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銀魂(新八中心)の同人要素満載のサイトです。 苦手な方はご注意を。
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寒くなったな~、本当。

ボソリと呟きながら、今日も新八は万事屋の台所で食器を洗っていた。
一応食事当番は決まっているのだが、後片付けは大抵新八だ。

銀時は『後で序にやる』と言って、次の食事の用意の時まで
漬けっぱなし。

銀時曰く、漬けとけば頑固な汚れも落ちやすくなるし、
作る時にも洗い物が出るのだから、その時にやれば効率が良いらしい。

なんとなく判るが、新八としては理解出来ない。
頑固な汚れも・・・と言うのは確かにその通りだと思うが。
主に脂分のつく料理なんてここのトコ久しく食べてないのだから、
漬けてなくても変わりないと思う。
何より、汚れ物がそのままと言うのが許せない。

神楽はと言うと、一応やろうとしてはくれていたのだが、
何故かその時、台所が泡に占領された。
その上食器が壊滅寸前に追いやられた。

結果、二人の当番の時も、後片付けは新八・・・と言う事に
なってしまったのだ。

別に家でもやってる事だし、何より精神的に自分がやった方が
遥かに楽だ。
でも・・・

「この季節の時だけはな~」

一つ、小さな息を落とし、冷たい水と格闘しつつ皿を洗う。

夏場だったならこの冷たさは大歓迎だ。
涼を得る為のモノが団扇と扇風機・・・と言った万事屋では、
こうして水で涼を得る事が出来るのは願ってもない事だ。
寧ろ嬉々として洗いに来る。

