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「・・・何してるんだろ、僕」
新八はそう呟くと深々と息を吐き出した。
その日、新八は何時ものように取り込んだ洗濯を和室で畳んでいた。
まだまだ昼間の日差しは厳しいので、洗濯物がよく乾く。
それは喜ばしい事なのだが、微妙に暑い。
扇風機を回そうか・・・だがそれだと洗濯物が・・・
いやいや、微風なら大丈夫か!?
等と悩んでいると、玄関の開く音がし、次にドタドタと足音が聞こえてきた。
「あ~、あっち~」
見ればパタパタと上着を仰ぎながら歩いてくる銀時の姿が。
「お帰りなさい、銀さん。早かったですね」
「おぅ、思ったより仕事が早くすんでな。
って言うかこんな暑い中、長々と仕事なんかしてたくねぇよ。
寧ろ仕事自体したくねぇ」
「社会人として失格な発言を真面目な顔で言わないで下さい。
ちょ、こっちに向けないで下さいよ」
ドカリと新八の隣に腰を下ろし、扇風機の電源を入れる銀時に、
折角畳んだタオルが微妙に崩れてしまう・・・と、新八が
慌てて告げる。
「んだよ、折角銀さんが気を使ってやったってのによぉ」
そう言うと銀時は渋々扇風機の首を回し始めた。
風量も強風から微風に。
「・・・や、離れた所だったら別にいいんですけど・・・」
「オマエが居るのに離れるとか
意味判んないんだけど」
「いや、こっちの台詞だよ、それ」
心底不思議そうにそんな事を告げてくる銀時に、新八から
思わず呆れた声が出る。
大体扇風機の風がくるのはいいが、隣に銀時が来たせいで
なんとなく暑苦しくなった気がする。
正直にそう言ったら、オマエは何時まで反抗期を引き摺っているんだ・・・と
渋い顔をされた。
・・・あれ?僕反抗期真っ只中の年齢でいいんだよね?
引き摺るも何も、まだ真っ最中で居ていい年だよね?
「ちなみに銀さんは発情期真っ只中です」
「今すぐ枯れて下さい」
と言うか離れろぉぉぉぉ!!!と、全力で隣に居る銀時を押し離そうとしたが、
それこそ全力で無駄だった。
軽く交わされ、序とばかりに頭を軽く叩かれる。
「あ~、うるせぇうるせぇ。
判ったからちょ、寝かせろ。」
そう言うと銀時は新八の髪を軽く掻き混ぜ、ゴロリとそのまま
寝転び、新八の膝の上へと頭を乗せてしまった。
「・・・っ!ちょ、何やってんですか、アンタ!!」
「何って膝枕だよ、膝枕。
青少年から中高年、果てはご老体までが夢見る膝枕だよ。
夢見すぎてて枕に『新八の膝v』なんて名付けたくなるほどの代物だよ。
ってか抱き枕シリーズ出ねぇかなぁ、おい。
他のグッズはもう諦めるから、それぐらい出ねぇかなぁ、
新八の」
「出ねぇよ!?ってかそもそも諦めてませんからね!?
