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今日は四月一日、所謂エイプリル・フールってヤツだ。
数日前、神楽ちゃんが遊び友達から聞いたらしく、銀さんに
高々と宣言していた。
「騙してやるネ!」
・・・と。
既にそう宣言した時点で、もう計画失敗なんじゃないかな?と
思ったのだが、彼女はやる気満々だ。
しかもその宣言を受けた銀さんが、
「テメーのウソなんかに引っかかるようじゃ、俺もしめぇだな」
・・・と鼻で笑ったものだから、そのボルテージは最高潮。
お陰で大人気ないな~等と思い、傍観者を決め込んでいた僕にまで
その火の粉は飛んできたのだった。
「・・・て言うか、なんで僕がこんな事・・・」
何時ものように万事屋に来て、何時ものように雑用をこなした午後。
昼食を食べ終わり、遊びに出掛けようとした神楽ちゃんに捕まり、
僕はある指令を受け取った。それは、
『他に好きな人が出来ました』
と銀さんにウソつくと言うもの。・・・ベタ過ぎだよ、神楽ちゃん。
最初は拒否したのだが、銀ちゃんの慌てる姿が見られるネ!・・・と
自信満々な神楽ちゃんの言葉に、最終的には了解してしまったのだ。
でも・・・と、新八は一つ息を吐く。
本当に見られるのかな、そんな姿。
なんか全然想像できないんですけど。
一応僕と銀さんはお付き合いをしている。所謂恋人と言うものだ。
けれど告白したのは僕。
・・・ま、手を最初に出してきたのは銀さんだけど。
でも、それ以外はそれまでとあんまり変わらない様に思えるのは、
僕の経験が無いに等しいからだろうか。
神楽ちゃんには、告白する前から気付かれていたので(と言うか
彼女の言葉で気付いたってのも・・ある)前にそれとなく
聞いてみたら、鼻で笑われた。
・・・そう言うトコは真似しちゃ駄目だよ、神楽ちゃん。
でもやっぱり好き合ってる同士なら、なんとなくそれまでと
雰囲気が違ってくると思うんだ、付き合えば。
けれどそれがない。
なので僕は何時も不安だ。
だって面倒臭いのが嫌いな銀さんだもの、断るのも面倒だった・・・て
言うのだったらどうしよう。
手近で済ませられるから、丁度いい・・なんて理由だったらどうしよう。
今回のこの言葉、告げて『あ、そう』なんて言われたらどうしよう。
そんな事ばかり考えていたら、呼ばれているのに気付かなかったらしい。
銀さんの声にハッと我に返り、視線を返せばそこには訝しげな表情が
こちらを見ていた。
「あ、なんですか、銀さん」
「なんですかじゃねーよ。何回呼べばいいんですか~?苛めですか~?」
全くよ~。そう言って銀さんは机の上にあった湯呑みを掲げ、お茶の
お代わりを要求した。
それを受け取りにソファから立ち上がり、銀さんが腰掛けている机へと足を
進めた。
机を挟んだ状態で向かい合うと、銀さんはチョイチョイと指を折り、
横に来いと告げる。
なんだろうと思いつつ、言われた通りに横に行くと、何時もと違って
下から見上げるような形で銀さんが問い掛けてきた。
何かあったか・・・と。
そこで僕は神楽ちゃんからの指令を思い出した。
本当は口に出すのもイヤなウソ。
そして、その後の反応を見るのもイヤなウソ。
でも、言わなければ工場長のお仕置きが待っているのだ!
それに、これで銀さんの本心が判るかもしれない。
例えそれが最悪な結果を招こうとも・・・いい機会なのかもしれない。
こんな不安な日々を過ごすよりは、きっぱりと切り捨ててもらった方が
マシなのかもしれない。
だって、言わなければ、判らなければ、不安な日々がこのまま続き
尚且つ工場長から、肉体的に痛いモノがもれなくプレゼントされるのだ!
それはイヤだ。心も体もボロボロになるなんて真っ平ごめんだ!!
そんな想いから、僕の口は漸く言葉を紡ぎ出した。
「あの・・銀さん、僕他に好きなひとが・・・」
が、漸く出てきた言葉は、僕の顔の真横を突然過ぎ去って行った
物凄い音と風圧に、最後まで言い終える事が出来なかった。
「・・・・・・・・・・へ?」
恐る恐る視線だけを横に向ければ、其処には何故か銀さんの木刀があった。
って言うか、直ぐ横に持ち手が見えるって事は・・・
後ろの壁に突き刺さってるの・・・かな?コレ。でもなんで?
行き成りの事に思考が停止してしまった僕の前で、銀さんは立ち上がり、
ゆっくりとした動きで木刀を握り締めて、鈍い音と共に壁から引き抜いた。
そしてそのまま僕の方へと一歩足を進めて来る。
「あ~、ごめんね~新ちゃん。ちょっと手、滑ったわ、銀さん」
・・・いや、滑ったも何もアンタ、木刀持って無かったですよね!?
って言うか顔こわっ!声は何時も通りなのに、顔こわっ!!
「で、なんだって?ごめんな~、銀さん耳遠くなったみたい。糖尿かな、コレ」
うわ、自分で糖尿肯定したよ!
あ、でも聞こえなかったのか~。なら仕方ないよね。
そう思ってもう一度言いかければ、今度は半分も言い終わらない内に
木刀の先が僕の足元すれすれに降ろされた。
ってぅわっ!今度は床!?床に穴!!?って言うか割れた!!?
あまりの事に思わず床を見れば、すぐさま銀さんの手に顎を掴まれ、
無理矢理上を向かされた。
その先には、一人の鬼が・・・
「で?何、新八」
・・・口元だけで笑っても、怖さが増すばかりです、銀さん。
僕は恐怖と、そして嬉しさの狭間で泣きそうだ。
だって怖い。怖いけど、そこまで怒るぐらい僕の事、好きなんですよね?
とりあえず色々話して、謝ったりもしたいんで、その手を離して下さい。
顎潰れたら、キスも出来ないでしょ~が!!
仕方がないので、一先ず僕は想いの分だけ力が込められたその手を、
そっと両手で包み込んだ。
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四月一日なのを思い出して、とりあえず殴り書き。
・・・ベタ過ぎだよ、私(反省)