だが、冬場は・・・

今はいい・・・今はまだ。
だが、これが真冬となった瞬間、涼を得る為の道具は
軽く凶器なる。

もう冷たいとかじゃなく・・・痛い。

「・・・早く春、来ないかな」

「まだ本格的な冬、始まってないんですけど?
何?時代先取り?やめとけやめとけ、大抵失敗すっから、そう言うの」

独り言の筈だったのに、言葉が返ってきてちょっとびっくりする。
顔だけ振り向いてれば、冷蔵庫からイチゴ牛乳を取り出している
銀時が居た。

「銀さん、いい加減にしないと時代先取り所か
寿命先取りされちゃいますよ?」

第一僕のは今の状況における単なる願望です。

そう言うと新八は再び洗っている食器へと視線を落とした。

・・・うぅ、やっぱり冷たい。

「え?何、オマエそんな寒がりだったっけ?」

新八の言葉に少し不思議そうにしながら、コップを出す為新八の隣へと立つ。
そのコップを、また洗い物が増える・・・と嫌な顔をしながら、
新八が銀時に告げる。

「別に普段は違いますけどね?今は特別です」

ほら。と言って、新八は濡れている手を銀時の頬へと押し当てた。
その瞬間、銀時から妙な声が漏れて肩がビクリと上がった。

「ちょ、オマそれ凶器!?」

「諸刃の剣ですが」

銀時の顔が一瞬青褪めたので、新八の気分が少し浮上した。

ざまぁみろ。

「ってか銀さん、僕瞬間湯沸かし器が欲しいです」

微かに緩んだ頬だったが、皿洗いを再開すればそれも終わる。

冷たい、冷たい・・・と思いながらも、そう希望を口に出して見る。
が、銀時は微妙に眉間の皺を寄せた。

「・・・んな金、あると思うのか?」

「なら働いてくださいよ」

「え?銀さん、死ねって言われてる?」

「いや、だから働けって言ってるんですよ」

何言ってんですか?と訝しげな顔を向ければ、真剣な顔の銀時が居て、

「いや・・・なんか最近、働いたら負けって言うか、
死ぬって思ってる
から、銀さん」

「おぉぉぉいっ!!それアレだからっ!
完璧アレになりつつあるからぁぁ!!!」

アホかっ!と、今度は少しだけ水を掛けて見る。
すると笑えるぐらい大袈裟に体を捻って避けた。

・・・全く、冷たいイチゴ牛乳がガンガン摂取する癖に・・・

まぁいいや、これで洗い物も終わりだ。
銀さんが使うコップは自己責任で片付けてもらおう。

ってか片付けてなかったら、水風呂に叩き込んでやる。

新八はそう固く誓い、蛇口を閉める。

と、その手を不意にギュッと銀時が握り締めた。
そして序にもう片方の手も掴むと、ペタリと自分の頬へと
押し当てた。

瞬間、伝わってくる暖かさ。

「・・・銀さん?」

何やって・・・と言う前に、銀時は新八の手の冷たさに一瞬目を
固く瞑り、そしてそのまま顔を下へと俯かせた・・・が、

それでも離れない銀時の手と頬。

冷たいだろうに何をやっているのか。

手を離してくれともう一度新八が銀時の名を呼ぶと、
まぁアレだ・・・と、声が聞こえてきた。


「湯沸かし器は無理なんで、とりあえずホカホカ銀さん触り放題って事で」


許してくんね?

そう言ってニヤリと笑う銀時に、
新八はパチパチと目を丸くし、そして苦笑を浮かべながらも
仕方ないですね。・・・と受け入れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、ちなみに年中無休、寧ろ永久使用でよろしくお願いします。


・・・返品は・・・


勿論不可で。

***********
多分返品されても押しかけて来ます。


・・・て事でなんとか帰ってきました♪

拍手[18回]

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ツいてない日ってのはとことんツいていないもので。
そのツいていない日ってのが、どうやら今日だったらしい。

すっかり人気のなくなった暗い夜道に一人、
俺は近くに転がっていた空き缶を力任せに蹴り上げた。

 

 

「ったく、何が新台入れ替えだってぇの」

全然出ねぇじゃねぇか。ぼやく俺の体を、すっかり
肌寒くなった風が通り過ぎていく。
・・・序に俺の懐も通り過ぎて行ったようだ。

お陰で滅茶苦茶寒い。

ってか本当何なんだ。
新台だってんだから、もう少し出してもいいんじゃねぇか!?
っつうか出すだろ、普通。
なのにオマ・・・一回も来ねぇってどうゆう事?
しかもなんで周りの奴等皆出してて
俺の所だけ出ねぇの!?

あ~、止めた。もう止めた。
だってなんかもう出る気しねぇもん。
当たる気、全然しねぇもん、もう。

朝一で行ったと言うのに、とんだ有様だ。

とりあえず少しでも元を取ろうと、滅茶苦茶トイレに行ってやった。
普段手も洗わないのに、石鹸までガンガン使ってやった。
ザマァミロ、コンチキショー。

で・・・だ。
すっかり寒くなった懐の変わりに温まろうと呑みに行ったら
行ったで、偶然長谷川さんと顔を合わせてしまった。

まぁどうせ同じような状況だろう・・・と愚痴を言い合おうと
思ってたのに・・・

「とんだ裏切り者だぜ、あのヤロー」

大きく舌打ちを打って、今度は近くにあった石ころを蹴飛ばす。

どうやら長谷川さんは大勝ちしたらしい。
酷く上機嫌な上、一杯ぐらいなら奢るよ?なんて言ってきやがった。

まぁ?俺ってば大人だから?
素直に長谷川さんの勝利を喜んで、奢ってもらったけどね?

文字通り『いっぱい』

最後はなんか泣きながら潰れてたけど、無視して置いて来た。
敗者は黙って去るのみってな。

そんなこんなで体は温まったが、やっぱり懐は寒いままだ。
しかも微妙に心にダメージ負ったし。

畜生、あれぐらいじゃ精神的慰謝料には程遠かったな。
本当、やってらんねぇ。
全く、神も仏もあったもんじゃねぇなぁ、おい。

いっその事、もう一回戻ってのみ直してやっかな。

あぁ、でも引き返すのも面倒臭ぇ。
しかも待ってるのがマダオの寝顔だなんて冗談じゃねぇ。

と、そこまで思っていた所で、不意にある事が脳裏に浮かんだ。

神も仏もねぇ。・・・でも天使は居るんじゃね?

