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昼過ぎ、朝からとっつぁんに呼び出され、グダグダと長ったらしい話をされて
漸く帰って来た屯所で、見慣れた・・・しかしこの場所では見慣れない
姿を見掛けた。
「・・・なんでここに居んだぁ?」
「ん?どうしたトシ・・・って、あれ?新八君??」
ポツリと呟けば、一緒に帰って来た近藤さんもソイツに気付き、
驚きの声を上げた。
その声に、それまで廊下でウロウロと所在無げにしていた丸っこい黒頭が、
一瞬身を竦め、こちらを振り返った。
「あ、近藤さん、土方さん。えっと・・・お邪魔してます?」
そう言って軽く頭を下げる新八に、軽く手を上げながら答える。
っていやいや、違うだろう。
礼儀正しい事はいい事だが、何分ここは真選組の屯所内。
しかも隊士の部屋の前の廊下だ。
言葉としては正しいが、一般人がお邪魔して良い場所じゃない。
その事を問い質そうと、タバコを口から離そうとしたが、その前に
近藤さんが声を出した。
「むさ苦しい所で悪いね。でもなんでココに?」
俺が聞きたかった事を数十倍和らげた感じで近藤さんが問い掛けると、
新八は困ったようにチラリと傍の部屋の障子を見やり、
次に俺達の傍へと足早にやって来た。
「実はその・・・」
そう言いかけて、再びチラリと先程の部屋へと視線を飛ばす。
なんだ?あの部屋になんかあんのか?
「総悟の部屋に何か用でもあるのかい?」
新八の様子に、近藤さんも不思議そうに首を傾げ、そこに視線を向けた。
その言葉に漸く俺も、新八の気にしていた部屋が総悟の部屋だと
言う事に気がつく。
同じように視線を飛ばすが、別に変わった様子もなく静まり返っている。
訝しんでいると、新八は ちょっと・・・ と言って俺達の腕を掴み、少し先にある
曲がった所まで引っ張っていった。
そして総悟の部屋が見えない所に体を押し込むと、漸くここに居る
理由を話し出した。
どうやら先日、総悟は休みで暇だと言って新八の元へと行ったらしい。
新八の方も万事屋での家事を終えた所だったので、その暇つぶしに
付き合ったらしいのだが、途中で隊士が迎えに来たらしいのだ。
・・・で・・・
「何やってんですか!!全然暇じゃないでしょ!!!
っつうか休みでもないじゃん!!!」
「休みだっつぅたら休みでィ!ちゃんと出勤日程確認したんだからねィ。
・・・・夢の中で」
「目を覚ませぇぇぇぇえ!!!
もう、さっさと行って仕事してきて下さいよ。
ってか税金分はきっちり働きやがれ」
「あ~もうウルセェなァ。オマエは俺の母ちゃんか。
丁度いいや、母ちゃん、メシ」
「母ちゃんじゃねぇぇぇ!!!
って言うか、働かない人に食べさせるご飯はありません!!」
「んだよぉ、なら旦那はどうなんでィ?」
「・・・ソコは突っ込まないであげて下さいよ。
人間、最低限の優しさは必要ですよ?」
「だねィ。すいやせん、旦那」
「ごめんなさい、銀さん」
「って、ちょっ!アレェェェェ!!!?
なんで?なんで行き成りここで銀さんんんんん!!!?
可笑しいよね?明から可笑しいよね?コレ。
ソコで銀さんに謝る理由が全然判んないんだけどぉぉぉ!!?
って言うかその生暖かい眼差し
やめてくんないぃぃぃ!!!」
「・・・て、居たのか、あの腐れ天パ」
「居ましたよ?仕事もしないで居るから空気みたいな
存在でしたけど」
キョトンとした顔で首を傾げる新八を見て、少しだけ銀髪に同情した。
だってこの顔、めっちゃ当たり前の事言ってるって
顔なんですけどぉぉ!!
・・・まぁアレだ。色々と言いたい事があるが・・・アレだ。
ザマァミロ。
ヘッと脳裏に浮かび上がった天パを鼻で笑い、話を続ける。
とりあえず、そんな押し問答の末、万事屋から総悟を追い出したらしい。
だが、そこである事柄が頭を過ぎり、俺は頭をガシガシと掻いた。
あ~、なんて言うかよぉ・・・
そんな俺に気付かず、横で近藤さんが不思議そうに首を傾げる。
「いやでも昨日は総悟のヤツ、確か休みだったような・・・」
そうだな、近藤さんの言うとおり休みだったな。
昨日の朝の時点では。
「変更になったんだよ、それ」
深く息を吐きながらそう呟くと、目の前の新八も苦笑して
「みたいですね」
と呟いた。
「今朝山崎さんと会って、それを知りまして。
で、代わりに今日が休みだって聞いたもんですから
昨日言い過ぎちゃったお詫びと、今度こそ暇潰しに付き合おうと
思って」
「んな侘びなんざいらねぇよ。
大体確認もせずにさっさと出て行った総悟が悪ぃんだからよぉ」
ケッと煙を吐き出しながらそう呟くと、近藤さんが困ったように
眉を下げながら、まぁまぁ と肩を軽く叩いてきた。
そして新八に視線を向けると、
「で?アソコでウロウロしてたって事は、総悟は部屋に居ないのかい?」
と、問い掛けた。それに対し、新八は総悟の部屋へと視線を
飛ばして それが・・・ と口篭った。
「・・・居るには居る・・・みたいなんですけど、
出てきてくれなくて・・・」
困ったようにそう告げる新八に、俺も近藤さんも暫し呆然とする。
って事は何か?
