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「ハンターとしての血が騒ぐネ!!」
「や、騒がなくていいから。
違うからね?『狩り』って言っても全然違うからね!?」
だから落ち着いて、神楽ちゃん!!必死に言い募る新八の背を見て、
お登勢はゆったりと苦笑を浮かべた。
事の始まりは新八がお登勢の所に回覧板を持っていった事からだった。
「わぁ、綺麗ですね」
新八はカウンターに置いてあった写真を目にして、そう言葉を上げた。
「だろ?お客の一人が紅葉狩りに行って来たらしくってね。
景色のお裾分けってヤツだよ」
もうこんな時期なんだねぇ。そう言ってお登勢は写真を手に取ると、
真っ赤に色を変えた木々の姿に、しみじみと呟いた。
「昔はよく私も行ったもんだけどねぇ、最近は中々・・・」
やっぱり一人だと行ってもねぇ。苦笑するお登勢に、
新八は ならっ!と目を輝かせたのだった。
「こう言うのはもっと静かに見るもんだと思うんだけどねぇ」
あの後、一緒に見に行こうと行ってくれた新八に、
ちょっと心が暖かくなって頷いたお登勢だったが、
少しだけ早まった気がしないでもない。
「んな世間的な常識が通じるとでも思ってたのかよ、ババァ」
坂田家の家訓は楽しむ時は全力で、だ。そう言って
大事そうに酒を抱えている銀時に、とりあえず軽い鉄拳を贈る。
銀時の言葉に少しは同意する面もあるが、
流石に他人様に迷惑をかけるのはダメだ。
そこら辺をちゃんと教育しておけ。と言いたい所だが、
隣にいるこの男にそれを望むのは・・・無理があるだろう。
その分・・・お登勢は 暴力ババァっ! と叫ぶ銀時の
頭をもう一度叩き、賑やかな前方へと視線を向けた。
見ればテンションの高い神楽をなんとか宥めつつ、
新八が近くの木々を指差して一生懸命説明をしている。
「全く、どっちが大人だか判らないねぇ」
「自分の都合を最優先させるのが
本来の大人ってもんよ」
「アンタは単なる面倒臭がりだろうが」
全く・・・と憤るお登勢の先で、
それでも理解出来ないのか、しきりに首を傾げる神楽に
新八も困ったように首を傾げている。
その姿がやけに可愛くて、お登勢はゆるりと口元を緩ませた。
先程はあぁ言ったが、別にお登勢も静かに見るよりも
ワイワイ言いながら見るほうが好きだ。
そうでなかったら、普通に一人で紅葉を見に来ているだろう。
偶にならいいかもしれないが、それは『偶に』が前提だ。
常に一人であったなら、それは『偶に』ではない。
そう考えると・・・本当に久し振りなのだ、
今日の紅葉狩りは。
「・・・ま、仕方ねぇんじゃね?
神楽は初めてだし、新八も久し振りだって言うからよ」
言っとくけどあれで結構浮かれてるからな、新八。
叩かれた頭を摩りつつ、銀時がボソリと呟いた。
「朝早くから弁当作るって昨日泊まってったんだけどよ。
神楽と二人でてるてる坊主作るわ、持ってくモノ
何度もチェックするわでよぉ。
オマエは遠足前の小学生かって感じだったからね?」
殆ど寝てねぇんじゃねぇの?呆れたようにそう続けた銀時だったが、
その口元はお登勢と同じようにゆるりと緩んでいて。
「・・・弁当、私が作るって言ったんだけどねぇ」
苦笑するお登勢に、銀時は軽く肩を竦めた。
「『こっちが誘ったんだから』だろ?
新八がやりたいって言ってんだから、甘えとけって」
「アンタ達は新八に甘えすぎだけどね」
そうは言ってみるが、新八も神楽も、それなりに
銀時に甘えている部分もあるのだろう。
気付けば耳にしていた、騒がしいけれど何処か暖かい
二階の生活音を思い出し、お登勢はクスリと笑った。
だって、そうでなければあんな音は生まれてこないだろう。
怒鳴りあって喧嘩して、笑い合って話し声が絶えない、そんな音は。
そしてそれは二階にだけに留まらず、時折お登勢の元にも
乱入してきて。
・・・騒がしいと怒鳴っちゃいるけどねぇ。
考えてみればそんな事を言うのも久し振りの事だ。
何しろ一人だと、そんな事を言う機会もないのだから。
・・・なら、きっと私の怒鳴り声も、同じ音だね。
苦笑しつつ、いつの間にか道端に座り込んで おぉっ! と声を上げている
神楽達を眺めていると、
突然二人が立ち上がり、お登勢達の下へと走ってきた。
「どうしたんだい?」
「なんだ?なんかいい物でも見つけたか?