特に坂田さんの家の中とかに。



 


そうだよ、こんなツいてねぇ日は、天使の顔でも拝んで
心癒されなくちゃな割りにあわねぇ。

そう思う俺の足は、先程までとは違って跳ぶように軽い。

時間は既に日付が変わった遅い時間。
これなら多分、余裕で天使の顔が拝めるはずだ。

押入れの中のは・・・覗いてる気配で起きられると
天使が修羅へと変わるから我慢しておこう。

もう一人は・・・確か今日は泊まると言っていたから
和室に居る筈だ。
よし、寝る前に存分にその天使のような寝顔を見て癒されよう。
ってかもうアレだね。天使のような・・・じゃないね、アレは。

天使そのものだよ、もう。

序に酔ったフリして布団に潜り込んじまうかな~。
あ、違った。フリなんかじゃなくて本当に酔ってんだっけ、俺。
ならいいんじゃね?
潜り込んでもセーフじゃね?

「あ~、最後の最後で運が回ってきたかも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


・・・なんて考えてた俺が馬鹿だった。

「ちょっと、聞いてんですか!?」

浮かれ気分で帰って来た俺を待ってたのは、天使の寝顔ではなく、
仁王立ちする修羅のようなお顔で。

寝顔を覗き込む筈が、正座させられて上から見下ろされて。

「全く、朝から珍しく出かけたと思えば
こんな時間まで帰らずにフラフラと・・・どうせパチンコで
すってきて憂さ晴らしに呑んでたんでしょ!」

アンタ、ウチの経済事情判ってるんですか!?なんて
説教を受けてたりします。

誰だよ、運が回ってきたとか言ったヤツ。
回ってきたも何も、止まらずにそのまま何処かに行っちゃったんですけど!?

あ~、凹む。凹むわ、コレ。

俯いて肩を落としていると、頭上から大きく溜息が落ちてきた。

序にコブシも落ちてくるか!?なんて気構えていると、
予想外にペシンと優しい感触が落ちてきた。

その感触にポカンとしたまま顔を上げると、眉を顰めたまま
口元を曲げている新八が居て。

「せめて連絡ぐらい入れて下さいよ」

子供じゃないんだから。そう怒ったように告げてくるが、
新八の手は優しくそのまま俺の頭を撫でていて。

・・・ってかよ、子供じゃねぇんだから
連絡ぐらいしなくてもいいだろ。

とかも思ったが、変わりに口から出てきたのは
 
『悪ィ』 

の一言。

次の瞬間、新八の顔にやんわりとした笑みが浮かび上がり、
俺の心はホコリと温かくなった。

 

 

 

 

 

ま、どんなにツいてなかろうが、新八が居る限り
それで全部チャラになるって事だな。

*********
新八が居るって事で全てが本気で羨ましい今日この頃・・・

・・・また負けたんだぜorz

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「来たネ!!」

神楽はそう叫ぶと、勢いよく体をソファから起こした。
それに和室で洗濯物を畳んでいた新八が小首を傾げる。

「どうしたの、神楽ちゃん」

「どうしたもこうしたも高架下もないネ!
来たアルヨ、新八!」

新八に詰め寄りながら興奮気味にそういい募る神楽に、
暫しの間耳を澄ませたりしてみたが、気になる音等何もしない。

「えっと・・・何にも聞こえないんだけど・・・」

「あぁ!ちょっと遠くなったアル!
急ぐネ、新八!!」

一体何が聞こえたのか。それを神楽に聞こうとした新八だったが、
全てを言い終える前に神楽に腕を取られ、そのまま
引っ張り上げられてしまう。

「ちょ、神楽ちゃん!?」

「追いかけるネ、新八!!行くよ、定春!!」

そのまま走り出す神楽の声に わん。 と吼えると、
定春も大きな体をのそりと上げ、続くように万事屋を飛び出したのだった。

「ぁぁあああ!!洗濯物がぁぁ!!!」

・・・と言う悲痛な叫びを残して。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・で、何なの、一体・・・」

