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明るい日差しの中、何時もの様に関わらず傘を差し、定春と一緒に歩いて
いると、前から見たくもないヤツが一人。
本来ならば有無を言わさず跳び蹴りの一つでもお見舞いしてやるのだが、
今日は、それはなし。
・・・大人な私に感謝するヨロシ。
ハンと鼻を鳴らし違う道を行こうとした所で、呑気でムカつく声が掛けられる。
「おぅ、チャイナ~。敵前逃亡ですかィ」
「誰がそんな事するアルカ。お前と違って暇じゃないだけネ」
「なんでィ、なんか犯罪でも起こすのか?なら自首だけはすんなよ。
俺がつまんねー」
「刺繍なんて誰がするカ。そういうのは新八が得意ネ」
聞き間違いをそのままに、フンと胸を張って得意げに言う神楽。
それに対して突っ込むでもなく、沖田は意外そうに目を見開いた。
「そんな事までしてんのかィ。新八も大変でさァ。
ますます欲しくなってきたぜィ、俺専用奴隷」
「絶対やらないネ。新八は万事屋のマミーあるヨ。
口煩いしオタクなダメガネアルけど、炊事洗濯ばっちりネ」
羨ましいカ。とニタリと笑って沖田を見る神楽。
「羨ましくはねぇな。ただ殴りてェ」
そんな神楽をこちらもニタリと笑って見返す沖田。
「フン、私もそれには同意ネ。でも今日は見逃してやるヨ」
「俺は見逃す気はサラサラねぇぜィ」
そう言って沖田は足を一歩前に出し、臨戦態勢を取るが、神楽はそれを
片手を出して制した。
「・・・なんでィ。なんか悪いもんでも食ったのかよ」
沖田は眉を顰めて言うと、神楽はこれまたニタリと笑い、
「違うネ。そんなモンで調子狂う私じゃないアルヨ」
コレアル。 と言って、手にしていた小さなビニール袋を
沖田の目の前に掲げた。
ますます訝しげな表情になる沖田に、神楽は自慢げに答えを差し出した。
「新八から頼まれてお遣いに行ってきたアル。だからお前に構って
られないネ」
そう言って神楽は背を向け、万事屋へと向かって歩き出した。
それに対し、沖田はやっと納得したかのように あぁ と頷いた。
多分この少女は早く帰って新八に褒められたいのだ。
きちんと言われた事をやり遂げて、褒めてもらいたいのだ。
そしてあの少年は、お遣いをきちんとこなしたこの少女を褒めるだろう。
優しいあの笑顔で、とても嬉しそうに褒めるのだろう。
本当ならば、神楽のそのお遣いを邪魔したい気持ちで一杯だが
そうなった後、原因が自分だと判れば、きっとあの少年は怒って来るだろう。
天下の真選組隊長と言えども、彼は物怖じしない。
怒ってる表情もきっといいだろうけどねィ・・・
でも今日はそういう気分じゃねェなァ。
どちらかと言えば、向けられるのが自分でないのが
とてつもなく面白くないが、あの笑顔を見てみたい・・・
「仕方ねぇなァ。それじゃあ今日の所は見逃すって事にしといてやらァ」
沖田は一つ息を吐き、肩を上げると神楽と共に歩き出した。
「・・・なんでついて来るアルカ」
「どっかの馬鹿チャイナが犯罪起こさないように護衛してるんでさァ」
「・・・お遣いが終わったら覚悟するヨロシ」
「望む所でィ」
ニヤリと視線を交わし、そのまま歩き続ける二人と一匹。
とりあえず今は我慢してやるネ。
余分なのがついて来てるけど、それは無視するヨロシ。
ついでにその余分なのが羨むほど、私を褒めるネ、新八。