もしかしてアレか?
拗ねて出て来ねぇのか?アイツは!!
一体何歳児のつもりだ、あのヤローは!!
打たれ弱いにも程があるだろう!!!
どうしたらいいですかね?と問い掛けてくる新八に、放っとけ と
手を振ろうとしたが、そうする前に妙に笑顔な近藤さんに阻まれた。
そして機嫌良さ気に新八を手招きすると、寄って来た新八の
耳元に口を寄せ、何事かを囁いた。
何を言われたのか知らないが、言われた新八は訝しげにすっと眉を顰める。
だが近藤さんは 大丈夫大丈夫 と、笑いながら
その背を総悟の部屋へと押した。
その勢いに、新八は何度かこちらを振り返りながらも足を進めていく。
一体何を言ったのか聞きたかったが、近藤さんは楽しそうに口元に
人差指を立てるばかり。
まぁ見てれば判るか・・・と、二人でそっと首だけを出して眺めていると、
部屋の前まで来て漸く覚悟を決めたのか、
新八が大きく息を吸ったのが判った。
そして・・・
「そ~ちゃん!!あ~そ~ぼ~!!!!」
・・・・あ?
耳に飛び込んできた言葉に、口にしていたタバコがポロリと落ちそうになる。
隣を見れば、酷く穏やかな眼差しでそれを見詰める近藤さん。
・・・いや、ない。ないだろぉ、アレは。
アンタ一体あいつ等を何歳だと認識してんだ?
てかここがドコだか判ってるのか?
仮にも対テロ組織の真選組屯所なんですけどぉぉぉぉぉ!!!?
だが、頬を赤くし、自棄気味に新八がそう叫んだ瞬間、勢いよく
総悟の部屋の障子が開けられた。
そして出てきたのはこれまた顔を赤くした総悟。
「な、何言ってやがんだこのダメガネ!!!
年を考えろってんでィ!!」
慌ててキョロキョロと辺りを見回す総悟に、俺と近藤さんはさっと身を隠した。
いや、今まで拗ねてたお前が言うな。
身を隠したままそっと聞き耳を立てていると、新八のホッとしたような声が
聞こえてくる。
「あ、本当に出てきた」
「・・・まぁここは俺の部屋ですからねィ。居りゃ出てきもしまさァ」
「今まで出てこなかった癖に・・・まぁいいや。沖田さん、昨日は
追い出しちゃったりしてすみませんでした。」
「俺ァ傷付きましたぜィ。お陰で昨日から何も手に付かず、
絶賛昼寝タイム続行中でさァ」
「日頃と何も変わらねぇよ、ソレ。
って言うか結局昨日も仕事してねぇのかよ!!!」
そこまで言って新八が大きく息を吐く音がした。
あぁ、気持ちはよく判るぜ?
俺も盛大に吐き出したくて仕方ねぇ。
特に怒りを。
「ま、それなら暇してるって事ですよね?なら今日は僕の暇潰しに
付き合って下さい」
そう言って笑う気配がした。
「なんでィ、今日と言わず大抵暇してんじゃねぇか、新八は。
それに俺は今昼寝で忙しいんだがねィ」
「ならこの間の続きの遊びで良いですよ。沖田さんが寝たきりの植物人間で、
僕がそれを看病する弟ってやつ」
「あぁ、ドキ☆密着病棟24時・麗しき兄弟の絆は
治療費なんぞじゃ千切れない!!ごっこですねィ」
「あ、お菓子あります?付き添いつつ食べるんで」
「ん~、確か山崎からかっぱらったヤツが・・・」
その会話を最後に、パシリと障子が閉められる音がして俺達は漸う
身を潜めていた場所から体を出した。
・・・てかどんな遊びをしてやがるんだ、あいつ等は。
明らかにそれ、遊びじゃねぇだろ。
大きく落とした肩に、ポンと手を乗せられる。
見ればにっこりと笑い顔の近藤さんが。
それを見て再び大きく息を吐く。
「・・・なんかすっげー疲れたぞ、俺は」
「まぁいいじゃないか。平和な証拠だろ?トシ」
「・・・・まぁな」
とりあえず、自分の休みの日はいつだったか・・・と思い浮かべつつ、
微かな笑い声のする部屋の前を通り過ぎた。
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10代組は子供らしく(え?)日々遊んだらいいと思います。