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「「・・・え、何それ」」
パチンコから帰って来た銀時。
遊びから帰って来た神楽。
丁度同じタイミングで帰って来た二人は、家の中に入るなり
やはり同じタイミングで声を揃えた。
その日、珍しく銀時はパチンコに勝って帰って来た。
逃げるように出てきたので、帰宅するのが恐ろしかったのだが
こうなれば話は違う。
銀時はほっと一安心しつつ、自分の甘味は少しだけで我慢し、殆どを
調味料と現金に換えてきたのであった。
理由はただ一つ。
家で待ち構えているだろう、可愛いけれど鬼神と化しているだろう
少年への貢物だ。
これなら説教は少なくてすむかも・・・いや、
もしかしたら褒めてくれるかもしれない。
いやいや、もしかしたら・・・
「・・・フラグ成立?やべ、これってフラグじゃね?
『今夜OKよ』フラグたってね?
だってアレじゃん?銀さん頑張っちゃったじゃん?
見てよ、この戦利品っ!
いや、それまで思いっきり貢いでたけどね!?
パチンコ屋に貯金しまくりだったけどね!?
でも勝ったじゃん、ついてるじゃん、俺。
こんだけあったら新ちゃんご機嫌じゃね?
軽く今夜泊まってくレベルじゃね!?
やべ、男の嗜み買っとくべきかな?ねぇ、おじさんっ!」
独り言を言いながら歩いていた銀時は、そのままのテンションで
ただすれ違った見知らぬ男性に問い掛けた。
「え?あ、いや別に買わなくても普通は財布に入れて・・・」
「ねぇよっ!なんなんだよ、何時も入れてんのかよ、
この変態オヤジがぁぁ!!!!」
律儀にも答えが返ってきたのだが、銀時は怒鳴り返すと
そのまま再び家路を目指した。
・・・やっぱり嗜みは常時常備しとかなければ駄目か・・・なんて
不届きな事を考えながら。
同じ頃、神楽も軽い足取りで家路を急いでいた。
ニコニコと笑っている笑顔の先には、小さな花を握っている
自分の手がある。
それは先程まで遊んでいた川原で見つけたものだ。
花屋などで売っている花の様に立派ではないが、
でも神楽は気に入ったし、新八も気に入るだろうと思ったのだ。
本当ならば摘んだりせず、その場まで新八を連れて行くのだが、
生憎、今日はそうもいかない事情があった。
それは神楽が遊びに行く前、新八から少しは掃除をしなさい。と
注意されていたのだ。
実際、その時の居間は神楽の食べた巣昆布の空き箱やらが
散乱していて、そう言われるのも無理はなかった。
けれど神楽的には別に気にならない程度だったし、
何よりジャン○タワーを乱立させていた銀時は
既に逃亡済みだった訳で。
大人以上に遊びに本気を出さなければいけない子供としては、
それに遅れる訳にはいかないっ!・・・と、新八の声を無視して
飛び出したのだった。
「・・・別にご機嫌取りじゃないけど・・・」
しかし、何時ものように遊んでいても、やはり何処かすっきりはしなくて。
けれど直ぐに帰るのもなんだか体裁が悪い気がして。
そんな時に見つけたこの花は、丁度良い理由に感じられ、
神楽は一生懸命摘んで、家路にと着いたのであった。
もしかしたら、綺麗な花を見つけてきた自分を怒らず、
褒めてくれるかもしれない。
そしたら、仕方ないからこの花を飾れるように
部屋の片づけをしてやってもいい気がする。
そしたら・・・もしかしたら・・・
「もっと褒めて、甘えさせてくれるかもしれないネ」
神楽は嬉しそうに笑うと、動かしている足のスピードを上げた。
でもまぁ最初は膝枕かな。
天気もいいし、昼寝には最高だ。
そんな事を考えながら着いた万事屋で、神楽は銀時は顔を合わせた。
「あれ?どうしたよ、神楽。まだ明るいじゃねぇか。
ガキは日が沈みきるまで全力で遊んでこいよ。
ってか寧ろ次の太陽が昇りきるまで
帰ってくんじゃねぇ」
「うら若き乙女にどういう遊びを推奨してくるアルカ。
そんな遊びは爛れたおっさん、略して銀ちゃんの方が
しっくりくるネ。
それで夜の蝶に身包み剥がされてこいヨ」
「ちょっ!お前こそどんな遊び推奨してんだぁぁ!!
