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捕まえて、縛り付けて、握り締めて。
そして・・・
「機嫌良いね~、新八君」
「そうですか~?」
なんて言いながらも、隣を歩いている新八は
ニコニコと満面の笑顔だ。
どうやら、タイミング良く始まったタイムサービスが、
相当我が家の財布に貢献してくれたらしい。
大きく膨らんだビニール袋を、嬉しそうに揺らしながら
歩いている姿を横目でチラリと見て、俺はやんわりと口元を緩める。
すると、それを見たのか、新八がクスリと笑った。
「そう言う銀さんだって機嫌良いじゃないですか。
あ、でもダメですよ?お団子は一日二本までです」
どうやら新八は先程買った団子のせいで俺の機嫌が良いと
思ったようだ。
それに対し、思わず苦笑が浮かぶ。
や、それも否定はしないけどよ?
でも、それ以上にさ。今、オマエが隣に居て
二人仲良く買い物ってのが機嫌良いんですけど?
・・・あぁ、これで手なんか繋げたらもっと幸せなんだけどなぁ。
丁度お互い片手ずつ空いてるし?
少しだけ手を伸ばせば届く距離だし?
新八の機嫌も良いし?
・・・まぁ人目はそれなりにあるけど。
新八、恥ずかしがりやだからなぁ。
もしかすっと怒るかもしんねぇけど、
でも、その顔も可愛くて好きなんだよなぁ。
何だかんだできっと許してくれるし。
って事でちょっとだけ・・・と手を伸ばそうとした所で、
不意に新八の視線が外れ、小さな声が上がった。
どうしたのか見てみれば、その視線の先には見慣れた黒い服の
連中が・・・
「あれ、土方さん達ですよね?
お仕事中なのかな?」
そう言う新八は今にも挨拶をしに行きそうで、
俺は慌てて手を伸ばした。
「え、銀さん?」
急に手を捕まれてキョトンとする新八をグイッと引っ張り、
ヤツラが居る方向とは反対の方へと足を踏み出した。
「ちょ、どうしたんですか?」
「お仕事中ってんなら邪魔しちゃダメでしょ~。
ってかあんなのに自ら近付くな、瞳孔開くぞ」
「や、開かねぇし。
ってか本当、銀さんと土方さんって仲悪いですね~」
俺の行動に最初は戸惑っていたものの、直ぐに新八は呆れたように
呟いてそのまま大人しく俺の後を付いてきた。
・・・ま、手を繋いでるから仕方ねぇんだろうけどよ。
だが、念願である手を繋いだと言っても、俺の機嫌は
さっきよりも悪い。
あぁ、本当。礼儀正しいにも程がある。
あんなヤツラに挨拶なんてどうでもいいだろ。
オマエは俺の傍に居ればいいんだよ。
俺の隣にずっと居ればいい。
なのに、なんだってそう気軽に離れて行こうとするんだ。
俺はこんなにも、片時だって離れたくないのに。
「あぁもう!恥ずかしかった~っ!!」
結局少し遠回りして帰って来る間中、俺は新八の手を
握ったまんまだった。
案の定、新八は恥ずかしいと怒っていたけど、知るもんか。
俺はそれ以上不機嫌だったし、不安なんだ。
玄関に入り、漸く手を離した俺に、新八はプラプラと
少し赤くなった手を振った。
それを見て、ほんの少しだけ心が騒ぐ。
「手・・・」
「え?」
「痕、ついちまったな」
買ってきたモノを持って台所へと進む新八の後を追って
俺も台所へと進む。
そして荷物を冷蔵庫に入れようとしている新八の手を取って、
そっと赤みのさしている小さな手を撫でた。
小さな、俺のよりも小さな新八の手。
そこについている、俺の手があったと言う証。
「どっかの馬鹿力さんのせいですね」
苦笑する新八の肩に、俺はコツンと頭を預けた。
うん、だって必死なんだよ、銀さんも。
こんな小さいのに、どんなに必死に掴んでも
スルッとどっかに行っちまいそうなんだもん。
その必死さ加減に自分で呆れ。
小さな手に付いた痕に罪悪感が沸き。
そして・・・少しだけ満たされる、俺の心。
「えっと・・・どうかしました?銀さん」
黙っている俺を不思議に思ったのか、新八がどうにかして
俺の顔を見ようとしてくるので、ますます肩口へと顔を埋める。
あぁ、どうしよう。
呆れも罪悪感も吹き飛んでしまった。
可愛い、かわいい、俺の新八。
ね?俺の事心配してくれてんの?
酷い独占欲でお前に痛い思いさせて、恥ずかしい思いまでさせて、
痕までつけちゃったのに、心配してくれてんの?
緩む口元を隠したまま、俺は新八の手を離して
そのままギュッと閉じ込めるように目の前の体を抱き締めた。
「ん~・・・ちょっと甘えてるだけぇ」
軽口でそう言い、抱き締める腕に力を篭める。
それに新八は 何ですか、それ。 なんて呆れた声を返すが、
やんわりと俺の背中に手を回してくれて。
馬鹿だね、オマエ。
でも可愛いね、本当。
いつか手だけでなく、オマエの体全部に俺の痕が付くかもしれねぇよ?
だって俺、オマエがもし俺から離れようとしたら。
それこそ手だけじゃねぇ。
全身を使って、全力でもって、必ず引き止めるから。
泣こうが喚こうが、何しようがしがみ付いて離れてやらねぇ。
それこそ、その細い首を握り締めてでも。
例えオマエの命を、握り潰してでも。
絶対に、離してなんかやらねぇ。
あぁ、でも今は・・・
俺はそっと親指で新八の首筋をなぞり、
その反対側に小さく唇を落とした。
手の痕の代わりに、別の痕をつけようか。
それこそ、暫くの間人前に出るのが恥ずかしいぐらいの。
俺の雰囲気に良くないものを感じたのか、漸く慌てだした
新八を、俺はますます強い力で抱き込んだ。
捕まえて、縛り付けて、そして握り締めて。
あぁだからお願い。
どうか『潰す』前に離れるのを諦めて。
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六万打企画第四弾。姫りんご様からのリクで、
『ちょい病み銀新』との事でしたが・・・如何でしょうか?
とりあえず、「坂田、お前・・・(ホロリ)」と
哀れみの涙を流す事は出来るかと・・・(ちょ、意味違っ!)
こんな感じになってしまいましたが、少しでも
気に入って頂けたら嬉しい限りですv
企画参加、有難うございましたvv