[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
視線を下ろせばそこには今時珍しい黒い髪。
眼鏡に隠された大きな真っ直ぐな目、生真面目そうな顔。
そしてそれを支えている、白くて細い首。
あぁ、噛り付きたい。
『知らないこと』
「きっとさ~、すっごく甘いと思うんだよね、アイツの血って」
これよりさ。銀時はそう言うと、食べていた団子の串を小さく振った。
その言葉に、隣に座ってお茶を飲んでいた桂は大きく息を吐いた。
「馬鹿だな。馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、やっぱり馬鹿だ」
「馬鹿って言った方がヅラなんですぅ~」
「ヅラじゃない、桂だ!!と言うか文章として合ってるのか、それは!」
「テメー限定バージョンだから合ってる。・・・って言うか
マジで甘いって、きっと。香りも絶対生臭くねーよ」
いいよな~、吸い尽くしてぇなぁ。と頬杖を付き、幸せそうに言う
銀時に、桂の眉間に皺が寄る。
そんな桂に気付かず、銀時は更に言葉を続けた。
「あのほっそい首に噛り付いてさ、肉を噛み千切って甘い血を啜るんだ。
あぁ、きっと泣くだろうからその涙も舐め取ってよ。
逃げないようにしっかり抱きしめてよ、最後の最後まで吸い付くすんだよ。
んな事出来たら・・・幸せだろうなぁ」
「・・・馬鹿が。誰の血であろうとも変わりはしない。それはオマエも
よく知っている事だろう、銀時。
大体護ると言っていたオマエがそんな物騒な事を言ってどうする。」
険しい顔でそう告げる桂に、銀時は驚いたように目を丸くし、次に
見慣れた何時もの表情に戻る。
「・・・そうか?」
「っ!銀時!!」
「物騒か~・・・そうだな、確かにな。でもよぉ、やっぱり違うと思うんだよ。
だって新八のだぜ?吸えば新八の血が流れてくんだよ、俺の中に」
新八の血が。
新八の命が。
新八が。
全て 俺の 中に
全てを 俺の ものに
それは なんて 甘い 誘惑
「それって最高に幸せじゃね?」
ニヤリと笑う銀時に、桂の眉間の皺が深まる。
だってホラ、きっと今も誰かと居るんだよ、アイツは。
それにホラ、あいつは優しいから誰かの為に怪我とかしちゃうのよ。
そんなのホラ、許せなくね?
「オマエは・・・馬鹿だ」
「・・・失礼なヤツだな~。さっきからそれしか言ってねーぞ、コラ」
やっぱ新八が居ないと会話が弾まねぇな~、駄目だな、本当ツマンねー。
ボヤく銀時に桂の肩が落ちる。
「矛盾してるぞ、銀時。血を全部吸い尽くせば、新八君はもう
ドコにも存在しなくなるんだ」
「マジでか!?あ、そうかチキショー。思いつかんかったぜ、銀さんとも
あろうお方が!!」
どうすっかなー。そう言って頭を抱え込む銀時に、
「・・・やっぱり馬鹿だな」
もっと簡単な方法があるだろうに・・・桂は小さく呟いた。
噛り付きたいんです、その白い首に。
きっと甘いであろうキミの血を吸い尽くしたいのです。
けれど、その笑顔が見れなくなるのは。
その優しい声で名を呼ばれなくなるのは。
どうしようもなく、イヤなのです。
でも誰かにその笑顔を見せるのも。
誰かの名前を呼ぶのも。
どうしようもなく、イヤなのです。
キミの全てを自分一人のものにしたいのです。
でも、どうすればこの気持ちを抑え切れるのか判らなくて。
他の方法を 知らなくて。
あぁ、だから。
今日も キミの首元に 手を 伸ばす。
あぁ、けれども。
今日も その手は 辿り着くことをせず。
護ると言ったのは本当。
噛り付きたいのも本当。
矛盾している 俺の 心
とりあえず 今は まだ
キミの血の味を 俺は 知らない。
***************************************
[銀新十題]さまからお借りしました。