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「あぁ!?」
「げっ」
「ひぃっ!!」
巡察の途中、嫌なやつと会った。
その時、隣から小さな悲鳴のようなものが聞こえた気がしたが、
気のせいだろう。
って言うか、顔こわっ!!とか言ってんじゃねぇよ、山崎。
叩っ斬るぞ、コルァ。
「あ~あ、怖い世の中だねぇ。警察がスラッと殺人予告かよ。
って言うか平凡なる一般市民にメンチ切んのやめてくんない?」
投書するよ、投書。肩を竦ませ、ヤレヤレとばかりに大袈裟に
首を振る銀時に、土方の眉尻は上がる一方だ。
「誰が一般市民だ。
真なる市民に土下座して謝り倒せ、コノヤロー」
「オマエさぁ、何時も思うんだけど血圧高くね?
アレだよ?ただでさえマヨなんてコレストロールの塊ばっか
食ってんだから、何れプチッといくよ?プチッと」
ならばいっそ今ブチッと逝ってしまえ!とほざく銀時に、
「よ~し、なら首出せ。お望みどおりブチッと逝かせてやる」
と、刀に手を掛ける土方。
そんな二人を止める事も出来ず・・・と言うか間に入りたくないので、
山崎はソロソロとその場から後退して行った。
これで屯所に戻る時間がまた遅くなるなぁ・・・と深い溜息を
吐きながら。
「あれ?何してるんですか?」
確実にジワジワと一触即発な二人から距離を取っていた山崎の背後から、
まだ男性としては少し高い声が掛かる。
その声に縋る様に振り向けば、其処には今の状況に於いては救いの女神とも
言える少年の姿が。
「し、新八くん!!」
「え?なんで涙目!!?」
何故自分にこんな目を向けられるのか判らない新八は、無意識にその場を
後ずさるが、ガシリと山崎に肩を掴まれ、身動きが出来なくなってしまった。
「滅茶苦茶会いたかったよ、新八くん!!」
山崎としては、これでまた巡察に戻れる。とか、この人外魔境から
脱出できる!とか、さぁ、得意のツッコミでこの馬鹿二人を止めてくれ!!
とか、そんな色々な想いから出た言葉だったのだが、そんな言葉にしていない
気持ちが周囲に判る筈もなく・・・
「え?え?いや、そう言って頂けると嬉しい・・かな?ですけど・・・え?」
訳の判らない新八は、大きな目をキョロリとさせ、小さく首を傾げた。
あ、可愛い。
思わず今の状況が頭から抜け落ち、目の前の幸せに浸りそうになる山崎に、
物凄い勢いで殺気が飛んでくる。
なんか・・・半端ないんですけどぉぉぉ!!?
先程とは違った意味で涙ぐむ山崎を尻目に、新八がその肩口から
顔を出せば、そこには見慣れた黒服と自分の上司が。
「あれ?二人とも何してるんですか?」
「それはこっちの台詞でしょ?何不審人物に手を握られてんのよ。」
おい、あぁいうのを捕まえるのが仕事でしょ、さっさと裁けよ。
そう言って隣に居る土方を促せば、
「オメェに言われるまでもねぇよ。問答無用で逮捕の上切腹だな」
と答え、収めていた刀に手を掛ける。
「て、何言ってんですか!!こんな事ぐらいで」
全くもう冗談ばっかり言って、一々ツッコむのも疲れるよ。そう呟き、
山崎に苦笑を向ける新八だったが、山崎は知っていた。
・・・九割がた本気であろう事を。
しかし、(多分あるであろう)一割の冗談に祈りを寄せ、引き攣る頬を
なんとか苦笑へと変える山崎であった。
「で、土方さんと山崎さんは巡察ですよ・・・ね?」
じゃぁ銀さんは?と問い掛ける新八に、銀時はガシガシと頭を掻くと、
「・・・散歩?」
と、首を傾げた。
「なんで疑問系?って言うかそんなフラフラしてんなら
買出しぐらい付き合ってくださいよ!」