っつうか誰の願望ぉぉぉぉ!!?」
と、そんな馬鹿げたやり取りをしてる間に、
銀時は本格的に寝てしまったようだ。
現に先程まで新八の尻を触っていた手が止まっている。
・・・まぁ止まっていても、場所は未だに尻部分なのだが。
「え、何この執念深さ」
軽く息を吐き、新八は残りの洗濯物を苦労して畳む羽目になったのであった。
そして文頭の台詞となるのである。
「・・・本当、何やってんだろ、僕」
新八はボーっと銀時の寝顔を見ながら再度、ポツリと呟いた。
まだ夕飯の支度まで間があると言っても、やる事はたくさんあるのだ。
ちょっと買い物にも行きたいし、畳んでいる内に見つけた解れを繕いたい。
けれど今の状態では何も出来ない。
別に銀時を起こせばいいだけの話なのだが・・・
「こんな顔で寝られちゃぁね・・・」
起こすに起こせないや。と、新八は苦笑し、
銀時の頭にそっと手を乗せてゆっくりと撫でる。
そうしている内に、再び玄関の開く音が耳に飛び込んできた。
先程と同じようにドカドカと言う音と、ノシノシと言う音が聞こえてくる。
「おぅ、神楽様のお帰りネ。
三つ指突いてお出迎えしやがれ、コノヤロー」
「神楽ちゃん、口悪すぎ。
と言うか帰ったらすぐ手洗いウガイって言ってるでしょ」
見れば外に遊びに行っていた神楽と定春の姿が。
とりあえず何時ものように神楽へと声を掛けると、チッチッチ・・・と
小さく指を振った。
「甘いネ、新八。私を誰だと思っているネ。
ちゃんと言われる前に洗ってきたヨ、公園で」
「いや、それ意味あるの!?」
「ほんの数分の差ネ、変わりないヨ。
って言うか何イチャコラしてるアルカ」
暑苦しい・・・と、非常に冷めた目で見てくる神楽に、新八は慌てて
手を振った。
「違う違う!これはただ単に銀さんが疲れて眠っちゃって・・・」
「膝枕に手は新八の尻アル」
「・・・イチャコラじゃなくてセクハラされ中です」
「叩き起こせ」
指を鳴らしながら近付いてくる神楽に、再び新八は手を振った。
「あ、ちょっと待って神楽ちゃん。
疲れてたのは本当だし、ほら見てよ」
そう言って新八は未だ眠っている銀時の顔を指差した。
それを不思議そうに神楽が覗き込む。
そこにはゆるりと口元を上げ、まるで笑っているように寝ている銀時が。
「ね、なんかこれだけ幸せそうに寝ちゃってると
起こすに起こせなくない?」
そう言って笑う新八に、神楽は呆れたように息を零した。
「何言ってるアルカ。そんなの関係ないネ」
「え?」
「起きてても寝てても、銀ちゃんは幸せそうじゃなくて
幸せネ。私等が居る限りずっとナ、ね、銀ちゃん」
ちなみにオマエも私も同じ顔ヨ。と、神楽は体を起こしてペシリと銀時の頭を
叩くと、さっさと和室を出て行ってしまった。
残されたのは顔を赤くしたの新八と、未だ幸せそうに・・・幸せに
眠っている銀時。
その銀時の頬も、ほんの少しだけ赤く染まっていたりするのだが、
新八がそれに気付くのはまだ先のことである。
***************
リハビリがてらちょっとうっかり。
「じゃじゃ~んっ!」
その日、遊びから帰ってきた神楽は、効果音を口にしながら嬉しそうに
手にしていたモノを銀時達に見せ付けた。
「うわ、何ソレ、オマエ。
なんか滅茶苦茶懐かしいんだけど」
「ってかどうしたの、そのフラフープ」
それぞれちょっと驚きながら言葉を返してくる二人に、
神楽はフフンと得意そうに鼻を鳴らす。
「みぃちゃんが新しいの買ったからってくれたネ」
「え、大丈夫なの、それ。ちゃんと親御さんの許可取ったのかな?」
「ったく、メガネは心配性ネ。そんなんじゃ今夜禿げるヨ。
ちゃんとみぃちゃんのマミーも貰ってくれって言ってたアル」
「なんでそんな急展開!!?
禿げないからね?まだまだ元気だから、僕の毛根!」
でも良かったね、神楽ちゃん。そう言うと、神楽はニシシと笑みを零した。
そして 見てるヨロシ。 と言うと、輪の中に体を入れて
思い切りフラフープを回し始めた。
ウホホ~イッ!と楽しそうな声に、新八は微笑み、銀時も小さく笑みを零した。
「・・・しっかし本当懐かしいな。何アレ、また流行ってんの?」
ぐるぐるとフラフープを回し続ける神楽を眺めながら、ふと過ぎった
疑問を銀時が口にすると、新八はコトッと小さく首を傾げた。
「さぁどうなんでしょう?
