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「すみませ~ん」
「はいはいっと。おや、今日は神楽ちゃんも一緒かい?」
店先から声を掛けられ、八百屋の親父は少しだけ驚いた顔をした。
何時もなら新八一人で買い物に来るのだが、今日は珍しく
神楽も一緒だったからだ。
「さては何か強請ろうって魂胆か」
笑って言えば、神楽はムッと口を尖らした。
「何言ってるアルカ。私がそんなセコイ真似する筈ないヨ。
単なる気紛れネ」
酢昆布は買って貰うけどナ。フフンと何故か偉そうに言う神楽に、
同じじゃねぇか。と笑いが零れる。
「で?今日は何にするんだい?」
親父の言葉に、新八は少しだけコテリと首を傾げて
顎に手を置く。
「そうですね~、ジャガイモはまだあったから・・・
とりあえずタマネギと人参を・・・」
「今日は野菜ゴロゴロカレーネ!」
欲しいものを告げる新八の隣で、神楽が嬉しそうに声を上げた。
それに親父の頬も緩む。
「おぉ、いいね~。おじさんもご相伴に預かりてぇや」
「坂田家限定カレーだからそれは無理ネ。
でも匂いだけならわけてやるヨ」
ひょいひょいと言われた品を袋に入れていく親父に、
神楽が仕方ないとばかりに首を振りながら答えた。
それに新八が慌てたように声を掛ける。
「神楽ちゃんっ!も~なんて言い方すんのさ。
本当、すみません」
申し訳なさそうに頭を下げる新八に、親父は軽く手を振って
答える。
「いいっていいって。
あぁ、でも新ちゃんのカレーなら匂いだけでもいいから
分けて貰おうかね~」
「・・・やっぱ匂いもダメネ」
「神楽ちゃんっ!!」
ムスッとした顔で呟く神楽に、新八の顔は赤く染まり、
親父は声を上げて笑った。
「あははは、それもダメかい。
いや~、よっぽど新ちゃんのご飯は美味しいんだね~」
「そ、そんな事ないですよっ!
きっとおじさんのトコの野菜が美味しいからですって」
「お、嬉しいこと言ってくれるね~。
よし、これはオマケだ。持ってってくんな」
「え?いいんですか!?」
「おうよ。どうせ傷物だからな。
あ、でも味は保証するぜ?」
そう言ってキュウリや白菜をオマケにつけて渡すと、
新八は少し慌てたが、直ぐに嬉しそうに頬を緩ませて
有難く頂戴する事にした。
「お~い、回覧板だよ・・・っと、新ちゃんじゃないか。」
お使いかい?と、ヒョコリと一人の男が店先に顔を出してきた。
「あ、お肉屋の・・・」
こんにちは。と挨拶をする新八に、肉屋の店主は笑って手を上げる。
「今日はウチに用はないのかい?」
「あはは、当分なさそうです」
店主の言葉に新八が乾いた笑いを上げ、店主二人は
小さな溜息を吐いた。
「なんだ、またダラダラしてるのかい、銀さんは」
仕方ねぇなぁ。と苦笑しながら店主は八百屋の親父に回覧板を渡した。
「序にゴロゴロもしてるネ」
「ダメだね~、それじゃあ。
偶にはガツンと言ってやんな」
それとも俺らが言ってやろうか。等と言う親父達に、
新八はにっこりと笑みを浮かべて答える。
「それは大丈夫です。
偶にはじゃなくて常に言ってますから」
「ちゃんと拳にモノも言わせてるネ
その後ちょっと使い物にならないけどナ」
でも私の気は晴れるヨ。と笑って
拳を握り締める神楽に、店主達は少しだけ銀時に同情を寄せる。
が、自業自得だと思いねサラッと流す事にした。
「あ、そうだ。ちょっと待ってな」
何かを思い出したのか、店主はさっと身を翻して店から出て行く。
そして直ぐに戻ってくると、手に持っていた小さな紙袋を
新八と神楽に渡した。
「確り者の二人にご褒美だ。
揚げたてだから旨いぞ?」
そう言われてみれば、中身はホクホクと湯気を出している
美味しそうなコロッケで。
「うわ~、有難うございます」
「さすが肉屋ネ。伊達に売るほど肉を身につけてないヨ」
「・・・いや、おじさんの肉は売れないからね?
