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ゆっくりと意識が浮上してくるのが判る。
そのままぼんやりと目を開ければ、赤く染まる天井が目に入った。
・・・あ~、もう夕方か。
本当、一日が過ぎるのは早いね。等と思いながら、ゆっくりと体を
ソファから起こす。
すると掛けられていた毛布がずるりと落ちた。
なんだこりゃ。
確か自分は寒さよりも眠気に負けて、ここで寝てしまった筈だ。
なのでこんなものを掛けて寝てる筈が無い。
と言うか、態々掛けて寝る程マメでもない。
ならばこれを掛けてくれたのは新八だろう。
落ちた毛布を掴み、苦笑が零れる。
ダラダラ寝てるな。仕事しろ。
普段そう言って自分に小言をぶつけて来るくせに、
こうやって甘やかしてもくるのだから、性質が悪い。
掴んだ毛布を片手に抱え、銀時はソファから立ち上がった。
そしてキョロリと部屋の中を見回す。
見ればもう一つのソファにも毛布が置いてあり、
そこで誰かが自分と同じように寝ていた事を教えていた。
んだよ、神楽も寝てたのか?
また夜になって眠れないとかほざくんじゃねぇだろうな。
それだけは勘弁してくれ。と思いつつも、その神楽の姿も見えない。
台所にも・・・いねぇな。音がしねぇ。
なら和室か?
銀時はゆっくりと毛布を抱えたまま和室へと足を向けた。
そして入り口近くまで来て、ぴたりと足を止める。
視線の先には、探していた新八の姿があった。
そしてその膝に頭を乗せ、寝転んでいる神楽の姿も。
どうやら洗濯物を畳んでいる途中に神楽が来たらしい。
新八の傍に、少しだけ畳まれた洗濯物が置かれていた。
そして洗濯物を畳んでいたであろうその手は、
今はゆっくりと神楽の頭を撫でていて。
小さい影が、俺の足元まで伸びていて。
瞬間、俺は一気に血が下がるのを感じた。
それと同時に湧き上がる、意味の判らない衝動。
泣きたくて、叫びだしたくて、逃げ出したくて。
でも傍に居たくて。
俺の脚は、無意識の内に一歩前に出てしまう。
頭では止めろと信号が発せられているのに、何故だか足は止まらない。
だが、その足も不意に向けられた新八の視線に、ピタリと止まる。
いや、寧ろギクリと体を強張らせた・・・と言った方が正しいか。
「あ、起きました?」
無言で立ち竦む銀時の姿に、一瞬驚いた新八だったが、
直ぐにふわりと微笑むと視線を膝の上の神楽へと戻した。
その事にホッと息を吐いた銀時は、ゆっくりと体の強張りを解くと
そのまま和室へと足を踏み入れた。
「全く、そんなに寝てよく夜も眠れますね」
そう言うも、新八の手は神楽の頭を撫でる事を止めない。
優しく、優しく。
やんわりと微笑みながら、その頭を撫で続けていた。
見れば神楽も気持ち良さそうに目を閉じている。
・・・微かに涙の痕を残しながら。
それを見て、俺は僅かに眉を寄せると、新八の後ろへと腰を降ろし、
抱えていた毛布で自分ごと新八を包み込んだ。
そしてそのままギュッと抱き締めると、新八の肩口へと顔を埋める。
・・・あぁ、なんて小さい肩なんだろう。
突然の事に驚いた新八が銀時の名を呼んだが、それには答えず
ただ黙って埋めた肩口へと顔を摺り寄せた。
すると、困ったように笑う声と共に、新八の体から
力が抜けたのが銀時へと伝わった。
そして、ポンポンと頭を撫でる感触。
その小さな手の感触に、思わず逃げ出したくなったが、腕は言う事を聞かず、
逆に力を込めてしまう。
多分新八は、自分も何か嫌な夢でも見たと思ったのだろう。
神楽の理由は、多分それだろうし。
でもな、違うんだよ、新八。
嫌な夢を見なくても、縋りつきたくなるんだよ。
何の理由もなく、縋りたくなるんだよ、もう。
逃げ出したいのに、もう体が言う事を聞かねぇんだよ。
きっとこうしている意味を新八は聞かないだろう。
聞かずに、けれどこうして甘やかしてくれるのだろう。
それが酷く嬉しくて。
そしてとんでもなく申し訳なくて。
あぁ、本当、ごめんな。
すがってしまって、こめんな。
泣きたくなったんだよ、本当に。
だってこんなにもオマエは優しくて暖かいのに、
俺達みたいなのに漬け込まれて、可哀想で。
叫びだしたかったんだ、本当は。
こんなにも小さい体に、力いっぱい縋りついてしまう事を
大声で謝りたくて。
逃げ出したかったんだ、本当。
寧ろオマエに縋ろうとする自分から、逃がしてあげたくて。
けれどそんな風に思っていても、
体は全く言う事を聞いてくれなくて。
「・・・重くね?」
自然と強くなる腕と、細い肩に擦り寄ってしまう自分の頭を
そのままに、ポツリと問いかけてみれば。
「もう慣れましたよ」
なんてクスリと笑って答えられて。
とんでもないその甘い言葉に、俺はますます体を密着させた。
ふと見れば、神楽の手も必死に新八の袴を掴んでいて。
なんだかじんわりと目元が熱くなる。
幸せになって欲しいのにな。
普通に幸せになれるヤツなのにな。
そう願ってる筈なのにな。
離れる事、出来ねぇんだな、俺達。
あぁ、本当にごめん。
何度だって謝るから、
酷いヤツだと罵られてもいいから、
もう少しだけオマエの言葉に甘えさせてくれ。
あぁ、でももしオマエが俺達の重さに潰されたとしても、
きっと大事に抱え込んで離さねぇんだろうな。
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なんか妙なのが降りてきた結果(おいι)