流行ってるとかどうかより、定番ってヤツなんじゃないですか?」
玩具屋で見かけますし。そう答えてお茶を啜る新八に、
銀時はチラリと視線を向ける。
「・・・なぁ、オマエは出来んの?アレ」
ニヤリと意地悪そうに口元を上げる銀時に、新八は微かにムッとする。
「出来ますよ、アレぐらい」
「ふ~ん。」
「・・・なんすか、その顔。普通にキモイんですけど」
「ん~?別にぃ?でもそっかぁ、新ちゃん、出来るのか~」
いや~、凄い凄い。等と口にしながらも、銀時の顔はニヤニヤしたままだ。
「っ神楽ちゃん!ちょっとソレ貸してっ!!」
そんな銀時に憤ったのか、新八は眉を吊り上げたままぐるぐると
フラフープを回し続けている神楽へと近付き、手を差し出した。
「いいですか!?その死んだ目を半分でいいから蘇生させて
見ててくださいよ!?」
「ん~、あいよ~」
フラフープを構え、ビシッと銀時を指差し、本来ならムカッとして
言い返してくるような事を告げる新八だったが、
銀時はニマニマと暢気な返事を返すだけだ。
その態度に新八は益々ムカッとする。
怒りのあまり、ちょっと頬が赤くなっていたりするのだが、
それがまた銀時のニヤケ顔を助長する。
そんな銀時を視界に入れないよう、
新八はじっとフラフープを見詰めると、ホッと小さな掛け声と共に
勢い良くフラフープを回した。
「フッ・・・ホッ・・・」
クルクルと腰を回してフラフープを操る新八。
最初は中々勘が戻らず、難しい顔をして回していたが、
その内にだんだんとコツを思い出したのか、リズム良く腰を回し始めたのであった。
「あ~、やっぱりちょっと難しいですね。
でも出来ましたよ、銀さんっ!」
見てましたか?と、止めたフラフープを手に、少しだけ息を弾ませて
ニコニコと銀時へと顔を向ける新八だったが、
そこに居たのはソファの上で前屈みで蹲る銀時と、
それを冷たい視線で見詰める神楽。
「って銀さん!!?ちょ、どうしたんですか?
っつうか鼻血!!神楽ちゃん、ティッシュ取って、ティッシュ!!」
慌てて銀時の元へと近寄り、取って貰ったティッシュを渡す。
「本当どうしたんですか、一体。
チョコでも食べ過ぎました?」
心配そうに銀時の背中を撫でる新八に、銀時はティッシュで鼻を
抑えながら緩く首を振った。
「いや、あらぬ妄想が目の前を過ぎって・・・」
「そこはチョコ食べ過ぎたって言えよぉぉぉ」
なんですか、あらぬ妄想って!!そう言ってティッシュ箱を床に
叩きつける新八に、神楽が呆れた声で答えた。
「なんか知らないけど、新八がフラフープやりだしたら
段々と銀ちゃんの体が前屈みになっていったネ」
でも視線だけは逸らさなかったヨ。その神楽の言葉に、
当ったり前だ!!と銀時は体を起こした。
「だってオマッ!あんなレア映像、早々に見られるもんじゃねぇぞ!?
グィングィン一生懸命腰回して、ほっぺた赤くして、
尚且つ息弾ませて・・・っ!!」
「フラフープやってただけだろうがぁぁ!!!」
変な言い回ししてんじゃねぇ!と、新八は器用にフラフープを回し、銀時へと強烈な
打撃を与えたのであった。
その後、万事屋内でフラフープ禁止となったのは言うまでもない。
***********
バトルモーションはサンデー様で(コラ)
神楽は何時ものように遊びに、そして新八は買い物へと出掛けてしまった。
定春は春の陽気に誘われてかスヤスヤおネムだ。
・・・いや、何時もか、それ。
なんか考えてみればアイツ、寝過ぎじゃね?
散歩に行くぞって言っても、耳動かすだけだしよ。
誰に似たんだかダラケ過ぎじゃね?
いや、別に俺もそんなに散歩に行きたい訳じゃないけどね?
