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その日、沖田が甘味屋の軒先でボーっと団子を食べていると、
視線の先で見慣れた顔を見つけた。
どうやら買い物帰りらしく、
大きなビニール袋を片手に歩いている。
全く働き者な眼鏡でィ。
自分よりも小さな体で、チョコマカと家事をこなしているだろう
光景を思い、沖田は少しだけ感心する。
その時、こちらに気付いたのか、新八が軽く頭を下げてきた。
「こんにちは、沖田さん。」
それに対し、沖田は置かれた長椅子にダラリと腰を
落としたまま、軽く手を上げて挨拶を返す。
そして序とばかりに、チョイチョイと手招きをしてみた。
「何ですか?」
「暇なんでィ。ちょっと相手していきなせェ」
その堂々とした態度から、隊服であるにも関わらず
もしかして休憩時間なのだろうか・・・などと言う考えが
新八の頭に浮かぶ。・・・が。
「もう暇過ぎて仕事にでも戻らなきゃどうしようもない
感じだったんでィ。新八が来て丁度良かった」
「いや、そこは戻ってくださいよ。
ってか堂々としすぎじゃね!!?」
この人に対して『もしかして』なんてある訳なかったよっ!!
新八は一つ溜息を吐いたものの、言っても仕方ないと
判りきっているので、素直に沖田の隣に腰を降ろした。
「まぁいいじゃねぇですかィ。頑張って働いてるご褒美に
団子でも施してやりやすから」
新八が腰を降ろしたのを確認し、沖田はニヤリと笑うと
奥に居る店員に、団子の追加を頼む。
それを聞き、新八はもう一つ、息を零した。
「施すってアンタ・・・普通に奢るって言ってくださいよ」
「それは禁止用語でィ、サド的に」
「寧ろ禁止用語じゃない方が禁止なんですけどね、
一般的に」
ま、いいか。とりあえず団子は美味しそうだし。
どっちにしろタダだし。
「じゃあ・・・遠慮なく戴きますね?」
「おぅ、ガキが遠慮なんてするもんじゃねぇでさァ。
そんなんするぐらいなら、ひたすら恩を感じ取って
生涯忘れる事がねぇようにしなせェ」
「それは本気で遠慮したいんですけど!!?
ってかそんなに年、変わらないでしょうがっ!」
「いやいや、この年代の年の差は馬鹿にできねぇぜ?
特に知識の差が半端ねぇや」
「・・・思いっきり偏ってそうですけどね、
その知識」
まぁいいか。と言い合いを諦め、新八は運ばれてきた団子を
パクリと口にいれ、
沖田は満足気に頬を緩ませた。
その後、二人並んでまったりお茶をしていると、
前方から見慣れた黒服が視界へと入ってきた。
「あ、近藤さん」
「ん?あ、本当でィ。何やってんだ、あの人。」
二人して見ていると、大きく手を上げてこちらへと
近付いてくる近藤の姿が見えた。
「おぉ、総悟に新八君。
二人して仲良く何してるんだ?」
「沖田さんに丁度会って、お団子をご馳走になってたんです」
ニコニコと笑う近藤に新八がそう告げると、近藤は一瞬
キョトリと目を丸くし、次にクシャリと顔を綻ばせた。
「なんだ、総悟。誰かに奢るなんて
オマエも大きくなったんだな~」
そう言って大きな手で頭を撫でてくる近藤に、
沖田は身を捩って抵抗をする。
「違いまさァ!俺は施してただけでィ。
近藤さんこそこんなトコで何してんでさァ。
サボってんじゃねぇよ、コノヤロー!!」
「・・・や、それ沖田さんが言う台詞じゃないような・・・」
「うんうん、俺は判ってるぞ、総悟。
でもそっか~、人の財布は俺の財布って思ってた総悟がな~。
いや~、月日が経つのは早いもんだな~、うん」
「今でも当然そう思ってやすから、
安心して下せェ」
沖田にムッとした表情で手を振り払われたものの、
近藤の顔は満足気に微笑まれたままで。
「でも今日は新八君に奢ってあげるんだろう?
お兄ちゃんだもんな、総悟は」
あ、でもお義兄さんは俺だけどな。そう言って豪快に笑う
近藤に、
「なら今日の支払いは近藤さんがしといて下せェ」
とぶっきら棒に告げると、新八の手を取り、その場から
ダッシュで立ち去っていってしまった。
「えぇ!?ちょ、総悟ぉぉ!!!?」
そう呼びかけるものの、二人の姿は既に遠くなってしまって。
「まずった・・・かな?」
近藤は苦笑し、頭を掻いた。
それから数日後。
「おい総悟。オマエ近藤さんとなんかあったのか?」
ここの所何時もと雰囲気が違う二人に、不思議に思った土方が
沖田にそう問い掛ける。
「別に何でもないですぜィ、土方死ねコノヤロー。
アンタの気のせいでしょう、
本気でもう死んで来いコノヤロー」
「おいぃぃぃ!!
何、その不吉な語尾っ!!ちょ、近藤さん。
アンタからも何とか言えって・・・て、
何襖の陰からこっそり覗いてんのぉぉぉぉぉ!!!?」
「あ~もうウゼェ大人共だねぇ。
一回と言わず、二・三回ぐらい
腹ぁ掻っ捌いてくれねぇかなぁ。
特に土方中心に」
「なんで俺中心んん!!!?」
「・・・後、今回は特別に近藤さんも。
ってか腹じゃなくて、寧ろ
口ぃ縫い付けて来いよ、もう」
「ちょ、どんな特別ぅぅ!!?
悪かった、近藤さんが悪かったから。
だからいい加減口をきいてくれ、総悟ぉぉ!!!」
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難しいお年頃です。