どれだけ走ったのか、漸く立ち止まった神楽に何とか腕を離してもらい、
その場に力なく蹲った新八は、どうにかそれだけを言葉に出した。

ってかどんだけ遠くの物音まで聞こえてんだよ。

本当はそんなツッコミも、心底入れたかったのだが。

だが、神楽は聞こえていないのか、手を翳してキョロキョロと
周囲を見渡している。

「・・・ちっ!もういないネ。
全く、新八がグズグズしてるから逃がしたヨ!」

本当、使えねぇヤツアル。小さく舌打ちをし、冷たい視線を送る神楽に、
新八の頬がヒクリと動く。

「いや、だからさ、何を・・・」

「あ、今度はあっちから聞こえて来るネ!」

行くヨ、新八!!新八が言い切る前に、神楽は何かに弾かれるように
顔を上げると、また新八の腕を取り、そのまま走り出した。

「だから人の話を聞けぇぇぇぇ!!!」

・・・そんな切実な叫び声を再び残して。

 

 

 

 

 

 


「ちょ・・・本気で待って・・・」

あれからどれだけ同じ事を繰り返したのか。
既に残りのライフゲージが点滅しかかってる新八が、
息も絶え絶えそう呟く。

「何アルカ、新八。
ちょっと走ったぐらいで情けないネ」

「いや・・・ちょっとって・・・」

呆れた顔で見返してくる神楽に、新八はガクリと肩を落とした。

はっきり言うがちょっと所ではないし、何より自分は走っていない上
強制的に引きずりまくられていたのだ。

人々の好奇な視線も痛かったが、
そこら辺にぶつけまくった体全体が非常に痛い。
心臓なんか、悲鳴所か絶叫を上げ続けている。

だが、今回はまた直ぐに出発・・・と言う事はないようだ。

新八は深く息を吸い込みながら、目の前でキョロキョロと辺りを
見回し、首を傾げている神楽へと視線を向けた。

「・・・で?本当どうしたの、神楽ちゃん」

来たって言ってたけど、追いかけてるし。新八が問い掛けると、
神楽はきょとんとし、次にニンマリと口元を緩めた。

「焼き芋屋ネ!今年初めての焼き芋屋ヨ。
さっき聞こえて来たアル」

神楽の言葉に、新八は頬が引き攣るのを感じながらも
成る程・・・と納得してしまった。

そう言えばお妙も、どんなに離れていてもその声にだけは
敏感だった・・・と思い出しながら。

お陰で何度、走りに出された事か・・・

いや、それでもこんなに長距離を走らされた事はないけれど。
・・・多分。

・・・と言うか、これだけ執拗な神楽の追跡を
振り切っているとは、一体どれだけのスピードで走っているのだろう。
商売する気あんのか、焼き芋屋。

そんな疑問が沸くが、その前に一つ、神楽に言っておかなければ
いけない事に気付いた。

・・・非常に言いづらいのだけれど。

新八は未だ耳を澄ませている神楽に一つ大きく深呼吸をすると、
重い口をそろそろと開いた。

「あのさ、神楽ちゃん。
それを追いかけるのはいいんだけど、
僕・・・お財布持ってないよ?」

そう、自分は何も知らされず連れ出されたのだ。
辛うじて草履は定春が咥えて来てくれたけど、その他は
何も持っていない。

と、言う事は・・・だ。
例え神楽の希望通り焼き芋屋を見つけられたとしても、
ただそれだけで買う事は出来ない・・・と言う事だ。

そう告げると、神楽は驚愕の表情を浮かべながら
口をパクパクと動かした。

そしてプルプルと震えていたかと思うと、突然

「何やってるアルカァァァ!!!」

と叫んだのであった。

その大声に、思わず耳を塞ぐ新八。

「何って、何にも言わずに連れ出したのは神楽ちゃんでしょ?」

僕に文句を言わないでよ。呆れた様に告げる新八に、神楽は