新八が言うから仕方なく行こうとしてるだけだからね?
だから定春が動かなくても全然いいから。
寧ろ大助かりだから、銀さん的にはっ!
神楽が一声掛けただけで動き出す定春を見たって、
手間が省けたな~。って感じなだけで?
別に新八達に 使えねぇなぁ。 なんて目でなんか
見られてないからっ!
・・・あ、やべ。なんか篭りたくなってきた。
別に全く意味なんてないけど、篭りたくなってきた。
まだ冬終わってねぇのか?これ。
ってか冬眠する体質だったかな、俺。
ポケッとソファに寝転びながら、ぼんやりと考えて見る。
・・・あ、したな、俺。冬眠。
寧ろ春夏秋冬するな、俺。
・・・よし、しよう。
今しよう。直ぐしよう。とっととしよう。
別に拗ねてる訳じゃないからね、これ。
定春に相手にされてないからとか、新八に置いてかれたからとか
そう言うのじゃ全然ないから。
単なる冬眠だからね、これ。
や、もう春だから春眠か?
ま、どっちでもいいや、どうせやる事ねぇし。
・・・・一人だし。
って事で・・・と近くにあったジャ○プを顔に被せ、目蓋を閉じた。
あれからどれだけ時間が過ぎたのか、階段を上がってくる賑やかな
足音と声に意識が浮上した。
どうやら二人一緒に帰ってきたらしい。
・・・別にずるいとか思ってないからね、銀さん。
そうこうしている内に、豪快に玄関の扉が開く。
その音が扉の悲鳴に聞こえるのは俺の気のせいか?
「ただいまヨ~。定春、ちゃんと銀ちゃんのお守りしてたアルカ?」
「おいコラクソガキ。誰が誰のお守りだって?
外から帰ってきたんだし、まず顔洗って出直して来い」
ムクリと起き上がり、俺の隣を横切ろうとしていた神楽の頭に
チョップを食らわす。
「いや、まず洗うのは手ですよね。
神楽ちゃん、そしたらおやつにしようね」
新八の言葉に。神楽がキャッホーと雄叫びを上げながら
洗面所へと走っていった。
と言うか、それなら新八はまず何より先に
俺にただいまのチューをするべきだと思いますが?
手洗いで風邪防止する前に、
まず倦怠期を防止しなければいけないと思いますっ!
あ、やべぇ。俺今すっげぇいい事言ったんじゃね?
もう全国的な標語でよくね?これ。
って事で、坂田家家訓に新しく付け加えておこう。
「そう言えば銀ちゃん。知り合いにマダオ臭撒き散らしている
おっちゃんって居るアルカ?」
そんな事を考えながら、ソファに座りなおしていると、
プラプラと手を振って水気を切りながら居間へと戻ってきた
神楽にそう聞かれた。
「あぁ?オマエこんな素敵銀さんに
そんなむさ苦しい知り合い、居る訳ねぇだろ」
っつかちゃんと手を拭いてから来いっ!そう言うと神楽は
不思議そうに首を傾げた。
「なら友達に居るアルカ?」
「え、何で身近にランクアップ?
居ねぇよ、ダチにも」
「・・・銀ちゃん・・・大丈夫アルヨ。
孤独と絶望だけはきっと友達アル」
「神楽ちゃんんんん!!?
ちょ、人の話聞いてたぁ!?別に友達が居ない訳じゃねぇからね?
銀さん、人気者だから。街を歩けば声掛けられまくりだからっ!
っつうかそんな友達はいらねぇぇぇ!!!」
生暖かい目でとんでもない事を口走ってくる神楽に
突っ込みを入れる。
や、本当ウソじゃねぇから。
まぁ半分くらいはツケの催促だったりするけど。
・・・あれ?って事は、半分は『絶望』カテゴリー?
あ、でも『孤独』はねぇからっ!
だってアレじゃん?少なくともオマエ等は居る訳じゃん。
だから・・・って目を逸らすな、そこぉぉぉ!!!
生暖かい眼差しでもいいからこっち見ろよぉぉぉ!!
