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「またこんなに呑んできて!」
良い具合に呑んで帰ってくると、玄関で新八が仁王立ちで待っていた。
時刻は日付が変わって少し経った位。
神楽はもう夢の中だ。
それもあってか、小言は早々に終わり、中へと招き入れられる。
ユラユラと揺れる体を支えられ、ソファに座らされると、
新八はそのまま何処かへ姿を消してしまった。
多分水でも持ちに行ったのだろう。
ボーッと天井を見上げていると、案の定コップを片手に新八が帰って来た。
礼を言って受け取り、中の水を飲み干す。
あぁ、美味いな。
新八が持ってきてくれたと思うと、美味しさ倍増だね。
そう告げると、新八は眉を顰めつつも微かに頬を染めた。
「何言ってんですか!なら幾らでも持ってきて
上げますから、呑みに行くの、少し控えてくださいよ!」
最近多いですよ?そうお説教の様に言うが、心配している
気配もして、少しだけ口元が緩む。
それを見られたのか、新八はムッと口を尖らすと、腕を組んで
こちらを睨んできた。
「お陰で僕、最近家に帰れてないんですけど?」
だな。オマエ、神楽を一人に出来ないからって
必ず泊まってくもんな。
「姉上にも、怒られましたし・・・」
その時の事を思い出したのか、新八は少しだけ肩を落とした。
知ってるよ、俺もお妙に言われたもん、いい加減にしろって。
睨まれたもん、さっさと帰せって。
だが、それは口に出さず、代わりに新八へ向けて手を出してみる。
「ちょ、銀さん!?」
組まれていた腕を掴み、引き寄せれば簡単に新八は俺の元へと
倒れこんできた。
その体を、ギュッと抱き締める。
「別にいいじゃ~ん。ここだってオマエの家みたいなもんだろ?」
そう言ってサラサラと感触の良い黒髪に頬を寄せれば、
少しだけ新八が身じろぐのが判った。
「そ、それはそうですけど・・・でも・・・」
ちらりと視線を下げれば、微かに赤くなった新八の耳が見えた。
それは大層美味しく俺の目に映り、ついペロリと舐めてしまう。
その瞬間、腕の中の新八がビクリと跳ねた。
そして距離を取ろうとしているのか、腕を突っぱねてきたので
舐めるのを止め、再び頭に頬を摺り寄せて
背中に回した手を、ポンポンと謝罪する様に数回叩いた。
すると諦めたのか、小さく新八が息を吐き、力が抜けたのが判った。
それにホッと胸を撫で下ろす。
ヤバイヤバイ。まだ新八補給が済んでないというのに、
ここで離れられたら最悪だ。
離れていた分、きっちり補給しなければ。
「でもさぁ、実際新八が家に居るって思うと
安心するんだよねぇ、銀さん」
だからごめんなさい。俺は先程の事などなかったかのように、
のんびりとした声で謝罪した。
「なんですか、それ。僕は留守番要員ですか」
腕の中からムッとした声が聞こえ、俺は摺り寄せていた頬を離し、
新八の顔を覗きこむように顔を下げた。
見ればやっぱり、ムッとしている新八の顔が。
俺は小さく首を振ると、
「ん~ん。ずっとここに居てくれって事」
そう言って柔らかい頬に唇を当てた。
すると新八は一瞬目を丸くし、次にハニャリと顔を崩した。
「何ソレ。銀さん調子良い」
クスクスと笑う新八に、俺は バーカ、本気だよ。と言いながら
何度も唇を落とした。
しかし新八は本気にしてないようで、少しだけ悪戯っぽく笑うと、
「でも、財布の中身も姉上も怖いから、程々にして下さいね」
そう言って手を伸ばし、俺の鼻先を摘んだ。
俺はそのままの格好で
「あ~・・・善処します」
と鼻声で答えると、新八の手を取り、そちらにも唇を落とす。
それが擽ったかったのか、新八は肩を竦めると、恥ずかしそうにポテリと
俺の肩口へとオデコをくっつけてきた。
そして吐かれる言葉。
「・・・それに、ここに居ても銀さんがいないと寂しいし・・・」
その言葉に、俺は小さく謝罪の言葉を返し、侘び代わりに
そっと新八の髪の毛に口付けを落とした。
うん、だよな。
俺も寂しいよ、オマエ置いて呑みに行くの。
だけどよ、俺が呑みに行かないと、オマエ帰っちまうだろ?