自然とついただけだから、この肉」
神楽の言葉に若干肩を落としながら、自分のお腹に手を
当てて摩っていると、不意に後ろからその肉を掴む手が伸びてきた。
「いんや、この肉は自然とついたもんじゃねぇ。
肉食って付いてる肉だ。金の掛かってる肉だ。
通風になっちまえコンチキショー」
「いででででっ!!ちょ、え?銀さん!!?」
ギリギリと捻られて身を捩りながらもその手の先を
見てみれば、ソコには銀時の姿が。
「なんだい、銀さんも来てたのかい」
「おぉ、ガキ共に強制連行されてよ」
ケッと舌打ちを打ちながら手を離し、銀時は緩々と首を回す。
「ったく、折角の休みだってのによぉ」
「や、銀さんの場合『折角』じゃないだろ。
新ちゃん言ってたぞ、当分ウチに用はなさそうだって」
捻られた腹を摩りながら店主が言うと、銀時は うっせぇ。 と
その腹を叩いた。
「いいんだよ、そんな腹になろうと思ってねぇんだからよ。」
「でもゴロゴロしてばっかりはダメだよ。
新ちゃん達が居るんだから、もっと確りしないと」
いい大人なんだから。眉を顰め、説教交じりな事を言い出す親父に、
銀時は あ~っ!と声を上げながら頭を盛大に掻いた。
「判ってるってっ!ちょ、もう止めてくなんい?
さっきも魚屋で散々言われて来たんだからよぉ」
ったく、漸く逃げてきたってぇのに。ブツブツと文句を言う銀時に、
新八が あっ と視線を上げた。
「銀さん、ちゃんと買ってきてくれました?」
「おうよ。序にオマケもして貰ったぜ」
「・・・先につまみ食いしてないアルカ?」
「幾ら銀さんでも生魚は食べねぇよ」
じっとりと視線を向けてくる神楽にチョップを送り、
銀時は もう行くぞ。 とくるりと背を向けた。
それに神楽も続き、新八も 有難うございました。と親父達に
頭を下げて店から出て行く。
「お、何だよオマエ等。銀さんにはつまみ食い云々言っといて
自分らはいいモン持ってんじゃねぇか」
「ふふん、日頃の行いがモノを言うネ」
「ならそれは丸々銀さんのもんだろ。
オラ、寄越せ」
「夢見るのもいい加減にしろヨ。
新八~、銀ちゃんが私の取ろうとするネ~」
「何大人気ない事してんですか、アンタはっ!
ほら、僕の半分あげますから神楽ちゃんのからは
手を離して下さい」
「え、何、新ちゃん。
もしかして銀さんと間接ちゅーしたいの?」
「・・・・・・・」
「あぁっ!ちょっ、少し調子に乗りましたっ!
どっちかって言うと銀さんの希望と妄想でしたぁ!
だからサクサク食べないで少し分けて下さぁぁいっ!!」
「相変わらずだね~、あの三人は」
「本当、仲が良いって言うか何て言うか・・・」
遠くなっていく喧騒を見送っていた親父達の顔に、苦笑が浮かぶ。
新八が一人で買い物に来て。
神楽が遊びに行くのに店先を走って行き。
時折、まだ日が昇り始めた頃に銀時が千鳥足で歩いていく。
それぞれが見慣れた光景だが、一番最初に頭に浮かぶのは、
やはり三人一緒に並んでいる光景だ。
「あ~・・・ウチも今日はカレーにしてもらうかなぁ」
「なんでぃ、急に」
「新ちゃんトコ、今日は野菜ゴロゴロカレーだってよ。
しかも匂いすらお裾分けしたくないぐらい美味しいらしいぞ」
「そりゃあ凄いや」
まぁ、あの三人なら何だって美味しく、楽しく食べそうだが。
多分、先程自分が渡したコロッケも、分け合って物凄く美味しそうに
食べていてくれる事だろう。
店主はユルリと口元を緩ますと、ウチもカレーにして貰うか。と
呟きながら、八百屋を後にした。
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六万打企画第五弾。箸様からのリクで
『ご近所さんから見た坂田一家』と言う事でしたが
如何だったでしょうか?
絶対可愛がられてますよね~、特に母娘は(笑)
多分商店街のアイドルですよvv
なので坂田は商店街に顔を出す度に
説教を食らってると思いますvv
こんな感じになりましたが、少しでも
楽しんで頂けたら嬉しい限りです。
企画参加、有難うございましたvv