「こら、神楽ちゃんそんな事言っちゃ駄目でしょ?
マダオ臭だなんて銀さんの友達に失礼だよ」
お茶と煎餅を持って居間へとやって来た新八が神楽を諌めた。
「え、そっち?
銀さんも普通に失礼な事言われまくってたんだけど」
「で、お知り合いですか?そんな方。」
「あれ?新八君ってツッコミだったよね?」
「私達、知らない顔だったヨ」
「全スルーかテメェ等!!
っつうかマダオ臭だけで判る訳ねぇだろっ!」
呑み屋のヤツ等はそんなのばっかだよ!
そう言えば新八達は 確かに・・・ と言った感じで
頷いていた。
・・・あれ?やっぱ俺、碌な知り合いいなくね?
まぁいいや。深く考えるのはよそう。と、煎餅に手を伸ばす。
「で?それがどうかしたのか?」
そう聞くと二人はキョトリとした顔でお互いの顔を見ると、
「遊ぼうって誘われたんで」
と簡潔に答えてきた。
「・・・・・・・なんで」
「遊びたかったんじゃないですか?」
「や、だからなんでよ」
だって考えてみ?大人だろ?そう言って来たの、おっさんだろ?
しかもマダオ臭バリバリな!
普通に考えてなくね!?その状況!!
っつうか完璧不審者じゃねぇかぁぁ!!
そう言えば二人してコトンと首を傾げた。
「でも近藤さんも時々そう言いますよ?
顔の腫れが引くまで屯所に帰れないからって」
「マダオもそうネ。
気を紛らわしてないと泣きたくなるからって」
「桂さんもそうだよね。
ってかあの人は勝手に遊んでくよね」
「黒モジャはお土産持ってくるからいいヤツヨ。
迎えも早いし」
「そう言えば山崎さんとはきちんと遊べてないな~。
ミントンやろうとすると、大抵土方さんが来るから」
・・・とまぁ出てくるわ出てくるわ・・・
え、何ソレ。銀さん全然知らないんだけど。
何?何時もそんなに遊んでんの?銀さん抜きで?
っつうか辰馬って・・・来た事も土産も知らないんだけどぉぉ!!?
本当、テメーはもうOPEDだけでいいって
言ってんのによぉぉぉ!!!
・・・駄目だ。こいつ等を二人きりにしちゃ駄目だ。
世の中不審者で溢れまくってるわ、本当。
しかもこいつ等、警戒心全くねぇし。
俺は深々と溜息を吐いて、今後はそんな不審者共とは関わらない
様にと説教をした。
・・・て、なんでそんな不満そうなんだよ。
いいじゃねぇか、別にそんなんと遊ばなくったってよ。
っつうかそんなに遊びたいなら、代わりに銀さんが遊んでやらぁ!
そう言った時の二人の目といったらっ!
「「や、不審者とは遊んじゃ駄目って言われてるんで」」
「言った本人なんですけどぉぉ!!?」
****************
お久しぶりな更新な上グダグダですみませんι
まぁグダグダは何時もの事ですが(コラ)
ちなみに不審者が出たのはウチの近所です。
本気でやめてくれ・・・orz
・・・なんで物って探してもない時があるんだろう。
「新八~、ハンカチどこアルカ?」
ごそごそと棚の中を漁っていると、神楽ちゃんの暢気な声が
背後から掛けられる。
・・・訂正、なんで人って自分で探そうとしないんだろう。
・・・いや、ここの家の人達だけか・・・
僕はヒクリと頬を引き攣らせながらも、背後に向かって
少し大きめに返事をする。
「箪笥の引き出しの中だよっ!
何時も其処に入れてるでしょ!!」
少しは自分で探しなさいっ!・・・と言って見るが、多分無理だろう。
第一・・・
「お~い、新八~。爪きりまだぁ?」
一番の大人からしてこうだからね、ここっ!!
