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「たでぇまぁ~」
銀時はそう口にしながら、ダルそうにブーツを脱ぎ捨てた。
簡単な仕事だから・・・と一人で行ったのはいいが、思っていたよりも
時間が掛かってしまった。銀時は疲労を感じながら帰途に着いたのだが、
答えの返って来ない室内に、訝しげに眉を寄せる。
「あ?おいおい、誰もいねぇのかよ」
何時もなら、新八が直ぐに顔を出し出迎えてくれるというのに・・・
銀さんのお帰りですよ~。と、再度声を出すが、やはり何も返って来ない。
「神楽は・・・どうせ遊びに行ってんだよな、うん。じゃあ新八は・・・」
買い物か?とも思うが、先程自分は鍵を使わずに扉を開けた。
年の割りにしっかりしているあの少年の事だ、鍵を締めずに
外出する事はないだろう。
見れば、玄関には見慣れた草履がきちんと置いてある。
ならば、この中に居る事は確実だ。
「んだよ、シカトかコノヤロー」
銀さん泣いちゃうぞ~。そう言いながら頭を掻き、家の中へと足を進めた。
「・・・あれ?」
てっきり大好きなお通のCDでも聞いてて、自分の帰って来た事に
気付かないでいるのだと思っていた銀時は、誰もいない居間を見て
首を傾げた。
ならば・・・と、台所に顔を出してもその姿は見えず、微かに首を傾げる。
「お~い、新八ぃ~」
次に風呂場を見るが、ここにも求めている姿はなく、家の中を
捜し歩く銀時の足は、止まろうとしない。
しかし厠も、神楽の寝起きしている部屋も見たが誰も居ない。
「んだよぉ、物騒だなぁ、おい」
泥棒に入られるだろうが・・ってまぁ盗られるもんなんてねぇけど。
そう軽口を叩きながらも、銀時の表情が強張っていく。
別に誰も居ない家に帰って来たことなんて、今日が初めてではない。
そうだ、やっぱり買い物にでも行ったのだ。
それか近所か、下のお登勢の所にでも。
もしかしたら、神楽も一緒に。
いや、神楽はやっぱり定春と遊びにでも行ったか?
けれど、大抵そう言う時は書置きがしてあって。
近所に行くのにも、きちんと鍵も閉まってて。
玄関に、普通なら履いていくだろう草履なんかも置いてなくて。
と言うか、草履も履かないでドコに行くというんだ?
押さえ込もうとしても浮かんできてしまう嫌な予感に、
銀時は歩き回る足を速めていく。
だって、確かに金目のもんは置いてない家だけど、
大切なヤツラが居る家なのだ。
「新八!」
最後の頼みとばかりに居間を横切り、和室へとやって来たが、あるのは
布団と畳まれた洗濯物のみで、銀時は軽く目を見開いた後、ツッと
顔を俯かせた。
「おいおい・・・マジかよ」
窓まで開いてんじゃん。銀時はヨロリと壁に体を凭れ掛からせ、
ギリッと唇を噛んだ。
耳を澄ませても何も聞こえない。
聞きなれた音の気配を感じられない。
その事に、銀時はスゥッと体が冷えていくのを感じた。
「っざけんなよ、おい!」
力任せに壁を叩けば、傍の押入れ中から ぅわっ!! と言う待ち望んだ声がした。
一瞬、思いもしなかった所からの声に驚き、固まった銀時だったが、
直ぐにその強張りを解き、勢い良く押入れの襖を開けた。
「新八!!?」
「ふぇ??」
そこに居たのは、如何にも起き抜けの顔をした新八で。
上半身を起こした状態で、目をゴシゴシと擦っていた。
「あれ?僕、寝てた・・・?」
「寝てたってオマ・・・」
銀時は安心するやらムカつくやらで、力が抜けそうになる体を
押入れの縁に掛かっている手でなんとか支え、大きく息を吐いた。
そんな銀時の心情も知らず、新八は押入れの入り口を塞いでいる銀時に
気付くと、
「あ、銀さん。帰ってたんですね、お帰りなさい」
ニコリと微笑んだ。
新八のその言葉に、銀時は暫し間を置くと再び大きな溜息を吐き、
押入れの上段にいる為、何時もと違って自分より高い位置にある新八の
頭を強く引き寄せて、自分の肩口へと押し付けた。
「わっ!なんなんですか、一体!!」
「何なんですかはコッチの台詞だ、コノヤロー。
こんな所で何やってんのよ、オマエ」
「こんな所・・・?」
