[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
それはお昼前の事。
そろそろ昼飯時だと、新八が台所へと立って行った。
「新八ぃ~。今日の昼、何~?」
デスクの椅子に座ったまま、それを見送った銀時が少し大きめの声で
問い掛けると、お素麺ですよ~。と返ってきた。
その言葉に、ウゲッと言う声が返る。
「おいおい、またかよ~。ここんトコずっと素麺じゃね?」
「安心して下さい。明日も明後日もその予定です。」
「いやいや、安心出来ねぇからね?ソレ。
そんなに素麺ばっか続いたら体力持たないから。
夏本番前に、早くも夏バテになるからね?」
他にねぇのかよ。と、銀時も台所へと向かう。
すると、鍋を火にかけながら新八がクルリとこちらを振り向いた。
その表情はとても愛らしく、微笑んでいて・・・
「使わねぇ体力なんざぁ
維持しててもしょうがないでしょ?」
・・・吐き出された言葉はとてつもなく厳しかった。
「大体食料買うのにもお金が必要なんですよぉ?
知ってましたかぁ?銀さん」
「えぇ!?マジでか!銀さん知らなかった・・・」
「お願いですから炎天下に頭のてっぺんから
足の先まで黒い物を纏って延々
立ち尽くしてきて下さい。で、近所のお子様達に
虫眼鏡向けられて燃え尽きろ」
「ホント、スンマセンでした~!!!」
ニコニコ笑いながらも続く辛辣な新八の言葉に、銀時は
調子に乗ってましたぁぁぁぁ!!と勢い良く頭を下げた。
そんな銀時に新八は一つ息を吐くと、戸棚から素麺の束を取り出す。
「全く・・・お素麺大量に貰えて良かったですよ。」
桂さんにお礼言わないと・・・そう言う新八に、銀時は小さく舌打ちを
する。
「っつうか普通甘味を持ってこねぇ?なんで素麺?」
「定番だからじゃないですか?って言うか甘味はご飯にならないでしょ。
大体これのお陰で僕達生き繋いでるんですからね!!」
文句を言わない!ぶうたれる銀時にビシッと告げると、新八は素麺を鍋の中に
いれ、
「っぅわっ!!!」
と声を上げた。
「どうした!新八!!」
火傷でもしたかと、銀時が慌てて近寄り、新八の肩を掴んで振り向かせると、
そこには真っ白にレンズを曇らせた顔が。
「へ?」
「あ、すみません。行き成り曇ったからびっくりしちゃって・・・」
そう言うと新八は眼鏡を取り、恥ずかしそうに袂から出したハンカチで
レンズを拭いた。
「おま・・・あ~、もう、あんまびっくりさせないでくれる?
銀さん、寿命が確実に縮んだから。
死因は腹上死って決めてるのに、
確実に減っちゃったから、一回分」
「相手次第ではもっと減らしてやりますよ」
「何々~?もしかして心配してんの?安心しろって、銀さんの相手は
最後の最後まで新ちゃ・・・」
「じゃあ僕銀さんには長生きして欲しいんで、そう言うのは
今後一切なしという方向でお願いします」
「うっそでぇす!!もう新ちゃんとの桃色生活を日々の糧にして
生きてくんで、減らさないでくださぁぁい!!」
「さ、茹で具合はどうかな~?」
銀時の言葉をサラッと笑顔で流し、新八は鍋の中を覗き込む。
今度は曇らないように、少し慎重に。
「・・・眼鏡って時々邪魔なのな」
新八の仕打ちに少し凹んでいた銀時だったが、鍋から出る蒸気に
苦労している新八の姿を見てポツリと呟いた。
それにクスリと新八は苦笑する。
「こう言う時は確かに不便ですね」
「コンタクトとかにはしねぇのか?」
ま、それじゃあ新八の大部分が失われる訳だけど・・・と言いながら
新八の後ろに立ち、一緒になって鍋を覗き込んでくる銀時にゴスッと
肘うちをかます。
「天パ100%の人に言われたかないです。・・・てか、ちょっと
コンタクトって怖いじゃないですか」
「あぁ?怖いって何よ」
つうか天パ100%って何!?肘が入った腹を摩りながら銀時が聞くと、
新八は少しだけ首を傾げ、人差し指を立てる。
それを自分の目へと近付かせながら言葉を続けた。
「だってこうやって目に入れるんですよ?なんか怖くないですか?」
そう言って視線を向けてくる新八に、銀時はにやんと笑うと、
「なぁに言ってんだよ。オマエはやれば出来る子でしょ?
大体もっとすっげーもん入れてんじゃん、いつも」
ここに。そう言ってペロンと新八の尻を撫で上げた。
その感触に、新八は顔を瞬時に赤く染め、次に声を上げようとした所で・・・
「入れるって何アルカ?」
と言う、それまでこの場に居なかった第三者の声が二人の耳に届いた。
「か、神楽ちゃん!!」
何時帰って来たの!!!新八は慌てて傍に居た銀時を押しのけ、
振り返ると其処にはキョトンとした表情の神楽が立っていた。
「何時ってさっきネ。ちゃんとただいまも言ったヨ。」
オマエ等が気付かずイチャイチャベチャベチャしてただけネ。そう言って
鼻で笑う神楽に、新八はカクリと肩を落とした。
「や、ベチャベチャはしてないから・・・」
「それよりも新八!新八はいつも何を入れてるアルカ?」
すっげーもんって何ヨ?と興味津々に聞いてくる神楽に、新八は言葉が出ない。
それまで以上に顔を赤くし、元凶でもある銀時を睨もうとするが・・・
「・・・あ・・・」
「ん?あぁ!判ったアル!!入れてるのはツッコミネ!」
確かに新八のツッコミはすっげーヨ。うんうんと納得したように
頷く神楽に、新八は乾いた笑いを浮かべた。
その視線の先では、先程押しのけた力が強すぎたのか、
壁と仲良くしながら意識を飛ばしている銀時の姿が。
「・・・まぁ、間違ってはいないよね」
だって僕、ツッコミだし。
いつも入れてるのも確かだし。
神楽ちゃんも納得したし。
それ以外の正解は全く見当たらないし。
そう納得すると、茹で上がった麺を水に晒し、何事もなかったかのように
昼の準備を再開した。
「神楽ちゃ~ん、序にツユとか持ってってくれる?」
「おぅ!了解ネ」
「っておぉぉぉおおおいっ!ちょ、酷くね?
銀さんほったらかしって酷くね!?」
「あ、復活した」
「新八、もっときっちりツッコンどくネ!せめて昼飯が終わる
ぐらいまで復活しないように・・・」
「だね~。今度からは気をつけるよ」
「ぅおおい!何それ。ただでさえ素麺続きなのに、それすらも
奪い取る気ですか!お前らは!!
てか新八!銀さんのにピンクの素麺入ってないんですけどぉぉ!?」
「もう頭の中まっピンクなんだからいいじゃないですか」
「よくねぇぇぇえ!だってなんかアレ、甘そうじゃん!?
超甘味的色合いじゃん!!」
「うるせぇぇぇぇぇええ!!!」
そして喚く銀時に、新八のすっげーモンが入れられたのは言うまでもない。
*************************
暑い日は頭も沸きます(←何時もです)