ダラダラとした雰囲気がこちらまで漂って来そうな銀時の声に、
新八の頬はまたヒクリと動く。
「まだですよっ!ってか最後に使ったの、銀さんでしょ!?」
ちゃんと元に戻しました!?そう聞き返すと、ん~?と曖昧な声が
返ってきた。
あぁ、チキショウ。絶対元に戻してないよ、あの人。
カクリと肩を落とし、僕は銀さんが爪を切っていた場所を
思い出しながら、爪切りの居場所を予想する。
あの調子だと、切った場所から然程離れていない所に放置
したのだろう。
そう思い、デスクの周りを見てみると・・・案の定、爪切りは
ジャン○タワーの狭間に鎮座していらっしゃった。
ちなみに今の銀さんの居る所は、その直ぐ横。ソファだ。
「・・・銀さん・・・」
「お、あんがとさん。」
「どう致しまして・・・じゃなくて、もう少し自分で探そうとか、
ちゃんと元に戻しておこうとか・・・」
「新八~」
呆れた顔で銀時に爪きりを渡す新八に、再び神楽の声が
かかる。
「私のハンカチはまだカ?」
「・・・箪笥の引き出しだって言ったでしょ?」
「甘いネ、新八。何時も同じだとつまらないから、
この間色々と入れ替えてやったネ」
「え、ちょ・・・はぁ!?」
とんでもない発言に、勢い良く振り返ればとてつもなく満足気な
笑顔の神楽が酢昆布片手にこちらを見ていた。
え?なんでこんな満足気なの、この娘。
ってか何してくれてんの、この娘ぉぉぉ!!!!!
慌てて箪笥を見てみれば、僕の記憶していたものがウソだと言うように
・・・いや、この場合神楽ちゃんの言葉が本当だと言っているように、
それまでと全く違うものがそれぞれ入っていて・・・
「ちょ、本当に何してんのぉぉ!!
しかも微妙にグチャグチャになってるしっ!!」
とりあえず引き出しを開けては中のものを取り出していく。
うわ・・・本当に色々と入れ替わってるよ。
普段洗濯物を箪笥にしまってくれって言っても動かないくせに、
なんでこう言う所だけはちゃんと動くかな!?
「な~、新八ぃ~。ハンカチまだカ?」
「あ、新八ぃ、古新聞どこ?」
そんなサカサカイライラと手を動かす僕に、またもや暢気な声が掛けられた訳で。
「アンタ等、少しは自分で動けぇぇぇぇ!!!」
次の瞬間、僕の怒鳴り声が万事屋に響いたのは言うまでもない。
「で、あの騒ぎだったって事かい」
カウンターの向こうでお登勢さんが呆れ顔で呟き、僕は申し訳なさそうに
肩を小さくした。
「ご迷惑をお掛けしまして・・・」
その言葉に、お登勢さんは深々と溜息を吐き出した。
「まぁう慣れたけどね、あの程度の騒音は。
しかし・・・どうしようもないねぇ、あの二人は」
「本当ですよ。」
お登勢さんの言葉に、今度は僕が深々と溜息を吐いた。
あの後どんなに怒っても、結局僕が全部探し出したのだ。
本当、なんであんなに人任せなんだろう・・・
・・・まぁ僕がつい手を出してしまうのが悪いんだろうけど。
だからと言って、あの二人も任せすぎだと思う。
「少しは自分で動こうって気にならないんですかね」
もう一つ溜息を吐いて、出してもらったお茶を一口飲み込む。
それと同じタイミングで、勢い良く店の扉が開かれ、
一瞬ビクリと体が震えてしまった。
あまりの勢いに何事だ?と振り返れば、そこにはちょっとだけムスッとした
顔の銀さんが。
「や~っぱりここに居やがったか・・・
お~い、神楽ぁ。新八見付けたぞ~」
銀さんが外に向けてそう言うと、大きな足音と共に神楽ちゃんの
マジでカ!?なんて声が聞こえてくる。
あれ?定春も一緒なのかな?
