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「お前さ~、将来どうすんの?」
何時もやる気のない担任が、これまた然程興味なさ気に問い掛けてきた。
僕は目を数度瞬く。
だって今までの会話と全く関連なく、突然言われたのだ。
「・・・それ、二者面談的質問ですか?」
とりあえずそれまでの会話・・・と言っても先生が一人でカキ氷に対する
シロップの割合を熱く語っていただけだが・・・から脳内をシフトチェンジ
して聞いてみた。
すると、机に向かってペンを走らせていた先生は、目も上げずに
「いや、単なる好奇心」
と告げてきた。
・・・ならもっと興味有り気に聞いて来いよ。
ってか、担任が受け持ちの生徒の進路に対して『好奇心』って・・・
僕は片付けていた本を抱えたまま、一つ息を吐いた。
ま、この先生に『先生らしさ』を求めても無駄か・・・
今日も終業式だって言うのに、こうして放課後に資料室の片付けを
手伝わせているぐらいなのだから。
「・・・とりあえず、一般的な常識を持ち合わせた大人になりたいです」
「なんか益々地味さが増しそうだな、おい」
「カビの生えたパンを本棚の裏に隠したまま忘れてるような
大人にはなりたくないって事ですよ、坂田先生?」
ニヤニヤと笑って視線を向けてきた先生に、たった今発掘したものを
指で摘んで放り投げてやる。
すると、うぉっ! と一瞬体を逃がしたものの、机の上に落ちたパンを見詰め、
哀しそうな顔をした。
忘れるぐらいなら隠すなよ、こんな所に。
ドコの小学生だよ、本当。
ってか、こんな担任を持った僕の方こそ、悲しみ溢れる表情が
似合うと思うんですけど!?
あ、違う。呆れ顔か、この場合。
とりあえず、今度徹底的にこの中を家捜ししよう。と心に決め、
空いたスペースに抱えていた本を入れていく。
「先生はどうだったんですか?」
やっぱり小さい頃から先生になりたかったんですか?先生に背を向けて
そう聞くと、それまでしていたペンの音がピタリと止まった。
変わりに聞こえてきたのは、ん~ と言う声と、髪をかき回す音。
「・・・ま、昔はそんな事考えてなかったのは確かだな、うん。
っつうか気付いたら教壇に立ってたし?」
やべっ!俺、天性の教師資質!!?と言う先生の言葉を、とりあえず
はいはいそ~ですね~。 と言って軽く流す。
てか、そんな人は見るのが面倒だからって夏休みの宿題を
なしにしません。
僕の返事に不服そうに文句を言っている先生を無視して、
下に積んであった本をどんどん棚へと戻していく。
あ~、もう窓を全開にしてても暑いな~。
早く終わらして家に帰ろう、うん。
・・・ま、家の中も暑いんだけどね。
でもシャワーあるし。汗、流せるし。そう考えると、途端に
流れる汗が気になりだした。
早く終わらせようと思ってはいるものの我慢できず、本を戻す作業を休め、
頬を伝い落ちていく汗を腕で拭い取っていると、不意にその手を取られた。
振り向けば、何時の間に来たのか、先生が後ろに居て。
「・・・でもやっぱなるんじゃなかったかな。だってよぉ先生としちゃぁ
やっぱ生徒には手ぇ、出せないじゃん?」
そう言って、取られた手をペロリと舐められた。
「ちょっ!何してんですか!!!」
「あ、しょっぱい」
「当たり前です!!!ってか、手、離して下さいよ!」
言動が一致してないし!!自分でも判るぐらい顔を真っ赤にして、先生の頭を
空いている手で押しのけようとしたけど、その手も簡単に掴まってしまう。
行き成りの事に頭がついて行かない。
次の言葉が出ず、まるで鯉のようにパクパクと口を開けるだけの僕に、
顔を下げて視線を合わせてきた先生は、困ったように苦笑すると、
「だけど先生してなかったら、志村と会えなかった」
それはすっげー困んのよ、俺。そう告げてくる先生に、僕は視線を
合わしている事が出来ず、下を向いてしまう。
何ソレ。あんた国語の教師じゃなかったのかよ。
何を言いたいのか、全然判んないんだけど。
全然、判んないんだけど・・・顔が熱くなってくのは判る。
何も言えず、ただ頬を染めて俯く僕の頭に、
軽い・・・けれど熱い感触が落とされる。
「な?俺、どうしてたら良かったと思う?」
「・・・知るか、ボケ」
漸く返す事の出来た言葉に、クスリと笑う感触がした。
それに対し、先程までとは違う意味で顔が熱くなる。
変な所でやる気出しやがって!!
パン隠してカビさせちゃうくせに!!!
大体死んだような目がアンタの売りじゃなかったのかよ!!!
授業中に今のその目を見せて見やがれ!!!
湧き出てきた感情を勢いにして顔を上げ、キッと睨みつける。
「ど、どっちにしたって、今現在先生である事に変わりはないんですから、
手ぇ出さないで下さいよ!!」
すると一瞬先生はポカンとし、次に あ~、わりぃわりぃ と言いながら
僕の両手を解放してくれた。
・・・てか、笑いながら言われても、全然説得力ないですから、ソレ!!
ジーッと睨んでいると、首筋を掻きながら先生はニヤンと笑った。
「うん、だな。今、現在、先生だしな、うん」
とりあえずもう少し待ちますか~。そう言うと先生は書類が
乗っている机へと戻っていった。
いや、もう少しってどういう意味ですか。
そう聞きたかったけど、聞けなかった。
だって、聞いたらまた心臓に悪い展開になりそうなんだもん。
ホッと息を吐き、熱くなっているだろう頬を摩っていると、
途中で先生が顔だけをこちらに向けた。
「あ、ちなみに学校出たら違うから、俺。
仕事とプライベートはきっちり別ける性質なんだよね~」
「へ?」
「さ~、さっさと仕事終わらしてデート行こう、デート。
明日からは夏休みだし、色々行こうな~。
良かったな~、おい。宿題なくて。」
やる気でた~。と、何時も通りのやる気のない声で言いつつ、
肩を回している先生に、カクリと肩を落とす。
・・・もう少しって・・・本当に少しだな、おい!!!
そう思いつつも、頬の熱が収まらない僕には突っ込む事も出来ず、
とりあえずせめて今日と、そして夏休み前半ぐらいは逃げ切って
やろうと、少し乱暴に本を棚へと戻し始めたのであった。
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一万打お礼企画、第三弾。
エース様からのリクで「3Zで銀新」
い、如何なもんでしょう?前々から書いてみたいとは思っていた
3Z話ですが、いざ書くとなると・・・難しかったですι(反省)
私はあんな素敵可愛いもの戴いたって言うのに!!!(涙)
それでも、少しでも気に入って頂けたら嬉しい限りです、はいv
企画参加、本当に有難うございましたvv