[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「なんで俺がこんな事を・・・」
「ま、まぁ仕方ないじゃないですか。ほら、後少しですよ?」
グダグダと文句を言う銀時に、新八は苦笑を浮かべながら
フォローらしきものを入れ、銀時の背中をチラリと見た。
そこには、少し前まで元気溌剌に求愛行動を示していた
ゴリラの哀れな姿が・・・
「ってかなんで俺が運ばなきゃいけないんだってぇの。
言っとくけど死体遺棄は万事屋の仕事に
含まれてねぇぞ!?」
「いや、まだ死んでませんから。
真選組に届けるだけですからね?」
「あ~、もう銀さん疲れたっ!
いいじゃん、もう。これ、そこら辺に捨てとこうぜ?
きっと親切な人が動物愛護協会に連絡して
保護して貰えるってっ!」
「ダメですよ!その前に僕等が通報されますっ!
かと言って、これ以上この人をアソコに置いてたら、
確実に姉上が犯罪者になっちゃうし・・・」
そう言い、先程目の前で見てしまった実の姉による、ホラー映画のような
ワンシーンを思い出し、新八はブルリと体を震わせた。
「・・・や、既に犯罪者だからね、この惨状」
銀時は一つ息を吐くと、背負いたくも無い荷物をとりあえず降ろし、
引きずることに決めた。
「あ?おい、テメーラ。そこで何してやがる」
漸くついた真選組屯所。とりあえず門番に近藤を投げ渡し、帰ろうと
した所で、中から聞き慣れた声に呼び止められた。
振り返れば嫌な顔をしている土方の姿が。
銀時は小さく舌打ちをし、顎で先程投げた近藤を示す。
「善良な一市民として落し物を届けに来ただけですぅ。
ったく、一割はいらねぇし、感謝の言葉は
気持ち悪ぃからとりあえず金よこせや、コラ」
「あぁ!?どうせ原因はそっちだろうが!
傷害でしょっ引くぞ、ゴラァァ!!!」
「土方さん。その前にしょっ引く人、居ますよね?」
顔を突き合わせて怒鳴りあっていたが、新八ににっこりと微笑みながら
割って入られ、土方がチッと舌打ちをしたその瞬間、
「どわぁっ!!!!!」
パララララと言う音と飛び上がる土方の姿が見え、
新八は目を丸くしてしまった。
一体何が・・・と思う間もなく、直ぐに銀時の背中に視界を覆われ、
何も見えなくなる。
「おいおい沖田くん。そう言うの止めてくんない?
新ちゃんに当たったらどうすんのよ」
「え?沖田さん?」
銀時の言葉に、背伸びして肩口から覗き込めば
そこには飄々とした沖田の姿が。
「安心して下せェ、そんなヘマはしやせんぜ?
・・・まぁ土方さんを外すヘマはしやしたが」
「よ~し、俺は外さねぇからソコに首晒せ、総悟」
チャキッと音を立てて刀を構える土方に、ヤレヤレと首を振る沖田。
「何青筋立ててんですかィ、大人気ない人だねェ。
たかが豆まきぐらいで」
「殺される寸前に大人気も何もねぇよっ!
ってか豆まきじゃねぇだろうが、どう見てもっ!!!」
そう言って土方の指差す先には、鈍く光るイングラムが・・・
「どう見ても豆まきじゃねぇですかィ。
まぁ手で・・・じゃなくて玩具から弾き出されてますけどねィ」
「へ~、それ、豆鉄砲みたいなもんなんですか」
ニヤリと笑ってイングラムを掲げる沖田に、新八が物珍しそうに
銀時の背中から出て近寄っていく。
「ちょ、新ちゃん!?危ないから戻ってきなさいってっ!!」
そんな新八を呼び戻そうと銀時が手を伸ばすが、時既に遅し。
再びパラララララという軽快な音が土方と銀時の足元で鳴り、
序に土煙も上がる。
「だぁぁぁああぁっ!!!
