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「銀さ~ん、ちょっと手伝ってくださ~い」
机に足を乗せ、ダラ~っとしながら俺的聖書を読んでいると
和室から新八の呼ぶ声が聞こえた。
普段なら動かない俺だが、可愛い嫁さんの頼みだ。
仕方ねぇなぁ・・・と、重い腰を上げて和室へと向かった。
うん、別に昨日パチンコ行ってすって来たからって訳じゃない。
銀さん、亭主関白だからね?
それぐらい男の甲斐性として認めさせてやるからね?
だからこれは、ゴマすりとかじゃ全然ないから。
愛妻家なだけだから、銀さん。
「どうかしたか~?」
自分に言い聞かせながらヒョコリと顔を出せば、
可愛いお尻がこちらを向いていた。
・・・人間、いい事するとそれなりの見返りが
あるもんなんだな。
「あ、銀さん!良かったぁ、動いてくれた。」
じっくり眺めていると、ついでに愛すべき顔がこちらを向き、
顔に似合わず辛辣な言葉を投げ掛けてきた。
・・・おいおい、動いてくれたってオマッ・・・
一体銀さんの事をどんな風に思ってらっしゃるんですかぁぁ!?
動くからね?銀さん、動くときはマッハ超えるから、本当!
ってか心底ホッとした様な顔、してんじゃねぇよ!!
可愛いけどムカツクわぁぁぁぁぁぁあ!!!!!
カクリと肩を落とす俺に気付かず、新八は再び前に
向き直るとそのままの姿勢で言葉を発した。
「すみませんが玄関前の所に干してある布団、寄せてきて下さい」
「布団?」
そう言えば今日は天気がいいから・・・と、朝早々に起こされたっけ。
相変わらず収まりの悪い髪をワシワシと掻きながら、その時の事を
思い出していると、新八の機嫌の良い声が そうですよ~。 と
弾むように返されてきた。
よくよく見れば、新八も干してある布団をよせている所だった。
「あれ?パンパンって叩かないのか?」
何時もなら親の敵のように・・・
思わず土下座して
謝り倒したくなるぐらいの勢い
で叩いてるのに。
そう思って問い掛けると、ちらりと見えた横顔が苦笑するのが見えた。
「なんか叩いちゃダメらしいんです、アレ。
なんでも、叩くと干して死んだダニを
結局家中にまたばらまくことになっちゃうそうで」
こうして払うだけでいいそうなんです。そう言って新八は手でササッと
布団の上を払うと、小さな掛け声と共に部屋の中へと布団を寄せ入れた。
「ふ~ん、そうなんだ~。・・・てかドコで仕入れてきたの、
その豆知識」
「お登勢さんです。この間布団叩いてたら教えてくれたんですよ」
矯めになりますよね。そう言ってニコニコ笑う新八に、ウルセェだけだよ
と鼻を鳴らす。
そうか・・・豆知識じゃなくて知恵袋か、オバァちゃん的な。
ってかあのババァは新八の事をどのポジションで認識してんだ?
なんか既に十代の男の子が持つ知識じゃねぇんだけど・・・
・・・てあぁ、アレか。
嫁か、俺の。
ならいいや、うん。
ババァ、ナイス認識。
うんうんと納得し、俺は布団をよせるべく玄関へと足を向けた。
「お~い、よせて来たぞ~」
「あ、有難うございます。ちゃんと払ってくれました?」
布団を抱えて和室へと戻ると、既によせた布団を畳み、部屋の隅へと
置いた新八が迎えてくれた。
「当然だろ?銀さんはやる時はやる子よ?」
「もう既に『子』って時代は過ぎてますけどね」
そう言って俺の腕から布団を受け取ると、一瞬固まり、次に
よせたばかりの布団へパフッと顔を埋めた。
「やっぱり干すと違いますね。太陽の匂いがします。」
満足げにフフッと笑う新八に、思わず頬が熱くなりそうになる。
もうなんなんだろう、この子!!
一々可愛すぎるんだけどぉぉぉ!!!!
十代ってこんなんか!?こんなキラキラしてんのかぁぁ!?
お陰で銀さん、無駄にギラギラしそうなんですけどぉぉ!?
「あ、後銀さんの匂い!」
「あぁ?俺の?」
ニッコリと笑ってそんな嬉しい事を言う新八に背を向け、
隅に寄せられた布団の横へと腰を下ろす。
本当、ヤバイ。凄くヤバイ。
なんかもう見たら絶対引くぐらい、顔が赤くなってるよ、銀さんんん!!!
「そんなもん、本当にすんのかね?」
せめて気付かれないように・・・と、畳まれた布団へと
顔から上半身を倒れさせる。
そんな俺の頭上で、新八が心外そうな声を上げてるのが聞こえた。
「しますよ!まず加齢臭とぉ・・・・」
おいぃぃぃ!!!!
もう本当、そう言うの止めてくんないぃぃぃ!?
マジ傷付くから!!きっちり否定したいけど、もしかしたら・・・
って不安も隠しきれない微妙なお年頃だから、銀さん!!
新八の言葉に言い返そうとした瞬間、フワリと香ってくる匂いに
気がついた。
これは・・・
「後、甘~い匂い!」
ね、銀さんの匂いでしょ。そう言って直ぐ横に布団を置く気配がした。
チラリと視線を送れば、自分と同じように布団に体を預けている
新八の姿が。
なんかすっげー幸せそうな顔してんのな、オマエ。
しまりねぇよ?おい。
・・・ま、俺も同じようなもんだけど。
クスリと笑って一つ息を吸う。
「こっちはオマエの匂いがするぜ?」
「え?どんな匂いですか?」
「勿論銀さんの好きな匂い~♪」
「ファブっていいですか、それ」
サクッと斬られ、ガクッと凹む。
「おいぃぃぃ!!!何ソレ、どういう意味ぃぃ!?
いいじゃない?銀さんの好きな匂いでいいじゃないぃい!!
あ、でも大丈夫。銀さん、幾らファブられても
新ちゃんの匂いは判るから!
どんなんでも銀さんの好きな匂いだから、
新ちゃんの匂いは!!」
「なんか変態臭いです、銀さん。
でもそっか~、僕の匂いか~」
そこまで言うと新八は嬉しそうに笑みを浮かべた。
俺はそれに少しだけ首を傾げる。
「んなの当たり前だろ?コレ、オマエの布団じゃん?」
そう言うと益々新八は笑みを深めた。
「ですよね。僕の布団ですもんね、ソレ」
よし、じゃあ神楽ちゃんのもよせてこよう!そう言い新八は
勢い良く立ち上がり、玄関へと向かった。
あぁ、そう言えばもう一つあったっけ。
先程目にした光景を思い出し、俺もその場を立ち上がる。
「いいよ、銀さん寄せてくっから」
「本当ですか?じゃあお願いします。
あ、それと僕、今日泊まってきますから。」
折角のフカフカお布団ですもんね。そう言って笑う新八に、
俺は背を向けて軽く手を上げることで了承した事を告げる。
や、別に態々言わなくてもいいんだけどね。
あれ、アイツの布団だし。
ここ、アイツの家でもあるし。
そして干されている神楽の布団を寄せていると、丁度下に居た
ババァと目が合い、面白そうに笑われた。
「アンタ、夏場の綿菓子みたいに溶けてるよ、顔」
うるせーよ、ババァ。
いい年してんだからこういうのは見逃せよ!
仕方ねぇだろ、幸せなんだから!!
悔し紛れに俺は大きく、干されてた布団を一つ叩いた。
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二世帯住宅・万歳☆(待てι)