[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
夕食も食べ終わった万事屋の一室。
そんな中、新八一人が真剣にテレビの画面を見詰めていた。
どうやら音楽番組であるらしく、新八が親衛隊を勤めている
お通が出ているらしい。
その姿は真剣を通り越して、何か鬼気迫るものを感じる。
その為か、普段なら騒がしいさの原因でもある銀時と神楽
はお喋りもせず、それぞれが静かに好きな事をやっていた。
が、そのお通の歌が始まった途端、神楽がふと顔を上げ、
先程から新八が見入っている画面へと視線を向ける。
そして、歌に耳を傾け、暫くしてコテンと首を傾げた。
その行動を見ていた銀時も不思議そうに首を捻る。
何か気になる事でもあったのか。
ま、大体にして彼女の歌は不思議なトコだらけだ。
と言うか、子供に聞かれたら親が答えにくい歌詞ばかりだ。
以前新八が掃除をしながらそれを口ずさんでいた為、
ちょっと泣きそうになった。
で、思わず説教したら、お通ちゃんの歌のドコが悪いっ!!!
と逆切れされた。
別に彼女の歌が悪いとは言ってない。
ただ歌詞が問題だ。
おまけにそれが新八の可愛い口から出されると、銀さんの心臓に
かなり悪いんだっつーの。
恋する男のピュアハートを判ってくれ、ぱっつぁん。
そう訴えたら、凄く不思議そうな顔をした。
・・・あれだ。多分ヤツも意味を判ってない。
なので、今でも新八は時折お通の歌を口ずさむ。
・・・いいさ、臆病者と罵れよ。罵ればいいさ!
でもな~、あの目でそれらの歌詞の意味を聞かれてみ?
どんな羞恥プレイよ、ソレ!!
無理無理無理、銀さん、そこんトコはマジで中二ハートだから!!
つらつらと銀時が過去の出来事を思い出している内に、番組は終わったらしく
神楽が新八の袖をチョイチョイと引っ張る。
「ね~、新八ぃ~」
それに気付いた新八が、上気した頬をそのままに、神楽の方へと
視線を向けた。
「なに?神楽ちゃん」
「今のお通の歌、新八が歌ってたのと歌詞が同じだったアル」
なんで?と首を傾げる神楽に、新八は あぁ と頷き、
「今度のはライブで前から歌ってたのだからね、僕もう覚えてるんだ」
「でも本当に歌詞だけだったヨ。これってアレか?発売する時に
曲調変えたアルか?そうやってTW○-MIXして金儲けアルか?」
「神楽、それremixな」
「オイィィィィ!!お通ちゃんはそんな阿漕な事しません!!
って言うかアレか!?音痴ってか!!?音痴って言いたいのかぁぁ!!」
「希望を持つネ、新八」
「そんな生温い優しさはいらねぇぇっ!
いいでしょ、別に迷惑掛けてないんだし」
歌は楽しく歌う事が大切なんです。そう言いながらも、
ちょっと口を尖らせる新八の膝の上に、神楽がゴロンと寝転がる。
「うん、だから別にいいネ」
転がり込んで来た神楽に、新八は拗ねていた表情を訝しげなものへと変える。
「私、今の歌より新八の歌の方が好きネ、だからこれからも
思う存分歌うヨロシ」
ね、銀ちゃん。そう言って笑う神楽に、銀時も答える。
「ま、新八の歌の方が愛嬌があるわな」
「・・・なんですか、それ」
「あ、新八。顔が真っ赤ネ」
「う、煩いな~、もう!!」
そう言って新八は、赤い頬をそのままに、膝にある神楽の頭を
グシャグシャと掻き混ぜる。
なんだヨ、コノヤロー。と言いつつ、神楽も新八の横腹に手をやり、
反撃を開始し始めた。
楽しそうにジャレ合う二人に、銀時は苦笑を一つ零し、
ま、どんな歌詞だろうが、あの歌声が聞けなくなるのは寂しいわな。
もう少し頑張って耐え抜くか、マイピュアハート。とエールを送りながら、
目の前のジャレ合いに参戦すべく、腰を上げるのだった。
「って言うか、今度こそソフトな言い回しの歌詞にしてくんねーかな~。
あ、でも駄目だな。銀さんの優秀過ぎる妄想脳が勝手に変換しちまうから」
そんな銀時の願い虚しく、万事屋には音程の外れた過激な歌が、
今日も楽しげに流れている。