あっぷねぇじゃねぇか総悟コノヤロー!」
「ちっ!避けるんじゃねぇよこのクソ鬼共。
潔く豆に当たって払われろってんでィ」
「当たったら払われるどころか
魂が弾け飛ぶわぁぁ!!!」
なんとか当たらずにすんだ銀時達が叫ぶ中、新八がキョトンとした
顔で沖田を見る。
「真選組では土方さんが鬼役なんですか?」
「あぁ、当然でさァ。じゃなきゃ何の為に
『鬼の副長』なんて二つ名持ってるって言うんでさァ」
「何の為かは知らねぇが節分の為じゃねぇ事だけは
確実だろうが、おい。
ってかテメーもいい加減突っ込めぇぇぇ!!!!
また職務放棄かコノヤロー!!」
「っつうか俺関係ねぇだろ。鬼じゃないからね?銀さん。
お兄さん的年齢だけど、鬼じゃないからっ!
ってかそれ、明らかに豆じゃねぇだろ、弾き出されてるのぉぉ!!!」
「その発言だけで十分鬼役の理由にはなりまさァ。
ちなみにコレは、心の目で見て下せェ。
そうすれば弾も豆に見えるってもんでさァ。」
「見たくねぇよ!ってか見えねぇよ速過ぎてっ!!
ちょ、新ちゃん、助けてっ!!!」
そう言って銀時が沖田の隣に居る新八へと手を伸ばすが、
沖田が再びイングラムを構えた為、ピタリと固まってしまう。
勿論、銀時の傍に居る土方も同じで、固まったままヒクリと口元を
震わせ、青褪めていった。
それを見て、沖田はニタリと口元を緩める。
「見てなせェ、新八。今からあの青鬼共を
赤鬼へと変化させてやりまさァ」
全身隈なく、真っ赤になァ。楽しそうにそう告げる沖田に、
土方と銀時はコクリと一つ息を飲むと、脱兎の如くその場から
逃げ出した。
「甘いですぜィ。オラ、鬼は~外、福は~内。
二人は~散れやコノヤロー。」
それを楽しげに追いかけながら、自称豆を撒く沖田。
「真選組の豆まきって凄いな~」
怒声と雄叫び、それと楽しげな笑い声を聞きながら、ポツリと新八が
呟いていた。
「ったく、酷ぇ目に合ったぜコンチキショー。」
しかも新八には見捨てられるし。そう言って隣を歩いている新八を
じとりと睨めば、サラリと視線を逸らされた。
そう、なんとか命辛々逃げ延びた銀時が目にしたのは、
何故か屯所内で楽しげに隊士達と和やかな豆まきをしている
新八の姿で。
「だって仕方ないじゃないですか。
僕、銀さん達の豆まきには付いていけなかったんですもん。」
「や、あれは豆まきじゃないからね。
純粋なる虐殺行為だから、本当」
そう銀時が言い返すが、新八は納得いかない顔で少しだけ
唇を尖らした。
「で、折角生還した近藤さんが誘ってくれたって言うのに・・・
銀さん、帰って来たと思ったら、鬼やってた近藤さんに
豆じゃなくて石ぶつけるんですもん。」
そんなもの、人に向けて投げちゃダメでしょ。新八がそう怒るが
こっちだって相当ムカついたのだ。・・・と、銀時は眉を顰めた。
「銀さんは石どころか銃弾向けられたんですけどぉ!?
ってか坂田家の鬼役は銀さんなの!
あれは単なるゴリラ!!判った!?」
「あ~、はいはい判りました。
じゃあ帰ったら銀さんが鬼、やって下さいね」
「おぅ!任せとけ。新ちゃんの豆も糖も愛も全部
受け止めてやらぁ!」
「や、受け止めちゃダメでしょ。
ってか豆以外投げませんからね!?」
何、糖とか愛って!?そう言いながらも少し楽しそうな新八に、
銀時もゆるりと口元を上げた。
しかし。
この後、神楽によってイングラムに相当する豆まきを
再び体験する事となるのだが・・・
坂田家の鬼は、まだ知る由もなかった。
**********************************
少し遅れましたが節分話。
ちなみにウチでは何故か豆投げ合戦と化します。
お陰で常に豆は粉砕。
最終的に掃除機かける羽目になります。
・・・・何故だ?