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さぁ、羽根きりをしよう。
ゆるりと笑った俺に、新八はコトリと首を傾げると、
俺の頬を軽い音と共に両手で挟んだ。
「目が覚めました?なんか変な顔してましたよ?」
変な顔っておまっ・・・
いやいや、お前の方がちゃんと目、覚めてるか?
今すっごく微妙な雰囲気だったんじゃね?
頼むから空気読んでくださいっ!
だが、新八は読むどころかサラッと流してくれたようだ。
再びくるりと窓の方へと視線を向けると、それよりも銀さん。と、
クイクイと俺の腕を引っ張った。
なんなんだよ、一体。
髪をガシガシと掻きながら、言われた通り窓の外へと視線を
向けると、ソコにはスズメやカラスと言った鳥とは全く違う、
小さく可愛らしい小鳥が。
「どっかで飼ってる鳥ですかね?」
可愛いな~。とにこやかに見詰める新八だが、俺の気分は最悪だ。
きっとあの小鳥は逃げてきたのだ。
狭い籠から、扉を開けて違う世界へと飛び立ってきたのだ。
先程殺がれてしまった感情が、再び頭を擡げて来る気配がする。
やっぱりダメだ。
あの小鳥のように、飛び立たれた後じゃ遅すぎる。
だから、今すぐ・・・
そう思い、視線を新八へと戻すと、微かな羽根音が聞こえた。
そして小さな新八の声も。
見れば小鳥はもう飛び立った後で、その場には何も残っていなかった。
「あ~あ、帰っちゃった」
残念そうに呟く新八の声に、俺は思わず眉を顰めた。
「帰ってはねぇだろ。だって逃げてきたんだぜ?」
なら、飛んでっただ。そう告げる俺に、新八はキョトンと目を丸くした。
「なんで逃げてきたんです?」
「なんでって・・・そりゃぁアレだろ?狭い籠の中が嫌になったとか。
外に出てみたい・・・とか」
そう、狭い世界に閉じ込められてたら嫌にもなるだろう。
目の前に広い世界へと通ずる扉があったら、出て行きたいと思うだろう。
だから扉を開け、出て行ってしまうのだろう。
自分で口にしておきながら、その言葉に唇を噛み締めてしまう。
そう、お前も何れ気付くんだろう?
自分の目の前にある、広い世界へと続く扉の存在を。
そして出て行ってしまうんだろう?
この、酷く狭い俺の世界から。
だから俺は、そうなる前に・・・
「ん~、でももしそうだとしても、きっと帰りますよ」
新八の言葉に、思わず落としてしまった視線を上げれば
そこには澄み切った空を見上げる、まっすぐな顔が。
「だって扉は出てく為だけにあるんじゃないでしょ?
帰る為にも必要なものなんですから」
だからきっと帰ります。そう言って笑う新八に、俺の中で
何かがポロリと剥げ落ちた。
だってお前、折角広い世界に出れたのに。
「帰る場所がなかったら、何処にも行けませんよ」
自由になれたのに。
「なら帰るのも自由ですよね」
狭い籠の中なのに。
「でも、好きな人が居ればそれで十分でしょ?」
新八が何か言う度に、俺の中の何かが剥がれ落ちていく。
あぁ、ならばあの小鳥は・・・
「見付かったって言うなら、きっと戻ってきたんでしょうね。
だって鳥ですもん。本当に逃げたなら見付かりっこないですよ」
夢にでも見て心配しちゃったんですか、その小鳥を。
新八はやんわりと笑みを浮かべると、労わる様に俺の頬へ
そっと手を当ててきた。
「大丈夫ですよ。そりゃ鳥ですから飛びたくもなるかもしれませんが、
同じように飛んで帰ってきますよ」
柔らかい言葉と同じように、やんわりと頬を撫でる手に、
ポロポロと全てが剥がれ落ちていった。
そうか、帰ってくるのか。
出て行っても、ちゃんと帰ってくるのか。
俺は頬に当てたられ新八の手に自分の手を重ねると、縋りつくように
その手を握り締めた。
ならば・・・と、ゆっくりと口を開いていく。
お前もちゃんと帰ってくるのか。
紡がれた俺の言葉に、新八は一瞬目を見開き、次にくしゃりと
顔を綻ばせた。
「当たり前でしょ。だってここが好きなんですから」
毎日なんで来てると思ってんですか。そう続けられ、
俺は腕を伸ばすと、目の前の新八をやんわりと抱き締めた。
そして思う。
爺さん、アンタはやっぱり馬鹿だ。
そんな事をしなくても、小鳥はちゃんと戻ってきてたのに。
小鳥、お前も馬鹿だ。
戻るなら、こいつみたいにきちんと戻ってきておけ。
そして俺も馬鹿だ。
コイツはいつだって自分で出て行き、毎日戻ってきていたのに。
どれだけ時間が経ったのか、痺れを切らしたらしい神楽の怒声が
居間から聞こえてきた。
新八はそれに慌てて答えると、俺の腕の中からすり抜け、
足早に居間へと向う。
それを少し寂しく思いながらも、元気良く羽ばたいてる姿に
心は穏やかだ。
この腕から出て行く時もあるけれど、同じ足でこの腕の中にも
戻ってくるのだ、あの小鳥は。
後を追うように居間へと向う俺の後ろで、
優しげな小鳥の声が聞こえた気がした。
あぁ、でも、もし戻ってこなかったらどうしよう。
やっぱり、ここが好きならずっと居てくれねぇかな?
剥がれ落ちた何かが、重なり合ってカサリと音を立てた。
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Mag.様、素敵選択肢、有難うございます~vvv
ぶっちゃけどれも好み過ぎて選べず、ループENDに(笑)
こんな感じの続編になりましたが、少しでも楽しんで頂けたら
嬉しいですv