そう言えば散歩に行くって言ってたっけ。
でも、何で戻ってくるんだろ。
「どうかしたんですか?」
不思議に思って聞くと、銀さんは後頭部をかきつつ小さく息を零した。
「どうしたじゃねぇだろ。ったく、黙って居なくなるんじゃねぇよ。
探しちまっただろうが」
「え、探したってなんで・・・」
「あのよ・・・トイレットペーパーの替え、どこだっけ?」
「・・・・・・は?」
真剣な顔で言うもんだから、急用なのかと思ったのに・・・
今、何て言いやがった、この天パ。
「あ、本当に居たネ、新八!!
私のお財布、どっか行ったアル、早く探すネ!!」
このままじゃ酢昆布が買えねぇんだよぅ!!
銀さんの発言に頬を引きつらせていると、今度は神楽ちゃんが
飛び込んできてそんな事を言う。
いや、そんな泣きそうな顔しても知らないから。
って言うか昨日も同じような事言ってて、結局自分のポケットに
入ってたじゃん!!
・・・っつうか・・・
「僕を探す前に自分等で探せぇぇ!!」
なんて怒鳴り声が響き、再びお登勢さんに迷惑を掛けてしまったのは・・・
言うまでもない。
**********
でも新八だけは自力で探す旦那と娘です。
その夜、テレビに映っていたのは少し前に流行ったコテコテの
ハリ○ッド映画だった。
所謂派手でお約束満載なアレだ。
そんな中、主役の野郎が、これまた何度となく何処かで聞いた事のある
台詞を恥ずかしげもなく披露していた。
・・・オマエの為なら死ねるってオマッ・・・
そんな事言っといて死んだ事ねぇだろ、これ。
っつうか死ぬ気もねぇだろ、それ。
モブキャラなら即死亡フラグだけど、主役級は生存フラグだからね、本当。
もう大体ラストが予測出来たな・・・なんて思いながら見ていると、
向かいのソファに寝そべり、一人で占領していた神楽がボソリと呟いたのが
聞こえた。
「・・・銀ちゃんもアレネ」
・・・や、何が?
そんな俺の疑問に気づく事もなく、今度は隣に座っていた
新八が頷いて答えた。
「あ~・・・確かにね」
・・・だから何が確かに?
何?この俳優が俺に似てんの?
馬っ鹿、お前等。よく見てみ?
相手はハリ○ッド俳優様よ?
失礼極まりまくりじゃね?
どう見たって銀さんの方が上だろうがよ。
もう何倍も。
全くよ~・・・なんて背凭れに体を預けて言ってみたらば、
ものっそく残念な目で見詰められた。
え?なんでそんな目で見てんの?
銀さん、何も間違ったこと言ってないよね。
正しい事しか言ってないよね?
ほら、よく見てみって!!
そうすりゃ真実が見えてくっから!
「見れば見るほど切なくなるからやめましょう。」
「え、何で?」
「聞いたら駄目ヨ、銀ちゃん。
真実をオブラートに包んで話せるほど、
まだ私達は経験値を積んでないネ」
「どんな真実ぅぅぅぅ!!?」
そう叫べば、俺的には鋭い刃物の様な真実だと告げられた。
なんだその妙な気遣いと生暖かい優しさっ!
言えよっ!言っちまえよっ!
そんな簡単に銀さん、傷付いたりしないからっ!
もう既に血みどろだけどね、その言葉でっ!!
なんなんだよもう。
じゃあ何がアレなんだよって話だ。
え?言ってみ?ホラ、言ってみって。
本当はアレなんだろ?恥ずかしくて誤魔化しちゃったけど、
実は・・・みたいな?そんな感じだろ?
判ってるって、オマエ等本当ツンデレなっ!
・・・って温度ひくっ!!
何その視線!まさに極寒、ツンデレ地帯なんですけどぉぉ!!!
あ、違うから。今の別に間違えた訳じゃないから。
あれ?ちょっと難しかったかな?
だから今のはさ~、こうツンデレと・・・っておいコラ新八!
オマエ判ってんだろ!
判ってたら突っ込めよ!小さいボケもちゃんと拾ってけよ!
銀さん、大火傷しちゃったじゃねぇかぁぁ!!!