今日たくさん買ったから重いんです!そう言って新八は持っていたビニール袋
の一つを銀時に押し付ける。
「んだよ、これ。買いすぎじゃね?」
「特売日の有り難味を心の底から味わってください」
って言うかこういう時に買い溜めしとかないとヤバイんですけど、ウチ。
そう言ってジットリと銀時を睨み付ける新八に、銀時はそ~っと視線を
逸らすと、押し付けられた荷物ともう一つ、余分に受け取り、
じゃ~なぁ。とだけ告げ、さっさと土方達に背を向け歩き出した。
「ちょっ、えっと、じゃあ失礼します」
お仕事頑張ってくださいね。新八慌てては土方達に軽く頭を下げると、
先に行く銀時の背中を小走りに追いかけて行く。
「買出しって言ったって、どうせ殆どヤツラのもんばっかだろうに」
アイツも苦労してんなぁ。遠くなっていく後姿にしみじみと呟き、
自分も職務に戻ろうと、その場を後にしようとした。
その時、隣で山崎が何かを思い出したように、短く声を上げたのが耳に入った。
「あ?なんだよ」
問い掛ければ、山崎は、確か前にも・・・あれ?だけど・・・
等と一人で首を傾げている。
それに無言で拳を振り下ろし答えを促せば、叩かれた頭を摩りながら、
たいした事じゃないんですけど・・・と、思い出したことを話し出した。
「この間、やっぱり両手に買い物袋携えた新八君に会ったんで、
半分持ってあげてたんですけど、途中で旦那に会いまして。」
で、丁度今みたいなやり取りがあったような・・・と言う山崎に、土方の
眉尻が上がる。
「別に帰るトコが同じなんだから、会えば荷物ぐらい持たせるだろう」
「いやいや、そうじゃなくてですね?」
山崎は慌てて両手を振ると、その指を折りながら話を続けた。
「なんかその前にも見たような・・・ん?確か一週間前もあんなのが・・・
アレ?待てよ、その三日前も・・・」
「・・・なんでオマエがそんな事知ってんだよ」
「マヨ買いに走らせてんのは誰ですか。
俺はほぼ毎日ですけどね、新八君は主に特売日に来てるみたいで
そう言う時はよく沢山買い込んでて・・・て、そうだ!
特売日ですよ、特売日!
その日には大抵新八君と散歩中の旦那に会うんですよ」
なんか引っかかってたんですよね。と言って、
これですっきりしたとばかりに笑う山崎。
それに対し土方は、ほんの少し目を見開くと、ちらりと視線を後ろへと
向けた。
そこにはもうかなり小さくなった目立つ銀髪と黒髪が、仲良く並んでいて。
「それにしても旦那なりの規則性があるんすかね、散歩の。
それ以外の日ってあんま見た事ないですよ、俺。」
なら一緒に買出しぐらい行ってあげればいいのに。
そう言って苦笑する山崎に、土方はタバコを取り出して火を着けると、
「そこまで素直にはなれないんだろう、馬鹿だから」
「何がですか?」
土方の言葉に首を傾げる山崎を横目に、多分次の特売日にも
『散歩』をするのであろう銀髪の男の姿を想像した。
何だかんだ言って、気付かないあの少年も相当鈍いが、
一々理由を付けないと動けないあの男も相当なものだ。
まぁ、これで一つ、確実にあの男を言い負かせる弱みを握ったのだが・・・
土方は吸い込んだ煙をゆっくり吐いて、口元を緩ませた。
「ま、武士の情けだ」
今はまだ黙っててやろう。と、隣を歩いているのにも関わらず、
僅かに距離が離れている二人を見送った。
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ちなみに新八は言うだけ無駄だと思ってるので、
さっさと一人で買出しに行きます。
そして自分からは一緒に行ってやると言い出せない坂田。
って言うかストーカー一歩手前な坂田(笑)