ズイッと近寄ると、勢い良くその肩を掴んで揺さぶり始めた。

「そんなんだからオマエは何時までたっても新一にはなれないんだよぉぉ!
もっと先を読めヨ!
秋に乙女と来たら焼き芋に決まってるだろうがぁ!
真実は何時も一つネ!!」

「そんな真実知らねぇよ!
あ~、もういいでしょ、また今度買ってあげるから」

「イヤアル!今日欲しいネ!
今欲しいネェェ!!!」

「そんな事言っても無理なものは無理・・・」

と、駄々を捏ねる神楽をなんとか宥めようとした新八の動きが
ピタリと止まり、キョロリと辺りを伺った。

それに一瞬きょとんとした神楽だったが、直ぐに
新八と同じように首を回す。

そして耳をピクピクと動かしていた定春が一声吼えたその時、
道端に座り込んでいた二人に聞きなれた声が掛けられた。

「・・・オマエ等、そんなトコで何やってんの?」

見れば其処には呆れたような顔で二人に近付いてくる
銀時の姿が。

しかもその手には・・・

「「焼き芋!!」」

「・・・おいちょっと待てオマエ等。
そこは普通銀さんの名前呼ぶとこじゃね?
ってか紙袋見ただけでなんで判んだ??」

「そんなの乙女の勘ヨ!」

キャッホーイ!!と両手を挙げて喜ぶ神楽に、銀時は首を傾げる。

「・・・ってかそんなに焼き芋好きだったっけか?」

「秋の乙女は焼き芋で出来てるらしいんで」

苦笑してそう答える新八に、なんだそりゃ。と
銀時は益々首を傾げた。

「まぁまぁいいじゃないですか。
それよりも早く帰りましょ?お芋、冷めちゃいますよ?」

「あ?あぁ、そうだな。
おら、神楽。とっとと帰るぞ」

「はいヨ~」

銀時の言葉に、定春と共に周辺を駆け巡っていた神楽が
戻ってくるのを確認して、新八達も歩き出した。

「そう言やぁオマエ等、ここで何してたんだ?本当」

スーパーは反対だろ?と、不思議そうに問い掛けてくる銀時に、
神楽と新八は一瞬視線を交わした後、ニンマリと頬を緩ませて
こう告げたのだった。

 

 

「「勿論、迎えにっ!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


その日、坂田家の夕食当番は急遽銀時に変更となり、
何時もより少し豪華だったと言う。


**********
主語をあえて言わないのが勝利の鍵です(笑)

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日も暮れかかった時間、銀時はビニール袋をカサカサ鳴らしながら
何時もとは違う道を歩いていた。

「ったく、疲れて帰って来たってのに、何で態々・・・」

ブツブツぼやいているものの、銀時の足は止まることをしない。
寧ろ何時もより若干早足と言えよう。

理由は一つ。

その為に、銀時はぼやきながらも進んでいるのだった。






 

 

その日、銀時は朝から出掛けていた。
無論仕事ではなく、パチンコだ。

なので、先に呟いた『疲れた』と言う言葉も、体力的にではなく、
精神的に・・・だ。

自業自得と言うなかれ。
負けると本当にキツイのだ。いや、マジで。

その上新八達に黙って行ったと言う負い目もある。
財布の中身を見られて投げかけられるだろう説教
冷たい視線を思うと、疲労もピークだ。

それでも、新八に出迎えられれば癒されたりも
するのだけれど。

なので、戦々恐々とする心を引きずりながらも、
癒しを求めて何とか帰った銀時であったのだが、
出迎えてくれたのは新八ではなく、シンと静まり返った
無人の万事屋であった。

