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「元の場所に戻してきなさい」
とりあえずあのままで居る事も出来ないので、起きた銀さんと共に
居間へと移動し、僕なりの説明をしてみた。
・・・ら、この言葉だ。
「いや、犬猫拾ってきた訳じゃないですからね?
僕の話、ちゃんと聞いてました?」
「聞いてたよ?だから言ってんじゃねぇか。
夢の中で会ったガキをそのまま連れてきちゃったってオマ・・・
嘘吐くにももっと他にあるだろうが」
「どっちかって言うとコイツの方から新八について来たって感じネ。
流石銀ちゃん、ちっちゃくてもウザイ根性アル」
そう言って神楽ちゃんは僕の膝に座っている小さい銀さんのほっぺを
ツンツンと突っついた。
それがイヤだったのか、小さい銀さんはフルフルと頭を振って
逃れると、体を反転させてギューッと僕の胸元へとしがみ付き、
ホ~ッと力を抜いた。
「・・・やっぱりコレ、銀ちゃんネ」
懐きっぷりが同レベルヨ。と神楽ちゃんが呆れた声で言うと、
銀さんはガクリと肩を落とし、深々と溜息を零した。
「・・・ま、とりあえずあれだ。
オマエは朝飯の用意して来い」
そう言われ、ハッと時計を見れば確かに何時もの朝食の時間は
過ぎていて。
僕は慌てて膝の上の子供を降ろし、台所へと足を向けた。
当然のように降ろされた子供も僕について来ようとしたが、
それは銀さんに止められる。
うん、確かに火を使う場所だしね。子供は危ないかも。
渋る子供の頭を撫で、少し待っててね。と言うと
神楽ちゃんにも顔を洗ってくるようにと告げる。
さ、とりあえずは朝御飯の用意だ。
お客様用の茶碗を取り出しながら、僕は一先ず料理の事だけを
考える事にした。
「認めたくねぇがやっぱ俺だわ、コイツ」
テーブルに料理を並べ、皆が席に着いた後ポツリと銀さんが
呟いた。
どうやら僕が料理している間に何かを確認していたらしい。
「そうですか・・・でも一体どうして・・・」
やっぱり僕が何かしちゃったんだろうか・・・と悩んでいると、
ま、いいじゃねぇ?と呑気な声が返って来た。
「そう長く居ることもねぇだろ。俺の記憶にこんなのは
全然ねぇからよ」
「そうなんですか?」
銀さんの言葉に、ちらりと隣に座って勢い良くご飯を食べている
子供を見る。
だからって安心も出来ないけど・・・
あ~あ、ご飯粒そんなにつけちゃって。
「そうそう。だからあんま気にすんな、放っときゃいい・・・
って何してんだコラ」
「え?何ってご飯粒一杯ついてたから」
全く、しょうがないな~。なんて言いながら、顔についた
ご飯粒を取って食べていると、何故だか銀さんがフルフルと
震えだした。
そして次の瞬間、ものっそい勢いでご飯を食べ始める。
その顔には子供と同じ・・・いや、それ以上にご飯粒が
ついていて・・・
「もう、銀さんったら。仕方ないですね~」
はい、布巾。
とその顔に向けて思いっきり布巾を叩きつけた。
「愛がねぇ、全然見えねぇ」
朝御飯を食べ終えたと言うのに、銀さんはソファの上に寝転び、
膝を抱えて丸まっている。
所謂拗ねているポーズなんだろうけど、おっさんがやっても
可愛くないし、拗ねると言う事が既にウザイ。
「失礼ですね。雑巾じゃなくて布巾ってトコに
愛を感じてくださいよ」
「・・・微妙過ぎねぇ?その愛」
「あるだけマシでしょ」
ってか食べて直ぐ横にならないで下さい。チロリと視線を
向けてくる銀さんに一言告げると、僕は後片付けをするべく
食器を手に台所へと向った。
全く、幾ら過去の自分だと言っても、子供の前でダラダラし過ぎだ。
や、自分だからこそなおの事悪いのかな?
