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頼み込んで、半ば脅して雇ってもらえたその後、初めて貰ったのは
少し使い込んだヘルメットだった。
『ヘルメット』
「あの~・・・これは・・・」
ある日、万事屋へと出勤すると、銀時がホイッとヘルメットを投げてきた。
「あん?見りゃ~判んだろ。メットだよメット。ヘルメット~」
そう言って銀時は首を緩く廻した。
「何時までも俺の貸してやれねーしな。だからソレ。オマエ専用」
俺のお下がりで悪いけど。銀時の言葉に、新八は手にしたヘルメットに
視線を落とす。
「お下がり・・・」
「そ。それな~買ったはいいけど、なんかこう・・・
収まりが悪いっつーかよ。あ、違うぞ!?違うからな!?
天パーとかの性とかじゃ全然ねーからっ!!」
・・・いや、誰もそんな事言ってませんから。
そう思いつつも、じっと渡されたヘルメットを見詰める。
序にそっと撫でてみたりする。
そんな新八の行動に、銀時は眉を顰める。
「んだよ。別にどこも壊れてねーぞ。
って言うか銀さんの髪はヘルメットか貫通しませんからっ!
寧ろグラスハートの如き繊細さだからっ!!」
「誰もそんな事思ってねーわっ!!
どんだけその天パーが弱点なんすか、アンタはっ!!!」
って言うかそれだけ繊細な髪だったら、そんな天パーには
ならないだろう。・・・と言うツッコミは止めておく。
・・・が、未だ銀時はブツブツと文句なのか言い訳なのか
判らない言葉を吐き続けている。
別に羨ましくなんかない・・・だの。
サラサラ黒髪なヤローには判らない・・・だの。
だからそんなにキャラが弱い・・・だの。
・・・よし、明日から気合入れて髪の手入れをしよう、僕。
固く誓った所で、再びヘルメットに視線を落とす。
それを見て銀時が漸くぼやくのを止め、一つ息を落とす。
「んだよ、新品じゃなきゃイヤだってか?
ドコのボンボン様ですか、コノヤロー」
人が折角家捜しまでしたってのによ~。銀時のその言葉に、新八は
勢い良く顔を上げた。
「態々探してくれたんですか?」
「ん?あぁ、まあな。・・・ま、でもそんなにアレだったら
その内ちゃんと新しいの買ってやるから、それまで・・・」
「いいです!!」
我慢しろ・・・と続けようとした銀時の言葉を、新八が大きな声で止める。
その迫力に、銀時が目を丸くすると、新八はハッと我に返ったように
慌てて下を向いた。
そして手にしていたヘルメットをギュッと抱き締める。
「あの~・・・新ちゃん?」
「えっと・・・ごめんなさい。あの・・・僕姉上しか居なくって」
その挙動不審さに、銀時が思わず声を掛けると、新八は何やらモゴモゴと
説明し出した。
・・・って言うかヘルメットの話でなんで姉上!?
行き成りの話の方向転換に、首を傾げる銀時。
けれど新八の話には続きがあって。
「で、お下がりとかあんまなくって・・・あってもちょっと・・・
ってなのばかりで・・・だから、その・・・」
これがいいです。そう言う新八をちょっと覗けば、微かに見える
嬉しそうな表情と、赤い頬。
そんな新八に、銀時の頬もちょっと熱を帯びる。
「そっか~・・・なら、ま、いっか。銀さんも探した甲斐、あったわ」
声はあくまで普通に、けれど確実に今の自分はにやけているだろう事を
理解している銀時は、新八の頭に手を乗せ、こちらを見ないように
固定してグリグリと撫で回す。
「ついでによ~、名前でも書いとけや。
もうこれ以上お下がりにならねーだろ、ソレ」
そう言う銀時に、新八は 痛いです!・・・等と文句を言いながらも、
そこから逃げようとせず、
「はい!有難うございます、銀さん。」
と嬉しそうに銀時に告げた。
そして日々は過ぎ、貰った時よりもまた少し使い古されたそのヘルメットは、
薄くなる度に新八の名を刻まれ、今日も二番目の主が来るのを待っている。
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[銀新十題]さまからお借りしました。