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器用モノの不器用さ
「銀さんって器用ですね~」
台所の棚がグラグラしてきた、と言うので直した所、新八に
キラキラした目で見られた。
・・・いや、錯覚とかじゃないから。
銀さん、まだ目はいいから。
序にお頭も可哀想な事になってないから。
何処かの誰か(多分蔑ろにされている一部の自分だ)に説明しながら、
ちらっと横目で新八を見る。
・・・うん、やっぱり間違いない。
だってあんなに歓心した表情で棚を見てるじゃねーか。
どうよ、銀さん、凄いでしょ。
だから労働のご褒美にちゅーの一つや二つかましてくれても
いいと思うよ?
・・・アレ?なんでかな、急にキラキラがなくなったよ?
おかしいな、新八君。こっちも見てくれなくなったよ?
じゃあ、それは夜にでも取っておいてあげるから、その代わり糖をよこせ。
・・・アレ?今の聞こえてなかった?
なんか新八君、サカサカ降ろしてた物を棚に戻し始めたよ?
そん中に糖分に当たるモノ、あったよね?
おーい、新八君の愛しの銀さんが何か訴えてますよ~。
「本当、銀さんってなんでも無駄に器用ですよね~」
・・・スルーかよ、ぱっつぁん。
しかもなんかさっきと似た言葉だけど、微妙に棘があるように
思えるのは、銀さんの思い違いかな?かな?
「僕だとこうはいかないんですよね」
ってそれも無視かよっ!!何、この仕打ち!
労働の報酬は愛ある精神的攻撃ですか!!
違うから、銀さんMじゃなくてSだから!!
「僕も銀さん・・・とまではいかなくても、もう少し器用だったらな~」
そう言ってしみじみと銀時が直した棚を見上げ、次に今日の昼飯の支度
へと取り掛かる新八。
それをしゃがみ込んでいじけていた銀時が見上げる。
「別に、オマエはそのままでいいんじゃね?」
「そうですか?でも器用な方がいいじゃないですか」
あ、今度は答えがあった。
なんですか、新八君。キミは銀さんからのラブトークは一切遮断出来る
機能でも付いてんですか。
・・・器用過ぎるだろう、それは。
ま、いいけどね。確かに俺は器用だし。
お陰で器用に殺して、器用に生き抜いてきたしね。
今では器用に折り合いつけて、ダラダラ生きてますってなもんさ。
だけどな、やっぱり何処かで折り合い付けれてねーもんもあって。
不器用にも生き足掻いてる部分もあんのよ。
馬鹿だとは思うけどな。
持ち前の器用さで誤魔化しとけばいいのにとも思うけどな。
でも失いたくは無い・・・と思ったりもしてんのね。
だからか知らねーけど、オマエの不器用な手がスッゲー好き。
その手で造られる、たまに煮崩れしている煮物が好き。
不器用ながらも一生懸命繕ってくれるその表情が好き。
背ければ楽なのに、それをしない不器用な視線が好き。
曲げない、折れないその心が好き。
だからな?
「別に銀さんが居るから不便じゃねーだろ、不器用でもよ」
不器用なまま、そのままのオマエでいて欲しい。
そう告げると、野菜を洗っていた新八の視線が漸くこちらを向く。
「それってやっぱ僕の事、不器用って思ってるんですね」
酷いな~。と言いつつも、新八は笑っていて。
そして濡れていた手を軽く布巾で拭くと、袂へと手をやり何かを取り出す。
そして取り出した小さな袋を破ると、その手を銀時の口元へと
持ってきた。
「はい、あーん」
「あーん?」
言われたとおり口を開けば、小さな塊を放り込まれ、銀時の口の中に
甘い味が広がった。
「棚、有難うございました」
目を丸くする銀時に、新八はそう言ってふんわりと笑った。
・・・やっぱオマエはそのまんまがいいよ。
十分、無駄に器用だよ、本当。
これ以上器用になんかなられたら、俺の心臓がいかれちまう。
それと誰か、この熱くなってきた頬の冷まし方を教えてくれ。
おれはそう言うトコは、器用に出来てないのよ、本当。