「・・・あ?誰もいねぇのかよ」

ホッとしつつも誰も居ない事に少々拗ねながら
ソファに座った銀時だったが、直ぐにテーブルの上に
置いてあるメモを見つけ、軽く眉を上げる。

手に取り見てみると、其処には見慣れた文字があり、
今日は新八の家で夕ご飯を食べる旨が書いてあった。

どうやらお妙が同僚に野菜を大量貰ってきたらしく、
鍋にするから、来られるようだったら銀時も
こちらに来るように・・・と言う事らしい。

しかも・・・

「・・・なんつぅかまぁ・・・」

銀時は苦笑すると、手紙の下に置いてあったお札を手に取った。

新八のメモ曰く、

 


『まともに家に入りたかったら、
酢昆布とハーゲン○ッツ、買って来て下さいね』

 

 


・・・って事らしい。

どうやら自分の行動は、新八所か神楽やお妙にまでも
お見通しのようだ。

確かに、仕事もせずに朝からパチンコ・・・と言うのは
彼女達にとって十分殴る理由になるだろう。

約一名はノリの様な感じもするが。

・・・ってか凄すぎないか、新八の読み。
だって負けてくる事まできっちり読んでやがる。

新八気遣いにキュンとしつつも、
自分のパチンコ=負けと言う認識に
なっていると言う事実に、少し凹む。

・・・パチンコ、少し控えよ。

 



「でもよ~、言っとくけどアレよ?
銀さんめっちゃ疲れてっからね?
飯なんか、別に何でもいいし、この金で食ってもいいから
ってかその方が早くね?」

第一、幾ら賄賂を持っていっても、ただで済むとは思えない
だって今日、めっちゃ負けたし。

・・・や、ここんトコ最近ずっとそうだけど。
今日に限っての事ではないのだけれど。

それにきっと新八にだってブツブツ言われるに決まってる。

・・・まぁ、流石にあの二人から責められていれば
庇ってくれるとは思うけれど。
だからこその、このフォローだとは思うけれど。

・・・けれど、財布の事情を知れば一転するかもしれない。

考えれば考えるほど、向かうのが恐ろしくなる。

いっその事この金でもう一度勝負してくるのもいいかも知れない。

そうすれば鬼の待つ場所に出向かなくてもすむし、
もしかしたら大逆転が待っているかもしれない。

「って待て待て、俺。
それは完全なる死亡フラグだ」

一瞬過ぎった考えに、慌てて待ったをかける。

銀時は深々と溜息を吐き、持っていたお札を懐へと入れた。

「・・・ま、仕方ねぇか」

本当、疲れてんだけどなぁ。そう呟くと、銀時は漸くソファから
腰を上げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


賄賂はばっちりだ。
まぁ何処まで効果があるかは判らないが。

銀時は書置きあったモノを買い込み、新八の家へと向かっていた。

気分は棍棒でラスボスの元へと向かう勇者だ。
いや、向こうはリセットボタンがあるからまだいい。
だが、俺には命一つだ。

・・・足りねぇなぁ、おい。

なんだか泣きそうになってくるが、それでも銀時の足は止まらない。
ブツブツ言いながらもどんどん進んでいく。

疲れているのは本当。
リセットボタンがないのも本当。

でも、まぁ仕方が無い。

 

 

何時だって、あいつが居る場所が
俺の帰る場所なのだ。

 

そう思い、銀時はまた一つ進むペースを上げた。

*******
最近勝ってないので憂さ晴らし。
・・・でも坂田には癒しの天使が居る理不尽(泣)

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「今から海にでも行かね?」

「・・・銀さん、もうすぐ夕ご飯なんですけど」

 

そわそわした雰囲気で台所に顔を出したものだから、
またイチゴ牛乳でもせびりに来たのかと思えばこれだ。

・・・変なモノでも食べたかな?
糖分とジャ○プの為だけに動く人なのに。

訝しげな視線を向ければ、今度は何やらワタワタし始めた。

って言うか何で行き成り海?

