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夜も更けた頃、万事屋の一室には、銀時とその助手であり
尚且つお付き合いしている新八が仲良く並んで座っていた。
何時もなら帰宅している筈の新八が、珍しくも
「今日、泊まってってもいいですか?」
と言ってきたのだ。
何を今更。ここはオマエにとっても家だろうが。
一々断りを入れるんじゃねぇよ。
無駄に萌えるだけだから。
何時もならこちらからクドイほどお泊りを推奨しているのだ。
新八のお願いに、小さく、しかし力強く拳を握り締めた銀時であった。
・・・ま、その姿は物凄く冷めた視線でお子様二人から見られた訳だが。
だが、今日は新八からお泊り発言が出たのだ。
冷めた視線でもなんでも構いやしない。
幸せすぎるぜ、コンチキショー!!
・・・と、喜んでいた銀時であったが、何故か今では力なく肩を落とし、
新八の隣に座っている。
神楽は既に眠ってしまった。
(少しぐらい音を立てても起きてこねぇんだよな、うん)
明日も幸い(?)な事に、仕事は入っていない。
(体が辛くても大丈夫なんだぞ、新八!)
時間帯も、恋人同士にとってはいい頃合と言えるだろう。
(なんか完璧じゃね?この状況!!)
なのに銀時はソファの上でションボリだ。
何故か。
理由は簡単。愛しの新八君が、テレビに釘付けなのである。
そのテレビの中では、新八の愛しのお通が映し出されていて・・・
・・・て、いやいや、違うから。
新八の愛しの~は銀さんだから。
俺達、付き合い始める前から、既に
夫婦認識されてたから!!
そうは思っても、新八の視線はテレビに一直線。
どうも、帰宅時間と見たかった番組が重なっていた為故の
お泊り発言だったらしい。
「全くさ~、男心を弄ぶ様な発言しやがって。
小悪魔か?小悪魔気取りか、コノヤロー」
力なく項垂れ呟くと、何言ってんですか。と、大変白けた声が
隣から発せられた。
「んだよ、盗み聞きとは失礼なヤツだな。
プライバシーの侵害よ?」
大体テレビはどうした。銀時はちらりと顔を上げながら、口を尖らした。
実は最初、なんとかこちらに意識を向けようと、色々と話しかけていたのだ。
けれどその方法は芳しい結果を齎す事無く、仕舞いには頭に張り手を
プレゼントされた。
・・・ま、その時は口だけではなく、
手も出していたのだけれど。
「こっちこそ、名誉毀損で訴えますよ?」
ちなみに今はニュースの時間なんで。新八の言葉に目を移せば、
確かに画面には気難しそうな顔のキャスターが何かを話していた。
「なんだ、終わったのか?」
期待を胸に問い掛けたが、いえ、この後また始まります。との答えに
再び撃沈される。
「っだよぉ。銀さん、期待に胸とその他を膨らませたのに~」
「萎んじまえ、そんなもの」
嘆く銀時に、新八は呆れ気味の視線を向けると、今のうちに新しい
お茶を入れようと、二人分の湯飲みを持って立ち上がった。
「あ、ちょい待ち!!」
立ち上がる新八の手を掴み、銀時はそのまま抱き寄せる。
それに慌てたのは新八で、このままではもうすぐ始まるであろうお通が
見れなくなる・・・と、必死で抗った。
「わ~ってるって。始まったらちゃんと離すからよ」
銀時は小さく息を零してそう言うと、
「・・・だから今だけ。少しだけオマエを補給させろや、な?」
そう呟き、新八の髪の毛に頬を摺り寄せた。
新八は、そんな銀時の行動に小さく噴出してしまう。
それが聞こえたのか、銀時は んだよぉ。とイジケたように呟くと、
ギュウギュウと力任せに新八の体を抱き締めた。
「ちょ、痛いですって、銀さん」
「ば~か。銀さんの心の方が痛いんですぅ」
だからさっさと慰めろ。そう言う銀時に新八は自分の手をゆっくり上げ、
フワフワとした銀時の髪をそっと撫でた。
「もう、本当に寂しがりやなんだから。たった数時間の事なんですから、
それぐらい我慢して下さいよ。あんたとはずっと一緒に居るんだから」
ね?新八はクスリと笑い、顔の見えない銀時を見上げた。
「・・・オマエの事に関しちゃ、我慢は出来ねぇ・・・
大体お通と俺、どっちが大切・・・て、いやいや、この台詞はねーな。
ウザイ事山の如しだな、うん。いや、だけど・・・」
等と直ぐ近くから聞こえるくぐもった銀時の言葉に、新八は再度溜息を零した。
「あのね~、現実でこんなマダオ好きになったんですよ?
理想ぐらい大事にさせて下さい。」
ほら、そろそろ始まるから離して下さい。そう言ってペチペチと頭を叩かれ、
銀時は渋々その腕から新八を解放した。
「・・・今なんか嬉しい言葉が聞こえた気がすんだけど、
酷い言葉も聞こえた気がする・・・」
「真実を言ったまでですよ。あ、始まった!!」
新八は銀時の腕から抜け出ると、画面に視線を移したまま元居た場所でなく、
銀時の膝の間へと腰を下ろした。
「へ???あ、あの新ちゃん?????」
突然の新八の行動に、今度は銀時が慌てる。
新八はワタワタと所在無げに振られる銀時の手を掴むと、そのまま自分の
腹へと廻し、ゆったりと広い胸に背中を預けた。
「銀さんのせいでお茶持って来れなかったんですからね?罰として
座椅子の刑です」
ちなみにオイタしたらお仕置きです。フフッと笑う新八に、
銀時は何か言おうと口を開けたが、結局何も言えず、
黙って熱くなった顔をその小さな肩へと押し付ける事しか出来なかった。
神楽は既に眠ってしまって。
(きっと今頃いい夢見てんだろ)
明日も幸い(?)な事に、仕事は入ってなくて。
(いや、今日も・・・てか一昨日も入ってなかったか・・・
すんません、明日は頑張ります)
時間帯も、恋人同士にとってはいい頃合と言えて。
(でもその恋人はテレビに夢中だったりするが・・・)
とりあえず、ソファの上で銀時は、幸せそうにニンマリ笑った。
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所詮ウチの坂田はヘタレです(笑)