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久しぶりに気持ちよく晴れた日の事。
買い物から帰って来た新八は、何故かずぶ濡れだった。
「・・・どったの、それ」
「歩いていたら、とある家で花に遣っていた筈の水が
何故かこちらにいらっしゃいましたので」
無表情でそう告げる新八に、俺は あ~。と唸る。
成る程、ドッカの馬鹿が庭の花に水遣るつもりが、
万事屋・・・ってか銀さんのお花ちゃんに水遣っちゃったのね。
おいおい、間違えるのは無理もねぇけど、やめてくんない?
新八を濡らしていいのは、銀さんだけだか・・・
ソコまで心の中で呟いた所で、突然目の前に拳が唸りながら
迫ってきた。
「ちょ!行き成り何すんだコノヤロー!!」
「いや、なんかイラッと来たんで、つい。」
「・・・・あ、そう」
ちなみに迫ってきた拳はナイスコントロールで俺の頬に命中。
ジンジンする頬を摩りながらそう訴えると、酷くシレッとした
表情でそう返された。
・・・うん、以心伝心も良し悪しだね、コレ。
肩を竦め、ソファの上で小さくなっていると、
ちょっと着替えてきます。と言いながら、新八が和室へと
姿を消した。
ちなみに襖はピシリと閉められる。
・・・なんだかなぁ、男同士なんだからそんなに意識
しなくてもいいのによぉ。
少しぐらいサービスしろや、コラァァ!!
ブツブツ文句を言いながらも、
とりあえず開けると怖いので、透視出来ないか試みる。
ホラ、銀さんやれば出来る子だから。
透視の一つや二つ、出来ると思うんだよね。
あ、違うよ?別に着替えを覗きたいとかそんなんじゃないから。
単なる知的好奇心ってやつ?
なんかさ~、不意に思い出しちゃったんだよね、
そう言う超能力っぽいもの?
やっぱさ、心は何時でも少年じゃん?
で、少年としては、超能力とかって滅茶苦茶興味あんじゃん?
必死になればあんな襖ぐらい、訳なさそうじゃん?
だからやってるだけだから。
全然下心なんてないから。
至って純粋な動機だから、コレェェ!!
だから今、
この瞬間、目覚めろ!
俺の何かぁぁぁ!!!
「銀ちゃん、キモイアル」
物凄く集中して襖を見ていると、聞き慣れた声と共に
脳天に衝撃がやって来た。
「っておぉぉおい!!行き成り何しやがる、神楽!!
ってか帰宅早々何、その言葉ぁぁぁ!!!」
挨拶ぐらいちゃんとしやがれっ!衝撃を受けた頭に手を当てながら
振り返れば、案の定神楽が手刀の形でこちらを見ていた。
「ちゃんと挨拶したヨ」
「どんな状況下で挨拶すりゃあ
そんな言葉になんだよ!」
「どんなって・・・こんな?」
そう言って神楽は俺を指差し、大きく円を描いた。
え?何この鬼っ子。
「そんな事より新八はどこネ」
俺の心境を丸っきり無視し、神楽はぐるりと室内を見回した。
俺は大きく肩を落とすと、ダラリとソファに身を預ける。
「和室だよ。」
なんだか身も心もズタボロだ。
何か言う力も沸かずそう答えると、神楽は そうカ。 と答え、
そのまま和室へと突き進んだ。
そしてそのまま襖へと手を伸ばす。・・・ってヤベッ!
あいつ、まだ着替えてんじゃね!?
神楽を止めるべく、声を掛けようとするが、時既に遅し。
「新八ぃ、お腹減ったネ」
と言う言葉と共に、勢い良く襖が開けられてしまった。
あっ!と思う間もなく、ましてや頭を起こす間もなく、
開けられた襖は神楽を招きいれ、再びきっちり閉められてしまった。
「ぅわっ!ちょ、神楽ちゃん!?」
その襖の向こうから、新八の幾分焦った声が聞こえてくる。
あ~、そりゃそうだよな。
幾ら洗濯物全部任せられてても、流石に直で見られるのは
恥ずかしいやな。
不憫に思いながらも、少しだけ安心する。
うんうん、これが正しい思春期だよ。
着替えてる所に、不意に入ってくる人物。
小さく声をあげ、慌てて背を向ける新八。
俺は慌てて謝罪し身を返すと、
「・・・ううん、いいんです。・・・銀さんなら・・・」
と言う恥ずかしさからか、小さな呟きが聞こえ・・・
って、アレ?ちょっと待て、俺。
銀さん、ここに居んじゃん?
中に居んの、銀さんじゃなくて神楽じゃん?
正しくねぇ、全然正しくねぇよ、ソレェェ!!!
ハッと我に返り、慌てて和室に行こうとソファから腰を上げた所で、
それまでキッチリ閉められていた襖が、音を立てて開けられた。
ソコに居るのは、着替え終わった新八と神楽だ。
呆然と見ていると、目の前の二人は普通に会話をしながら
和室から出てきた。
「全く、帰ってきたら直ぐに手洗いうかいでしょ!」
言い聞かせるように神楽に告げる新八。
・・・や、そうじゃねぇだろ。
その前に言い聞かせる事あるよね?
手洗いうがいより大切な事だよね、それぇぇ!!
「あ~あ~、口煩い眼鏡ネ。そんなんだから貧弱なままアルヨ」
ケッと鼻を鳴らし、口答えする神楽。
や、違うからね。
全然口煩くないからね、それっ!!
ってか貧弱ってなに!?
がっつり観察済みですかコノヤロー!!
「貧弱関係ないだろ!・・・て銀さん、何してんですか?」
言い合う内に俺の格好に気付いたのだろう。
新八が不思議そうにそう聞いてきた。
や、それ銀さんの台詞ですから。
本当何してんの!?お前らぁぁぁ!!
思春期は何処に
落としてきちゃいましたぁぁ!!?
「ほっとくネ、新八。思春期オヤジは色々大変ネ」
「あ~、成る程ね~」
肩を竦め、ヤレヤレと言った風に語る神楽に、何故か納得する新八。
どうやら思春期であったのは俺の方だったらしい。
とりあえず俺は、上げた腰をそのままに、二人が出てきた
和室へと向い、隅っこで丸まってみた。
・・・やべ、ちょっと安らぐ。
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坂田家で一番思春期なのは坂田(笑)