銀さんは暇だったからとか何だとか言ってるけど、
生憎僕は暇じゃない

寧ろ夕ご飯前のこの時間は、忙しくて仕方が無い。
なので、暇なんだったらテーブルでも拭いてて下さい。

と、布巾を渡したら、この世の全てに絶望したような
をした。

・・・そんなに動くのがイヤか、コラ。

僕はまだ台所でグズグズしている銀さんの背を
力いっぱい押し出したのだった。

 

 

そんな事があったのが、一週間ぐらい前だ。

次の日も同じように誘われたけど、同じような時間帯だったので
さっくり断った。

昼間だったら神楽ちゃんも喜ぶのに、それじゃ
駄目なのかな。

そう言ったら、

「それだと全てにおいて意味がねぇ」

と答えてきた。

遊ぶ以外の意味が海にあるんだろうか。

でもそれ以降誘って来なくなったので、銀さん的には
何かあったらしい。
少しだけ悪かったかな・・・とも思ったけど、夕ご飯の方が
大切だったので仕方が無い。

それ以上に大事な用なんてないだろう。
現に僕にはない。


だが、やっぱり何か変なものを食べたのか、その後
珍しく銀さんが帰りに送ってくれる・・・と言い出した。

また呑みにでも行くのかな?と、財布の中身が心配な
僕としては断ったのだけれど、何故だか銀さんはしつこかった。

曰く、最近運動不足だから少し動きたいらしい。

・・・なら仕事しろよ。

そう言ったら、それとこれは全くの別物だ。と真剣な顔で
答えられた。

いや、一緒だろ。
寧ろ仕事の方が大切だし大事だろ。

でも、ゴロゴロしているだけよりはマシか・・・と、
有難く銀さんの申し出を受ける事にした。

その後で、呑みに行かない事を固く誓わせて。

意外な事に、銀さんはそれを簡単に了承した。
余りに簡単に了承したので、余計不安になったのだが
言うと拗ねそうだったので黙っておいた。

だって今拗ねられて、
帰る時間が遅れるのイヤだ。

と言う事で、大分涼しくなった夜の空気の中、二人並んで歩く。
交わされる会話は何時もと同じだ。
僕のする他愛無い話に、銀さんが適当に相槌を打つ。
それは何時もと変わらなかったけど、何時も以上に
銀さんの適当さ加減が半端なかった。

だって今月苦しいから糖分カットしていいですかと聞いたら、
あ~、そうだな~。って返してくれたしっ!

本当、聞いてないな~。って少し呆れたけど、
丁度いいから言質として頂いておく。

や、だって本当今月苦しいし。

よし、ラッキ~ラッキ~。
あ、でも明日になったら忘れたとか何とか言って
交わされそうだな~。

絶対させないけど。

さて、どうやって守らせよう。そんな事を考えていると、
不意に隣を歩いていた銀さんが立ち止まった。

どうしたのかな?と不思議に思っていると、銀さんは
公園に寄っていかないか。と誘ってきた。

・・・アンタ、僕が何時に起きてるか
知ってて言ってるんですか?
もう僅かな時間でさえも惜しいんですけど。
ってか・・・

「こんな時間に寄ったら迷惑じゃないですか?
長谷川さん」

コテリと首を傾げそう問い掛けると、銀さんは一瞬
死んだような目を生き返らせ、丸くさせた。

「いやあの・・・え?
何でここで長谷川さん?」

銀さん、公園に寄ろうって言ったよね?そう問い返してくる銀さんに、
僕は軽く頷く。

「えぇ、言いましたよ?
でも公園って長谷川さんの家でも
ありますよね?」

だから、やっぱり長谷川さんでも誘って
呑みにでも行くつもりなんだろうと思ったのだけれど・・・

違ったのかな?と銀さんを見れば、心底がっかりした
様な空気を纏っていた。

・・・いや、そんな顔されても・・・

って言うか夜の公園。
しかも既に遊具で遊ぶ年でもない僕達が公園に行く予定なんて
知り合いに会いに行く以外にないと思うんですけど?

