカッコつけて死ぬ事なんて出来やしねぇ。

**************
我侭だと判っていても、聞いて欲しい事がある。

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