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それなりに人生を送ってきた俺は、その年数にしては
色んな場面を経験してきた方だと思う。
けれど、そこは持って生まれた才能か、それとも培ってきた経験ゆえか、
それなりに上手いこと潜り抜けてきたりした。
・・・が、これは一体どうしたらいいものか。
坂田銀時、ちょっとピンチです。
それは呑んで帰って来た時の事・・・つまり今から少し前の事なんだが、
ほろ酔い気分で帰って来た俺に行き成り降りかかってきたのだ。
困った事が。
日付が変わる前だと言っても、既に夜中だ。
少し大人しめに玄関を開け、帰って来た事を告げたのだが、
誰の声も返って来ず、俺は小さく首を傾げた。
神楽はもう寝ているとしても、本日お泊りの新八は起きている筈だ。
もしかしてお怒りか!?と、些かおどおどと居間へと向うと、
ソコにはソファで項垂れていた新八が居た。
「・・・新八?」
寝ているのかと小さい声で呼び掛けてみると、新八は
ビクリと肩を震わせた。
なんだ、起きてんじゃねぇか。
んだよ、無視か?それともやっぱお怒りか?
俺はソロソロとソファに近付き、後ろから恐る恐る新八の顔を
覗き込んだ。
すると、ソコには目に涙を溜め、唇を噛み締めている新八が・・・
「って何々!?どうした新八!!」
誰かに苛められたのか!?
まさかセクハラでもされたのか!?
それとも寂しかったのか!!?
あ・・・もしかしてどっか痛いのか?
俺は慌ててソファを飛び越え、新八の前へと跪くと膝の上で固く握られている
新八の手を握り締め、そう矢継ぎ早に問い掛けた。
それに新八緩く首を振って答えた。
「・・・本当か?何かされたならちゃんと言えよ?
銀さんが軽~く生れ落ちたことを後悔させながら、
命がある事も心底後悔させてやるから。
痛いトコがあったらそれも言えよ?
ちなみに寂しかったってんなら何も言わなくていいから
黙って銀さんの所に飛び込んで来なさい」
念を押すように再度繰り返すが、新八はそれにも首を振った。
・・・いや、寂しくなくても飛び込んできてくれて良かったんだけどね。
しかし、今はそんな事言ってる場合ではないだろう。
新八に何時までもこんな顔をさせておけない。
俺は優しく握っていた手を摩ると、やんわりと新八の名前を呼んだ。
そしてその後、理由を聞こうとした所で、新八の口が小さく開くのを見た。
が、声は小さくて俺の耳まで届かなかった。
「ごめん、ちょっと聞こえなかった。もう一回言って?」
そう言うと新八はギュッと一回唇を噛むと、辛そうに眉を寄せて
ごめんなさい。 と謝罪の言葉を吐き出した。
しかし、漸く口を開いてくれたものの、やはり俺には
何故謝られるのか判らない。
何も言葉を返せずに居ると、再び新八の口が開かれた。
「これ・・・汚しちゃって・・・」
俺の手の下、新八の手に力が入ったのを感じ、視線を落とせば
ソコには見慣れた着流しが・・・
途切れ途切れに話す新八の言葉を要約するならば、
晩御飯の時、神楽が味噌汁を零してしまい、焦りつつも
神楽が取ってくれた布で拭いた所、それは俺の着流しであった・・・と。
「急いで染み抜きしたんですけど、まだちょっと染みが残ってて・・・」
と、酷く申し訳なさそうに言う新八に、俺は あ~。 と声を上げた。
そう言えば呑みに出掛ける時に、今日は少し汗を掻いたから・・・と
着替えた覚えがある。
しかもちゃんと籠に入れろって言う新八の声を無視して
そこら辺に脱ぎっぱなしにした記憶が・・・
「・・・でもさ、ホラ。そんなに目立たねぇぞ?」
とりあえずそんな事を言ってみる。
確かによく見れば判る気がするが、そんなに気にする程でもない。
ってか元々汚れてたしな、これ。
そう思うが新八は納得していないらしい。
フルリと首を振り、
「でも残ってます」
と、きっぱりと言い放った。
「いやでもさ、そもそもこんな所に脱ぎっぱなしにしてた銀さんも
悪いんだし・・・」
「ちゃんと確認しなかった僕が悪いんです」
またもやきっぱりと言う新八に、俺は少し困る。
だってよ、新八、そんな悪くなくね?