言っとくけどあれだぞ、道端に落ちているエロ本は
小中学生の為のお宝だからな?
拾って青少年の些細な楽しみを奪うんじゃねぇぞ?」
「そんな銀ちゃんのしみったれた
過去の産物じゃないネ」
「ホラ、見てください」
そう言って新八の差し出した手には、綺麗な色へと姿を変えた
紅葉が数枚乗っていて。
「綺麗なの一杯落ちてたネ。
心広い神楽様が分け与えてやるから、有難く貰うヨロシ」
「神楽ちゃん、言葉悪いからね?
でも、はい。僕からもお裾分けです」
二人からそれぞれ、銀時とお登勢の手に綺麗な形のままの
紅葉が乗せられる。
ニコニコと笑う新八達に、お登勢の頬も緩んでいく。
「へ~、綺麗なもんだねぇ、やっぱり」
有難うよ。そう言うと新八と神楽はチラリと顔を見合わせ、
照れ臭そうに身を捩らせた。
「きっと上の方はもっと綺麗ですよ」
「ほら、早く行くネ!」
そう言うと神楽はお登勢の手を。
新八は銀時の後ろへとまわり、背中を押し始めた。
「ちょっと、少しは周りを楽しみながらねぇ」
「上から一気に見た方が爽快ネ!
只でさえ残り少ない時間なんだから、
もっと有効に使うアルヨ」
「おいぃぃ!!
だったらその残り少ない時間をもっと丁寧に扱いなぁ!!」
「あ~、いいわ、コレ。超楽だわ。
なんかもう自分で進んでないような気がしてきた」
「実際進んでねぇよっ!
ちょ、本気で体重掛けないで下さいよっ!」
静かな山の中、普段と変わらない騒がしい声が
楽しげに弾んでいた。
その後、どうにか上の方にある広場へと辿り着き、
新八の弁当を食べ終わったお登勢達だったが、
食休みをする事なく、まず神楽がその場を飛び出していった。
それを見て、新八も慌てて追い掛ける。
・・・が、どうやら腹が満たされた神楽の暴走を
止めるには厳しいものがあるらしく。
木に張り付いて揺らそうとしている神楽の笑い声に、
新八の悲鳴が被る。
「あ~、もう何やってんだ、あいつ等」
銀時も流石に見てられなくなったようで、ちょっと行ってくら。と
酒を置くと、二人の下へと歩いていった。
そして木から神楽を剥がすと、ペシリと頭を叩くのが見える。
その後、銀時が何か言っていたが、直ぐに神楽が何か言い返し、
今度はその場にしゃがみ込んでしまう。
次に新八もそれに倣ってしゃがみ、銀時もダルそうではあったが
同じように腰を降ろしてしまった。
「・・・何やってんだぃ?あいつ等は」
もさもさと動く三人を暫しの間眺めていると、その内に
神楽が一人だけお登勢の下へと帰って来た。
そして・・・
「はい、さっきの進化系ネ」
そう言って今度は銀杏の葉を綺麗に何十にも重ね、
まるで花のようになったものをお登勢へと差し出してきた。
「へ~、器用なもんじゃないか」
「私が作ったんだから当たり前ヨ。
キャサリン達の分も作ってくるから、もう少し待ってるアル」
にしし。と笑うと、再び神楽は銀時達の下へと駆けていった。
それを視線で追っていくと、辿り着いた神楽が報告したのだろう。
やんわりと神楽の頭を撫でた新八が、お登勢の方を向いて
軽く手を振った。
それに対し、お登勢も軽く手を上げる。
どうやらまだ少しかかるようだ。
そう判断すると、再び腰を降ろしてワサワサと動き出した三人を眺めながら、
お登勢は懐から煙草を取り出した。
「ほぉ、可愛らしい花ですな」
突然後ろから声を掛けられ、ふと視線を向ければ
そこには散歩中らしい一人の老人が立っていた。
「えぇ、上手いこと考えたもんですよ」
騒がしくてすみませんねぇ。そう言ってお登勢が軽く頭を下げると、
いやいやとんでもない。と楽しげに手を振られる。
「賑やかなのが一番ですよ。」
ご家族ですか?そう聞かれ、お登勢は一瞬目を瞬かせたが、直ぐに
やんわりと笑みを浮かべたのであった。
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六万打企画第三弾。蒼さんからのリクで
「二世帯揃ってピクニック(第三者から家族認定)」
との事でしたが・・・如何なもんでしょう?
とりあえずお登勢さんの最後の笑みは、
「いい嫁だろ?孫も元気で可愛いだろう?」
との自慢の笑みなんだと思われます(あれ?一人忘れて・・・)
こんな感じになりましたが、少しでも楽しんで頂けたら
嬉しい限りですっ!
企画参加、毎度有難うございました~vv