・・・まぁ公園に知り合いが居るって
言うのもアレですけど。

「何か間違ってました?」

訝しげにそう聞けば、銀さんは肩をがっくり落としたまま
いや・・・まぁいいや。と力なく呟き、僕の家まで
送ってくれた。

その帰り、銀さんの足取りがお酒を呑んでいないにも関わらず、
とても覚束無いもの
だったのは、とても奇妙な光景だった。

・・・足腰弱ってんのかな。


その後も銀さんは、観覧車乗りに行こうとか、花火大会に行こう
とか色々と誘ってきた。

が、当然観覧車に乗るぐらいだったら食費に回すし、
花火大会は既に終わってて来年待ちだ。

・・・って言うか・・・

「どうしたんだろ、銀さん」

何時ものように夕ご飯の支度をしながら、ふと考える。

全力空回りなお誘いばかりだったが、基本ダラダラするのが
好きな銀さんにしては、とても珍しい行動だ。

「本当、変なものでも食べたのかな?」

・・・なんてね。

ポツリと呟いた自分の言葉に、小さく苦笑する。

実は銀さんの最近の行動の理由を知ってたりするのだ、僕は。

それは海に誘われて少したった日のこと。
掃除をしていた時に見つけたとある雑誌の記事にあった。

「・・・結構そう言うの、気にする人なんだよね」

記事の内容を思い出し、思わず笑みが零れる。

最初はまさか・・・とも思ったのだが、その後誘われた公園、
観覧車等がまさにその記事のランキング上位にあったのだ。

・・・考えてみれば、何だかんだとお付き合いを始めて、
そう言うのは一切なかったし。
銀さんも色々考えてくれてるのかな?なんて思うと、
嬉しい反面むず痒いものもあって・・・

「・・・だってベタ過ぎるよね」

「何が?」

クスクス笑って呟けば、背後から声が掛けられた。
振り返ればダルそうに台所の入り口に立っている銀さんが。

「いえ、別に。・・・それよりどうしたんですか?」

イチゴ牛乳なら切れてますよ。そう言えば、違ぇよ。と返された。
なら何だろう、また何処かへのお誘いかな?

僕は記憶にあるランキングの内容を思い出しながら
そう問い掛ければ、銀さんは視線を逸らして頭をガシガシと掻いた。

「いや、別に何でもねぇんだけどよ。
・・・やっぱ海、行かね?昼間でいいし、神楽達も
連れてっていいからよ」

・・・どうやら妥協と言う言葉を覚えたらしい。

ってかそんなにランキング一位がお気に入りですか、銀さん。

まぁでもそれなら断る理由もないし・・・と、僕は承諾の返事を
返した。

その時の銀さんの顔ったらっ!!

普段の生気のない顔からは想像も出来ない嬉しそうな顔だったので、
僕はついつい銀さんの元に行き、その緩んでいる口元へと
自分の唇を押し付けてしまったのだった。

 

 

 

 



・・・ってか何でそんな可愛らしい叫び声上げてるんですか、銀さん。

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坂田、チェリー疑惑浮上(笑)
ちょっとうっかりし続けて見ました。

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無駄語りご案内
銀魂の新八受け中心、女性向けブログです。 BL、やおいなどの言葉を知らない方、また、知っていて嫌気をを感じる方は、ご注意を。 また、出版社様、原作者様、その他関係者様方とは一切関係ありません。
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