[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ポンポンポン・・・・
「・・・これくらいアルカ?」
自分の寝室にしている押入れの中、神楽は置いてある枕を
数回叩いた。
そして暫しの間腕を組み、納得いかない様な表情で枕を見詰めるが、
「ま、なんとかなるネ」
そう自分に言い聞かせ、叩いた枕に頭を乗せて布団を被った。
『おまじない』
意識が浮上し、重い目蓋を開ければ其処はいつもの天井(?)が見えた。
耳を澄ましても小鳥の鳴き声意外は聞こえない。
まだ早いネ・・と、神楽は閉じようとする目蓋に逆らわずもう一度
寝ようとした。
その時玄関からカチャッという音が聞こえ、パチリと閉じかけた目を
開ける。
「そうだったネ!」
神楽は勢い良く体を起こし、押入れから飛び出した。
そしてそのまま部屋から飛び出る。
「新八っ!」
「ぅわっ!・・・びっくりした~。驚かさないでよ、神楽ちゃん」
そこには草履を脱いで上がろうとしている新八が、驚きもそのままに
目を丸くして立っていた。
「え?てか早くない?それとも僕が遅かったのかな?」
あれ?と首を傾げる新八に、神楽はニィ~ッと笑顔を見せた。
「新八はいつも通りネ。お早う、新八」
「え、あぁ、うん。お早う、神楽ちゃん」
神楽の早起きに、不思議そうな表情をしていた新八だったが、された挨拶に
きちんと笑顔を返した。
「でもどうしたの?本当。まだ寝ててもいいんだよ?」
まだ来たばかりだから、朝食も何も出来ていない。部屋も寒いままだ。
そんな事を神楽に言いながら、中へと足を進める。
神楽は それでもいいネ。 と言いながら、新八の後を付いて行く。
「そう?じゃあ顔洗っておいでよ。今急いで朝食の準備するからね」
「判ったアル」
顔を洗いにいった神楽を見送り、新八は居間のヒーターの電源を入れる。
そして自分は朝食の為、台所へと進んだ。
「でも本当、神楽ちゃんどうしたんだろ。今日はいい天気だったのに・・・
午後から崩れるのかな?」
等と、本人が聞いたら拳が飛んできそうな事を呟きながら、冷蔵庫を開け
卵や凍らしてある切り刻んだネギを取り出す。
「新八~、洗ってきたネ」
そう言って新八の頬に、濡れた手を押し付ける。
神楽の手はヒンヤリとしていて、新八は ギャッ! と声を上げた。
それが面白かったのか、神楽は逃げる新八に尚も手を押し付け続ける。
「も~、神楽ちゃんやめてって!ご飯が遅くなるよ!?」
「それは駄目ネ。ちゃっちゃかやるヨロシ」
「なら大人しくしててね。向こうもそろそろ暖かくなったと思うから・・・」
「いいネ。ここで見てるヨ」
「寒いよ~?」
「大丈夫ヨ!」
ホラ。とニコニコと笑って、神楽は新八の腰に後ろから抱きついた。
そんな神楽に、動きにくいな~。 と困ったように眉を下げながらも
やめさせる事をしなかった。
「今日のご飯は何ネ?」
体をずらし、横から覗き込む様にしながら、料理をしている新八の手元を
見る。
料理をしない神楽にとって、色んな食材から造られる料理は不思議な存在だ。
「ん~と、卵焼きとお味噌汁とお漬物と・・・何時もと変わらないかな?」
「米もいっぱいアルカ?」
「ま、一応は・・・ね」
神楽の期待に満ちた目に、汗を一筋かきながら新八は答えた。
「なら大丈夫ネ!最高の朝飯ネ!」
「朝食、もしくは朝ごはんね?」
神楽の言葉を言い直し、出してきた漬物を包丁で切る。
そして先程から気になっていた事を神楽に聞いた。
「でも本当、今日はどうしたの?何時もは起こしても中々起きないのに」
「この間のヤツ、やってみたヨ」
返ってきた答えに、新八は手元に落としていた視線を神楽に向けた。
「この間っ・・・て?」
「前に三人で寝た時、新八がやってたネ。枕叩いて起こして貰うってヤツ」
「・・・あ、あれか」
新八は納得したように小さく頷き、その時の事を思い出した。
以前新八が泊まった時に、目覚まし時計だけではなく、あるお呪いをしたのだ。
それは至って簡単。起きたい時間の数だけ枕を叩く事。
新八のその行動を不思議そうに見ていた神楽に、叩く理由を教えた事があった。
「試してみたんだ?」
「そうアル。凄いヨ、本当に起きれたアル!」
そう嬉しそうに笑う神楽に、新八もニコリと笑みを返した。
「良かったね。はい、神楽ちゃん、あーん」
「あーん?」
首を傾げながらも素直に口を開く神楽に、新八は切っていた漬物を一つ
放り込んだ。
いつもはつまみ食いなどさせてくれない新八の行動に、神楽は驚きながらも
口の中の漬物をポリポリと噛んだ。
「早起き出来たご褒美ね」
ちょっとショボいけど。そう言って笑う新八に、神楽の笑みも深まる。
「上出来ネ!これが早起きは三本徳利ネ!」
「いや、三文の徳 だから。それよりそろそろ出来るから
銀さん起こしてきてくれる?」
「了解アル!!銀ちゃぁぁん!!!」
銀時の名を呼びながら、勢い良く走っていく神楽。
新八はその後ろ姿に一応一言つける。
「あ、あんまり過激に起こしちゃ駄目だよ?お登勢さん怒るから」
「任せるネ、
どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ起きろぉぉぉ!!」
「ぐぉぽっ!!!!!」
「あ・・・・・・・銀さん大丈夫・・・じゃないか」
零れてしまう溜息を隠さず、とりあえず未だ鈍い音と神楽の叫び声が
聞こえる和室へと足を進めた。
あのお呪いは凄いネ。
だって本当に起きれたヨ。
おまけに新八に褒められて、ご褒美まで貰ったヨ。
本当、凄い。
凄いけど、当分銀ちゃんには教えてあげないネ。
偶には娘にもマミーとの時間を持たせなきゃ駄目アルヨ。
その代わり、きちんと新八と二人で起こしてあげるから
それで我慢すればヨロシ。
って言うか、なんでまた寝てるネ、銀ちゃん。