[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
昼食の後片付けも終わり、暫しの休憩タイム・・・と、新八は
お茶を淹れて居間へと足を向けた。
勿論、ソファに座り込んでテレビの番人と化している銀時の分も持って。
「はい、銀さんお茶です」
そう言って目の前のテーブルに置けば、 おぉ と言う不明瞭な
返事が返ってくる。
どうやら完全に意識がテレビに行っているらしい。
・・・平日の昼間、こんなに真剣に昼ドラを見る
三十路前ってどうなんだろう。
人として・・・と言うか、
社会人としてそれはアリなんだろうか。
・・・ないな、うん。
とりあえず平日の昼間っからって所で既にアウトだろう。
いや、パチンコに行ってないだけマシかな?
・・・うん、そう思おう。
じゃないとなんか泣けてくるから。
新八は一つ息を落とすと、銀時と向い合わせのソファに腰を降ろし、
お茶を一口飲んだ。
と、その先で銀時が微かに首を傾げているのが見えた。
「どうかしました?銀さん」
問い掛けてみるが、銀時は首を傾げたまま視線を宙へと浮かべたままだ。
なんか変なトコでもあったんだろうか。
って、まさか出涸らしにも程があるのに気付いた!?
でも仕方ないじゃん、お茶だって買わなきゃ手に入らないんですよ!?
「いや・・・なんかさぁ・・・」
そんな事を考えていると、銀時は顎に手を当て暫し何かを考えると、
チョイチョイと新八を手招きした。
「なんですか、もう」
新八は 仕方ないなぁ。 とばかりに首を竦めると、腰を上げて
テーブル越しに銀時へと近付いた。
その瞬間、銀時の手が伸ばされ、頭を掴まれるとグイッと力強く
引き寄せられる。
「ぅわっ!ちょ、何すんですかっ!!」
慌ててテーブルに手を着き、抗議するが銀時はそんなものお構いなし。
新八の頭に鼻を埋めると、クンクンと小さく鼻を鳴らした。
そして、小さい声で やっぱり・・・ と呟く声が聞こえてくる。
「はぁ?何がやっぱりなんですか・・・ってかこの体勢きついんですけど」
「何がじゃねぇよ。オマエ、何だコレ」
そう言うなり、頭を掴んでいた銀時の手が新八の頬へと移り、
強引に自分の視線と合うよう、上げられてしまう。
「いたっ!ちょ、本当何なんですか、アンタ!」
ギリギリと頬を掴んでくる手に、どうにか体勢を整えている手を
片方開けて掴み返すが、そんなものでどうにか出来るわけもなく。
せめてもの抗議・・・とばかりに睨むが、それ以上の強さで
睨み返されてしまい、新八は訝しげに眉を寄せた。
それに気付いたのか、銀時は一つ息を吐くと、力を込めていた手を
少しだけ緩めて一言、 髪の匂い。 と呟いた。
「・・・・・・・・・・は?」
「だからぁ!髪の匂いだよ、匂い!
何時ものと違うじゃねぇか!」
銀時の突拍子の無い言葉に、新八が思わず間抜けな声を返すと、
そのまま掴まれていた顔をガクガクと揺すられてしまう。
「なんだ?おい。自分だけアレか?
サラサラ艶々ヘアーでも目指そうってのか!?
そう言うのは銀さんにこそ
必要なもんだろうがぁぁ!!!」
その叫びと揺れる視界を前に、そう言えば・・・と新八は昨夜の事を
思い出した。
そう、基本新八は銀時達が使っているのと同じ、家計に優しい
シャンプーを使ってたりする。
・・・まぁそれが髪にまで優しいのかは知らないが。
けれど昨夜は何時も使ってるのが切れて、前に街で貰ってきた試供品を
使ってみたのだ。
ちょっと何時もと違い、手触りが良くなってたんだよね、アレ。
値段はちょっと今のよりも高くなるが、そんなに気にしているなら
今度からはアレにしてみようか。
脳まで揺すられているせいか、そんな常に無い事を考えていると
不意に銀時の手が止められた。
・・・のに、なんだか揺れているような視界の中、銀時が
立ち上がるのが見えた。
そして頬を掴んでいた手が離され、今度は手を掴まれてしまう。
「え?銀さん?」
「・・・洗ってやる」
「はぁ!?」
そのまま手を引っ張られて、新八は訳が判らないまま銀時の後を
追う事なった。
「ちょ、洗うって何をっ!?」
「オマエの髪に決まってんじゃねぇか」
そう言う銀時の足は、確かに風呂場へと向っていてますます訳が判らない。
と言うか、行動自体は判ったが、目の前の男の思考が判らない。
ってか、そんなに気に入らないのか、サラサラヘアーになるのがっ!
やっぱりさっきの計画はなしね、なしっ!
寧ろ僕だけ変えてやるっ!!
そんな事を思いながら、なんとか足を踏ん張って抵抗するが、銀時の足は
止まらない。
ズカズカと進んでいく背中に、新八が声の限り文句を言おうとしたその時、
「ったく、なんなんだよ、ソレ。全然坂田家の匂いじゃねぇじゃん。
坂田家はなぁ、みんな漏れなくやっすいシャンプーの匂いで
統一してんだってぇの。それ以外の匂いなんて絶対ぇ認めねぇ。
認めねぇぞコノヤロー」
と、ブツブツ文句を言い続ける銀時の声が耳に入り、
新八はポカンと口を開けただけとなった。
そして徐々に頬に熱が集まってくるのを新八は感じ、急いで下を向く。
・・・なんなんだ、この人。
恥ずかしいって言うか馬鹿って言うか。
これじゃあずっと同じのしか使えないじゃん、僕。
そんな事を思いながら、新八は未だブツブツと文句を言い続けている
背中に一つ、軽いパンチを送った。
**************************
坂田家のルール(笑)