渡されたらそれで拭いちまうって。
それに、きちんと染み抜きだってしてるしさ。
反省なんか滅茶苦茶してんじゃん。
きっと神楽が寝た後も、必死になって洗って。
でも納得出来る状態にならなくて。
どうしようどうしようってグルグルなって。
仕舞いには涙まで出てきそうになっちゃった訳だろ?
大体、元々新八の言葉を聴かず、そこら辺に脱ぎっぱなしにしてた
俺も悪いと思うわけよ。
・・・でも、そう言っても新八は納得しねぇんだろうなぁ。
変な所で意固地なんだからよ。
ま、そう言う所も可愛いんだけどな!
けど、何時までも新八に辛そうな顔をさせておけねぇ。
かと言って怒るのも・・・なんか違う気がすんだよな。
ってか怒れねぇしな、こんな可愛い生き物。
だって涙目だぞ!?
小さな唇、キュッと噛み締め中だぞ!?
俺の着流し、握り締め中だぞ!?
怒れねぇ。
これはSモード全開の銀さんでも
怒れねぇよ!!
神楽とかなら頭引っ叩いて終わりなんだけどな~、
どうしたもんだか・・・
そう悩んでいると、新八が再び ごめんなさい。 と告げてきた。
俺はそれに小さく息を吐いて覚悟を決めると、少しだけ強めに
新八の頬を両手で覆った。
そして視線を俺のと合わせると、
「めっ!!」
と、短く怒りの言葉を吐き出した。
その瞬間、新八の目が真ん丸く見開かれる。
うわ・・・なんか本当に零れ落ちそうだぞ、おい。
ってかちょっと間抜け顔だ。
俺は小さく笑いを零すと、そのまま新八の頬を覆っていた手を上げ、
その上にある丸っこい頭を勢い良くかき回した。
「うわっ!ちょ、何すんですか、銀さん!!」
新八が慌てて俺の手を払いのけようとするので、俺は
軽く頭を叩いてその手をどけた。
「は~い、お説教終わり~。それよか新八、銀さんちょっと
小腹が空いちゃったんだけど?」
何かない?訳が判らない・・・と言った感じでこちらを見ている
新八にそう告げ、俺は立ち上がって新八の隣へと腰を降ろした。
「や、確か少しご飯が残ってた筈ですけど・・・」
俺の言葉に呆然としていた新八がそこまで言い、不意に言葉を切る。
何だ?と視線をやれば、ソコには俯き、小さく肩を振るわせる
新八の姿が・・・
え、ウソ!やべ、泣かしちまった!!?
だが、それは違ったらしく、次にクスクスと言う笑い声が聞こえてきた。
おいおい、さっきまで泣きそうだった子は
何処のどなた様ですか、コノヤロー。
柄にもない怒り方をしてしまった恥ずかしさもあって、俺は
つい唇を尖らしてしまう。
が、そんな態度も笑いを増長させるだけだったらしい。
声を出して笑い出す新八の頭を、俺はもう一度かき回すと、
そこから逃げ出すように新八がソファから立ち上がった。
「ごめんなさい、銀さん。お茶漬けでいいですか?」
笑ってそう言うと、新八は着流しをその場に置き、台所へと
消えていった。
残されたのは、些か不満気味な俺と、少しだけ染みの残った着流し。
「・・・ま、アレだ」
泣き顔なんぞより、笑っててくれた方が断然いい。
その為なら柄にもねぇ事でもするし、言う事も聞くさ。
「でもあの怒り方はなかったかな~、でも他にねぇしなぁ」
俺は頭を悩ませながら、とりあえずこんな事がもう起きないように
脱いだものはきちんと籠に入れる事を固く誓った。
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OPの歌う新ちゃんを怒る坂田が、どうしても「めっ!」って
言ってるようで仕方ありません。