お妙が心配だって、行っちまうだろ?
そうすっとさ、もっと寂しくなんのよ、俺が。
寝る時も、寝てる時も、ずっと一緒に居たいんだよ。
もっと言うなら、起きてる時も、何してる時もオマエと一緒がいい。
家とかじゃなく、俺の中に居てほしい。
俺の腕の中に、ずっと、ずっと。
言葉にしないものの、俺はそれを示すかのように
抱き締めていた腕に力を込めた。
しっくりと隙間なく重なる体に、満足げに息を吐き出す。
「でも、流石に明日は帰らないとなぁ・・・」
ボソリと呟かれた言葉に、俺の中の温かいものが一瞬冷える。
それに気付かないまま、新八は独り言のように言葉を続けた。
「なんか最近、帰ると機嫌悪いんですよね、姉上」
その言葉に、ビクリと俺の目蓋が痙攣する。
そうだろうな、機嫌悪いだろうな、きっと。
言われたよ、ちゃんと家に帰してくれって。
ちゃんと・・・返してくれって。
本当、女って変なトコで鋭いのな、やんなっちまう。
オマエもさ、お妙の事心配してんの、知ってるよ。
夜遅くまで仕事して、頑張ってるお妙の事。
一人であの広い家に居る事、気になんだろ?
当たり前だよな。
だってずっと二人だったんだろ。
二人でずっと支えあってきたんだろ。
でもよ?
ならよ?
もういいんじゃねぇか?
ずっと二人だったんだろ?
ならこれからのは俺にくれや。
これからの分は全部俺にくれや、新八。
だってもう十分だろ。
お妙との時間は、もういいだろ?
今までずっと二人で居たんだから。
お妙だってもういいだろ?
今までずっと二人だったんだから、もう諦めろよ。
俺に譲れよ、これからの時間。
渡せよ、新八の全てを。
まぁ今すぐにとは言わねぇからさ。
少しずつ俺のもんになってけや。
少しずつ、少しずつここでの時間を増やしていって。
俺の中での時間を増やしていって。
何れ、俺達だけになろうや。な?
俺は腕の中の新八に擦り寄り、その温かい温もりと嗅ぎ慣れた匂いに
鼻を鳴らした。
それは、何度も泊まる内に、自然と置きっぱなしにしている着物で。
香るのは、この家と同じ匂いで。
多分お妙は気付いているのだろう。
いつの間にか減っていく、新八の荷物を。
きっと感じているのだろう。
自分には馴染みのない匂いを纏いつつある新八を。
「なら、今度機嫌取りに行くか?
俺も着いてってやっから」
仕方ねぇからな、俺達の時間に少しだけ関わらせてやろう。
・・・今のトコは・・・な。
最後は言葉にせず、そう告げると、腕の中の新八は嬉しそうに
返事を返してきた。
それに少しだけまた心が冷えるが、それ以上に新八から
感じる信頼感に、心が震える。
俺はやんわりと目を細めると、とりあえず今の二人の時間を
じっくりと味わう為、目の前にある微かに赤くなっている新八の耳へと
舌を伸ばした。
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二万打お礼企画第五弾。
柚和様からのリクで『甘甘なんだけど銀さんがちょと病んでる銀新』
と言う事でしたが・・・如何だったでしょうか?(ドキドキ)
ウチのちょい病み銀さんを気に入って頂けてるとか・・・
有難うございます~vvこれからも調子に乗ってチョクチョク書いていこうと
思います!(おいι)
では、企画参加本当に有難うございましたvv
少しでも気に入って頂けたら嬉しいですv