銀時の言葉に新八は軽く目を瞬かせると、抱き寄せられている為動けない
頭の変わりに視線をやり、今居る場所を確認する。
そして自分が居る場所を思い出すと、小さく声を上げて居心地悪そうに
銀時の腕の中でもがいた。
しかしそれを許すはずもなく、銀時は無言で抱き締める腕に力を込める。
新八は無言の攻撃に根を上げ、額を銀時の肩口に押し付けながら
言い難そうに漸く口を開けた。
「いや・・・あの別に意味はないんですけどね?お布団干したから
入れようと思ったんですけど、空いた空間見てたら、子供の頃を
思い出しちゃって・・・つい入っちゃいました」
で、眠っちゃったみたいです。と、自分でも子供じみた事をしたと
恥じているのだろう、未だモゾモゾと動きながら告げる新八に、
銀時はこの日何度目になるか判らない溜息を吐いた。
「何してんのよ、オマエ」
「う・・・・すみません」
驚かしちゃいました?そう言って顔をこちらに向けてこようとするのを、
銀時は抱え込むようにして防いだ。
「当たり前だろ、馬鹿」
驚いたなんてもんじゃない。
本当、何してくれちゃってるのよ、オマエ。
帰ってきても一人なんて。
呼びかける名前すらなくて。
この万事屋に一人なのが当たり前で。
それが少し前まで普通だった筈なのに。
帰っても誰も居ない事に驚き。
呼んでも返事がない事に慌て。
嫌な想像ばかり浮かんでくる事に焦って。
「ざけんな、ボケ」
あぁ、もう一人なんて本当、無理。
こんなにした責任、取りやがれ。
「ボケって・・・ちょっとした懐古心じゃないですか」
て言うかこの体勢キツイんですけど。と、体の間で挟まっていた手を銀時の
後ろへと伸ばし、無造作に跳ねている髪を軽く引っ張った。
丁度その時、玄関が開く音と呑気な神楽の声が銀時達の耳に入ってきた。
「え、うそ!もうそんな時間!!?」
慌てる新八に銀時は漸く体を離し、新八の脇に手を差し入れると
押入れから引っ張り出した。
・・・が、降ろす事はせず、そのまま片手で担ぎ上げると、
ゆっくりとした足取りで玄関へと向かい出す。
「ちょ、銀さん!!?下ろしてくださいよ!!」
「ダメです~。銀さんを驚かした罰ですぅ」
もう銀さん完璧寿命縮んだから。そう言って新八の言葉を無視すると、
居間に入った所で帰って来た神楽と顔を合わせた。
「何やってるアルカ?」
「あ、神楽ちゃん!」
「おぅ、神楽。お帰り~」
不思議そうに、暴れる新八とそれを抱える銀時を見た神楽だったが、
その銀時がコイコイと手招きしたので、素直に二人の元へと近付いていった。
「何ヨ?」
カクリと首を傾げると、銀時は少しだけ身を屈ませると、新八を抱き上げている
方の手と反対の手を神楽の腰へと廻すと、そのまま肩に担ぎ上げた。
「おせぇんだよ、この放蕩娘がぁぁ!!」
「ぅおっ!!何アルカ、銀ちゃん!何かの遊びアルカ?」
どこか嬉しげな声の神楽に、銀時は ば~か。と小さく息を吐くと、
「お仕置きだよお仕置き。お前らね、銀さん今日何してきたと
思ってんのよ。仕事よ仕事。」
も~、疲れまくって泣きそうよ?そう言う銀時に、新八が呆れたように
声を出した。
「なら尚更下ろして下さいよ」
僕、夕飯の支度しなきゃ。新八の言葉に、逆さになっていた神楽が頭を
上げた。
「え、私はや~よ。銀ちゃん、序にグルグル回るヨロシ」
「んだよ、お仕置きの最中に命令ですか、コノヤロー」
そう言いながらも、勢い良く回り始める銀時。
「わっ!!あぶ、危ないって!銀さん!!!」
「キャッホゥゥゥ!!」
慌てて銀時の頭にしがみ付く新八に、楽しげな声を上げる神楽。
傍らに佇んでいる定春も、合わせる様に尻尾を振っていて。
「うっせー!もっと泣き叫びつつ笑って吠えろやコノヤロー」
「え?何その無茶な要求!!」
戻ってきた賑やかな音に、銀時はこの音が何時も自分の傍に
ありますように・・・と回る速度を上げ続けた。
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ヘタレ坂田万歳☆(笑)
て事で、多分春雨後ぐらいの時期で。
奥さんと娘の存在を有難がれ、坂田(え?)