ってか何処をどうすりゃそんな略し方になんだよっ!
それに、言っとくけど銀さん、そんな遊びしないから。
案外家庭的だからね?銀さん。
ギャンブルで身包み剥がされても、それはないから」
「どっちにしろ崩壊寸前な家庭ネ、
それ」
自信満々にそう宣言する銀時に、神楽は呆れた視線を返す。
そしてそのまますっと視線を銀時が持っている紙袋へと落とした。
「・・・天変地異アルカ?」
「どう言う意味だ、コラ。
ってかオマエも珍しいもん持ってんじゃねぇか。
どうしたよ、それ」
驚きに目を見開く神楽の頭をペシリと叩き、銀時が告げる。
それに神楽はさっと持っていた花を背に隠し、別に。と
視線を逸らした。
「・・・ってか銀ちゃんこそ珍しいネ。
それ、お菓子全然入ってないヨ」
どうしたネ。と聞いてくる神楽に、今度は銀時が
別に? と視線を逸らした。
互いの態度に、それぞれが怪しい気配を感じ取る。
これはもしかして・・・
そう思い、チラリと視線を相手に向ければ、やはり相手も
こちらを伺うように視線を向けていて。
次の瞬間、銀時と神楽は素早い動作で玄関へと手をかけ、
競う様に中へと入っていった。
「ちょっ!銀ちゃん邪魔ネ!!
どく・・・って言うか消え失せるヨロシ!!」
「うるせぇぇ!!オマエこそ邪魔だ、弾けろっ!
弾けてパーンてなっちまえっ!!
俺は大事な用があんだよ、マジでっ!」
「私こそ大事な用がアルネ!
新八の膝枕でお昼寝すると言う用がっ!」
「え、何その幸せすぎる用!?
よし判った。その用は銀さんに任せとけ。
っつうか任せてください、お願いします。」
「全身全力で遠慮してやるヨ。
も、いいからど~け~やぁぁぁ!!!」
バタバタガタガタ、ドガァボグゥ!と言う鈍い音交じりの
騒音を交えながら、銀時と神楽が狭い廊下を抜け、居間へと向かう。
そしてそこに目的の人物がいないと判ると、そのままの勢いで
和室の襖を開け放ったのであった。
「うわっ、びっくりした~。
どうしたんですか?そんな急いで」
和室の中へと向けた二人の視線の先。
そこに目的の人物は居て、驚いた顔でこちらを見ていた。
新八の問い掛けに答えるよりも早く、我先にと
中へと入ろうとした二人だったが、ぴたりとその足は止まってしまう。
そして出てきた言葉が 『何ソレ』 だ。
多分、その言葉を今一番言いたいのは新八の方であろう。
新八は訝しげに首を傾げる。が、直ぐに二人の視線の先に
あるものが判り、 あぁ。 と頬を緩めた。
「可愛いでしょ?時々遊びに来てくれるんですよ、この子」
ね~。そう言って微かに身を屈め、自分の膝に行儀良く
収まっている猫へと声を掛ける。
しかも満面の笑顔+やんわりと頭を撫でると言うオプション付だ。
その後、猫も交えた『新八争奪戦』が開始されたのは言うまでもない。
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八万打企画第五弾。箸様からのリクで、
「醜い新八争奪戦」と言う事でしたが、如何だったでしょうか?
多分最終的勝者は、猫と娘に落ち着くと思います(笑)
少人数な争奪戦になりましたが、少しでも
気に入って頂けたら嬉しいですv
企画参加、本当に有難うございましたvv