「やですよ、巻き添え食いたくないですもん」
「ざけんな。俺とオマエは既に一蓮托生。
死なば諸共だコノヤロー」
そう言って新八の肩へと腕を回し、頭を抱え込んでやれば
ウソばっかりネ。なんて呆れた声が神楽から聞こえてきた。
あ?なんだそりゃ。
いつ銀さんがウソなんか吐いたよ。
「銀ちゃんはさっきのヤツと一緒ヨ。
簡単に一人で命、捨てそうアル。」
「あ?んな訳ねぇだろ。
言っとくけどアレだよ?銀さん、まだまだ死ぬ気ないから。
まだ色々としてない事いっぱいあるからね?
主に新八関係で。
それが叶うまで・・・っつうか満足するまで
全然死ぬ気ないから。
未練たらたらだから、本当」
「プラス妄想で執着ですね、判ります。」
神楽の言葉にそう返せば、ドスッと勢いのある拳を
新八から鳩尾に頂いた。
ちょ、オマ・・・・っ!!
痛さに悶えていると、俺の腕の中から逃げ出した新八が
軽く首を回しながら呆れたような顔でこちらを向いた。
「っつうかそれこそウソでしょ。
アンタ、結構簡単に僕達見捨てますよ、きっと」
・・・おい、ちょっと待て。
なんでオマエ達を見捨てる話になってんだ?
俺が命を簡単に捨てるって話じゃなかったっけ?
いや、捨てないけどね?捨てねぇけど・・・
俺の命とオマエ等の命なら、オマエ等のが
残ってた方がいいなぁ、やっぱ。
あぁ、そう考えて見るとさっきのありきたりヒーローに
親近感を覚える。
映画と違って、こっちだと完璧死亡フラグだけどな。
まぁそれでもいいやな。
コイツ等が生きてんなら。
その方がずっといい・・・
ぼんやりと、そんな絶対口に出せない事を考えていると、
深々とした溜息が二人分、耳に入ってきた。
「言っときますけどね、僕は違いますよ。
どんなにアンタが危険な目にあっても、
僕の命でアンタが助かるって言われても
命捨てようとは思いませんから。」
「私もネ。
誰が銀ちゃんの為に死ぬか、コノヤロー」
・・・え、何コレ。
ちょ、酷いんだけど。酷過ぎるんだけどォォ!!?
や、別にいいんだけどよ!?それで良いんだけどよ!?
寧ろそうして欲しいんだけどよ!?
でもあの・・・・えぇぇぇぇぇ!!!?
あまりの衝撃発言につい呆然としてしまう。
そんな俺に構わず、新八達は ね~。等と同意しあってて・・
ちょ、待って。本気で待って。
既に死にそうなんだけど、銀さん。
主に心が断末魔の悲鳴を上げてるんですけどぉぉぉぉ!!!
これ以上聞きたくなくて思わず新八へと手を伸ばすが、
僅かに届かず、再び新八は言葉を続けた。
・・・ツンデレ。そうツンデレだ。
ツンデレだからこその言葉だ。
ツンデレツンデレツンデレツンデレ・・・・
「だってそうでしょ、死んだからって絶対にアンタが助かるって
保障、何処にあるって言うんですか。
死んだ後、アンタが幸せににるって保障、何処にあるんですか。
だから僕等は絶対死にませんよ。
責任感強いんで、ちゃんと生きて、最後までアンタの面倒見てやります。」
「その通りネ。
銀ちゃんみたいな物臭マダオの面倒なんて私達以外
誰もみれないヨ。」
だから銀さん。
ツンデレ呪文を必死に唱えていた俺に、二人はニカッと笑顔を向けると、
「だからアンタも最後まで面倒見られてくださいね」
「勝手に死んだら承知しないアル」
等と宣言してくれた。
どうやら俺の生存フラグは、こいつ等と出会った瞬間に確立されてたらしい。
・・・や、今現在幸せすぎて死にそうだけど。
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リハビリがてらちょっと初心に帰ってみました。
ウチのお子様達は常に前向きなツンデレです。