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夕陽が沈む中、銀時は新八は並んで歩いていた。
話す事は、くだらないものばかり。
朝から近藤さんがやって来て、寝不足の妙が
何時にもまして容赦なかっただの。
パチンコに行ったら、長谷川が出てきて死相を浮かべてただの。
まさかまた負けてきたのか、コノヤロー。だの。
そんな話題でも、二人の手は繋がれていて、
長く伸びる影が、その後を着いていった。
そしてそろそろ人気の無い川沿いの道も終わろうとした所。
さすがに街中まで手を繋いだままと言うのは恥ずかしいかな・・・
と新八が思った時、不意に銀時が立ち止まった。
不思議に思い見上げると、銀時は緩やかに口元を上げ、
「時に新八君、空いてる手の役割はまだ決まってねぇよな?」
と聞いてきた。
紙袋は銀時が抱えているし、手を繋いでいない方の新八の手は
只今手ぶら絶賛中だ。
新八はその手にチラッと視線を落とし、次に銀時を見た。
「えぇ、まぁこの通りこっちの手は暇ですけど・・・あ、荷物変わります?」
「それはダァメ!そしたら銀さんの手が暇になっちゃうでしょ」
この役割は渡しません~。等と、常ならば絶対言わないような
台詞を口に出す銀時。
・・・その積極性を常日頃も出せよ。
そう思いながらも、じゃあ何か他の役割あるんですか?と聞くと、
笑ったまま銀時は少し離れた先の川べりへと視線を送った。
それにつられて新八も視線を送れば、其処にはやはり見慣れた
桃色の髪と白く大きな塊が、道へと上がってくる所であった。
どうやら遊びの帰りらしく、少し汚れている。
「この状態も最高なんだけどね~。子供を迎えに行くのは
親の役目だとは思わねぇか?奥さんや」
「や、だから誰が子供で誰が奥さん?」
「じゃあDV娘を迎えに行く団地妻とそのイカス夫でいいや」
「いや、ますますよくないですからっ!何その無駄な設定!?」
「ほらほら、いいのか?神楽行っちまうぞ?」
「あ、本当だ。おーい、神楽ちゃ~ん!」
こちらに気付かず行ってしまいそうな後姿に、慌てて手を振って呼べば
隣に居た定春と共に神楽が振り返り、一目散に新八達の下へとやって来た。
「二人して何してるネ?」
手を繋いでいる二人を訝しげに見やる神楽に、新八と銀時は少し笑い、
「万事屋に行こうとしたら、丁度そこで会ってね。帰るトコなんだけど・・」
「困った事に新八の手が一つ余ってんだよ」
ホラ。と言って銀時は抱えていた紙袋と繋いだ手を軽く上げた。
「なんかバランス悪くね?」
「何かいい案、ないかな?」
新八はそう言うと空いてる手をプラプラと振った。
それを見て神楽は首を傾げたが、次の瞬間満面の笑みを浮かべた。
「仕方ない男共アル。丁度私の片手も空いてるから繋いであげてもいいネ」
「お、なんだなんだ、その態度は。あ、いいよ神楽。
新八、仕方ないから空いてる手で銀さんに抱きつけ」
「えぇ!やですよ、そんなの」
「あ、何それ。銀さん泣くよ?」
「泣き叫べばいいネ!第一それじゃ歩き辛いヨ!!ほら新八、早く早く!!」
「はいはい・・・って痛っ!神楽ちゃん、
そんな強く握らなくても大丈夫だから!」
「あ~、もう銀さんショックだよ。ハートブレイクだよ。
これじゃお手伝いできないよ。ってコトで夕飯よろしく、新八」
「大丈夫ですよ、銀さんは直ぐに立ち直れる強い子だと信じてます」
「今日の夕飯は新八が作るアルカ!?キャホゥゥゥゥ!!」
定春に向かって、傘を片手に飛び跳ねる神楽。
その動きに手を取られ、よろける新八。
それを支える銀時の手。
しっかりと握ったその反対側の手には野菜の入った紙袋。
それぞれにきっちりと役割を持った手は、固く繋がれ、
既に沈みきった夕陽を背に、楽しく揺れていた。
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お題『夕陽』のおまけみたいなモノ。