だって絶望しかないじゃん、アレ。
あ、でも反面教師となり得るかも・・・
等と考えながら食器を洗っていると、不意に足元に暖かいモノが
ポテッとくっ付いてきた。
見てみれば僕の足元に、白い毛玉がくっ付いていて。
「どうしたの?」
そう聞くと、毛玉はフルフルと横に動き、そのまま僕の足元に
腰を降ろしてしまった。
「そこ、寒いでしょ。向こうに行ってていいんだよ?」
「・・・別に。寒いのなんて慣れてるし」
そう言ってますます擦り寄ってくる温もりに、僕は一つ息を吐くと
腰を降ろして子供の銀さんと視線を合わせた。
「僕はやっぱり寒いかな。だからここに居るならさ」
クルリと背中を向け、負ぶさるようにお願いする。
「・・・や、なんで」
チラリと肩越しに見れば、無表情ながらも何処か不審げな色が
浮かんでいて。
・・・うん、僕も突然すぎるかなって思うけどね。
でもさ・・・
「いいからいいからっ!」
そう言って子供の銀さんの手を引き寄せると、そのまま腕を回して
無理矢理背負い、勢いをつけて立ち上がった。
後ろで うわっ!と声が上がり、小さな手が僕の首に、
そして小さな裸足の足が僕の腰へとしっかりしがみ付いてきた。
その冷たさに一瞬冷やりとするが、僕はお構い無しに背中にある体を
背負いなおし、片手を前に回すと、小さな手をポンポンと叩く。
「うん、やっぱりこうしてた方が暖かいや。
後少しで洗い物終わるから、それまでこうしててくれるかな?」
顔を向けてお願いすると、背中に居る子供はギュッとしがみ付く腕に
力を入れて、 仕方ねぇなぁ。 なんて言いながら
僕の肩口に顔を埋めてしまった。
それにクスリと笑い、じゃあ確りしがみ付いててね。と言って
上半身を少しだけ前に傾けると、両腕を離して洗い物を再開する。
見えるのは残り少なくなった洗い物と、腰に回ってる小さな裸足。
・・・やっぱ寒そうだよね、コレ。
大きいけど、僕の足袋履居て貰おうかな。
あ、そう言えば銀さんも何時も裸足だったっけ。
って事は、これって小さい頃からの癖かなんかかな。
それだったら無理強いは出来ないけど・・・でもなぁ。
なんて思ってたら、不意にその小さな足に、大きな手が被さってきた。
序に僕の・・・と言うか背負ってる銀さんの背中にも。
「お~い、何さっきから羨ましい事してんですかコノヤロー。」
「ぐぇっ」
「うわっ!ちょ、銀さん?何してんですか、アンタ!」
背中から聞こえてきた潰されるような声に慌てると、
子供の銀さんが置いているのとは反対の肩口から、銀さんの顔が
ヒョッコリ出てきた。
「いや、ちょっと微妙な愛を確かめに?」
「んなもんこの瞬間に砕け散ったわぁぁ!!
ちょ、大丈夫?銀さん」
「ん?大丈夫だよ?」
慌てて問い掛けると、何時もの銀さんが飄々と答えてきた。
「アンタじゃねぇぇぇ!!!!」
あぁもうややこしいな、コレっ!
とりあえず大声で神楽ちゃんを呼んで、銀さんを強制的に
排除して貰う。
そして幾分かぐったりしている体を背負いなおし、
くるりと顔を向ける。
「ごめんね。大丈夫だった?」
「・・・おっさん臭くて息、出来なかった」
苦笑してそう言えば、ムッスリとした声が返ってきて、
ちょっとだけ銀さんに同情した。
うん、流石に自分に言われたら傷付くよね、コレ。
とりあえずもう一度 ごめん と謝罪し、本人の前では
言わないようにお願いしといた。
・・・あ、まだ残ってたや、愛情。
***********
すみません、もう少し続きますι