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巡察中、ふと見慣れた姿が目に入った。
その姿に、土方はピタリと足を止め、ピクリと眉を上げた。
遠くではあったが、それは確かに沖田で、思わず何時もの癖で
怒鳴りそうになった土方だったが、沖田の格好が隊服ではなく、
私服である事に気付き、そう言えば今日は非番だったか・・・と
これまた何時もの癖で握り締めていた刀から手を離した。
「あのヤロー、サボりまくってる癖に、休みもきちんと取りやがって」
と、怒りも沸いたのだが、態々自分から血圧を上げに行くのも
馬鹿らしい。
土方は新しいタバコに火を着けると、そのまま巡察へと
戻ろうとした。
・・・が、沖田の隣に居る、これまた見慣れた姿に再び足を止めた。
沖田の隣に居る人物、それは何かと縁のある少年、志村新八で。
そう言えば良く一緒に遊んでいるとか言ったっけ・・・と土方は
以前新八から聞いた事を思い出した。
その時は、まさかあの沖田が、しかも属性が全く違うだろう
新八と共に遊ぶサマが想像出来ず、
遊ばれてるの間違いじゃないのか?
とも心配になったのだが、いざ目の辺りにしてみれば、中々どうして。
「普通の友達に見えるじゃねぇか」
そう呟き、ユルリと口元を上げた。
元々同年代が周囲に居なかった二人だ、例え属性が違っても、
気が合うのだろう。
視線の先で、楽しそうに何かを話している二人が見える。
・・・まぁアレで少しはこちらに向けてくる殺意を
控えてくれるといいのだが・・・無理だろうなぁ。
付き合う人物によって、雰囲気が変わる事もあるだろうが、
多分沖田は何処まで行っても沖田だろう。
せめてその属性が、新八にまで移らなければいいのだが・・・
そう思っていると、少し先で土方を待っていた山崎が足早に
戻ってきた。
「どうかしましたか、副長・・・ってあれ、沖田隊長と新八君じゃないですか」
うわ~、やっぱり一緒に遊んでるんだ~。そう言って心配そうに
眉を下げる山崎に、土方は訝しげな視線を向けた。
どうせコイツも自分と同じような事を考えていたのだろう。
山崎の表情からそんな事を読み取り、土方は吸い込んだ煙を長々と
吐き出した。
「別に一緒に遊ぶぐらいはするだろう。いいんじゃねぇか?
新八も嫌がってなさそうだし」
「まぁ嫌がってはないみたいですけどね。新八君、今まで同年代の子と
遊んだ事がないそうなんで、色々と物珍しいみたいですし」
でも・・・と口篭る山崎に、ついイラッと来る土方。
「なんだよ、言いたい事があんならさっさと言いやがれ。
・・・ってあぁ、アレか?総悟がなんかいらん事教えてるとか
そんなトコか?」
先程自分が考えていた事を口にし、土方は小さく肩を落とした。
やはり、傍からはどう見えようが、
沖田はS星出身の生粋のS王子だ。
色々と教育に悪い面もあるだろう。
だが、子供同士の遊びに大人が態々口を出すのも・・・
いや、そう言うのならば返って出さないといけないものだろうか。
そう考えていると、困ったように笑う山崎が、
「いらん事と言うか・・・まぁ遊びなんですけどね?」
そこまで言うとキョロキョロと周囲を見渡し、土方の耳へと
口を近付かせ、コソリと言葉を吐き出した。
「実は最近、ケイドロにハマってるらしいんです」
その言葉に、土方は一瞬目を見開く。
ケイドロ・・・ケイドロってアレか?
確か警察と泥棒役に別れて、捕まえたり逃がしたりする遊びの事か?
アレ?でもそれってこんなにコソコソと言う遊びだったか?
真面目なツラで報告するような事だったか?
それとも地域によって呼び名が違うように、俺の知ってるのとは
違うのがあるって言うのか?
グルグルと考え出す土方の横で、姿勢を元に戻した山崎が
小さく息を吐いた。
「ま、普通のケイドロだったらいいんですけどね・・・
リアルがつくんですよ、あの二人のケイドロには」
「・・・はぁ?」
思わず見返せば、何故だか山崎は遠くへと視線を飛ばしていた。
「きっとアレですね。今も潜伏中の攘夷浪士かなんか
追ってんでしょうね、あの二人・・・」
ちなみにこの間沖田隊長が捕まえてきた攘夷浪士は、
あの遊びの成果だそうです。
ははは。と乾いた笑いと共に言葉を吐き出す
山崎から目を逸らし、土方は急いで先程の二人へと視線を向けた。
そう言われてみれば、確かに二人は止まったり歩き出したり・・・と
妙な感じで動いている。
しかも、どんなに和やかに話していようとも、視線はチラチラと
ある方向から動いておらず。
自分はと言えば、攘夷浪士が潜伏しているかもしれない・・・と言う
情報の元、ここら辺を巡察していたりする訳で・・・
「リアル過ぎるわその遊びぃぃぃ!!!」
叫び声と共に、土方は視線の先に居る悪ガキ共へと突進して行ったのであった。
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ウチの所ではケイドロと呼んでました。