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「メ~ガ~ネく~ん、あ~そび~ましょ~」
チュンチュンと小鳥の鳴き声に交じり、黒い隊服に身を包んだ沖田が
既に近藤回収の為、通い慣れた志村家の門前で声を張り上げていた。
が、返答はなく、沖田は口元に手を当て、より大きな声で呼びかけてみる。
「お~い、メ~ガ~ネく~ん。あっそび~ま・・・」
「って、誰がメガネだコラァァァァ!!!」
「なんでぃ、居るなら早く出なせィ。客は待たせるもんじゃねぇよ」
勢い良く玄関に姿を現した新八に文句を言いながら、沖田は門を潜る。
それに新八はカクリと肩を落とすと、同時に落ちた眼鏡を押し上げた。
「客ってアンタ・・・今何時だと思ってんですか」
「七時」
サラリと言ってのける沖田に、新八の肩は益々下がる。
「・・・今日は近藤さん、来てませんよ?」
「知ってますぜ?明け方近くに路上で瀕死な所を回収しやしたから」
「じゃあ何の用なんですか?」
首を傾げる新八に、沖田は大袈裟に息を吐き、肩を竦めて首を振った。
「あれだけ言ったじゃねぇですか、聞いてなかったんですかィ?」
仕方ねぇな~ と沖田は再び口元に手をやり、
「メ~ガ~ネく~ん、あっそび~ま・・・」
「声が大きいっ!ってか名前呼べよ、せめて!!」
新八は慌てて沖田の口に手をやり、声を塞いだ。
「なんでィ、アンタが聞いたから言っただけですぜ?」
「いや、大声で言わなくてもいいですよね?
僕との距離、見えてますよね?」
「ばっちり見えてまさァ。中々心躍る距離でィ」
「踊るのは心だけにしといて下さいね。て言うかまだ姉上寝てるんですから
静かにして下さいよ」
ただでさえ帰ってきた時機嫌悪かったんだから。心なしか顔色を青くし、
そう言う新八に、そりゃ~危ない。と、声を潜めた。
沖田の仕草に新八は苦笑し、再度沖田に用件を聞いた。
すると沖田はキョトンと新八を見返し、
「だから遊びに来やした」
と簡潔に答えたのだった。
「昨日ちょっとしたお遊びを土方の野郎に仕掛けたら、あのヤロー逆ギレ
しやがって、偶には健全な遊びをしやがれっ!なんて言うもんだから
実行しようと思ってよ」
とりあえずあのままでは妙が起きて来てしまう可能性が高いので、
新八は沖田を家の中へと招いた。
そしてお茶を出しながら、遊びに来た理由を聞いた所、そんな答えが帰って
来たのだった。
沖田の言葉に、新八は深く息を吐いた。
この場合、迂闊な事を言った土方を恨めばいいのか、それとも
半ば確信犯的な行動を起こし、自分を巻き込もうとしている沖田か・・・
・・・勿論後者だよね。
と言うか、きっとちょっとしたものでは済まなかったであろう目に合った
土方に同情してしまう。
ただでさえ忙しそうなのに、こうやって沖田さんに絡まれてるんだもんな、
味覚も変になるよね。
・・・って言うか・・・
「沖田さん、今日の仕事は・・・」
「子供は遊ぶのが仕事でィ」
・・・やっぱり。
予想していた答えだったが、そんなにあっさりと、しかも見目の良い笑顔で
返されると力も抜けるというもの。
新八は出て行きそうになる溜息を無理に吸い込み、腰を上げた。
「とりあえず僕、洗濯物干してきますんで」
そう言う新八に、沖田はおや?と言う顔をする。
「今日は万事屋に行かないんで?」
「えぇ、仕事もないんでお休み貰ってたんです。と言うか、僕が
仕事だったらどうするつもりだったんですか?」
新八の問い掛けに、沖田はニヤリと笑うと、
「勿論初志貫徹でさァ。言っただろ?子供は遊ぶのが仕事なんでィ」
って事でさっさと用事済ませてきなせェ。そう言い、ゴロリと畳みの上に
寝転んだ。
「僕の意思は無視かよ!」
全くもう!そう文句を言いながらも、ヒラヒラと手を振る沖田に一つ苦笑を
零すと、予定していた家事をこなす為、部屋を後にした。
「お~い、起きてますか~?」
一通り家事を済ませ、帰ってきた部屋で相変わらず寝転んでいる沖田に声を
掛ける。
すると、寝てますぜェ。と、目を瞑ったまま答えが返ってきて、新八は
屈みこんで沖田の目の前で振っていた手をパチンとその額に下ろした。
「ってぇなァ。平和主義の俺に暴力振るうとは、見かけによらず
Sだねェ」
「あんたのその発言の方が暴力的ですよ、主に精神面に。
それより起きて下さい」
遊ぶんでしょ。新八の言葉に沖田は目を開けると、屈みこんでいる新八を
見上げ、ニッと笑う。
「中々積極的だねィ、じゃあ子供らしくお医者さんごっこでも・・・」
「それ、健全でもないし
子供らしくもないですからね」
「何言ってんでぃ。そんな不健全じゃなくて、ただ純粋に人体の不思議を
内臓奥深くまで知りたいと言う、果てしなく健全且つ、
子供の純粋な知的好奇心を擽る遊びでさぁ」
「いや、それ全然健全じゃないですよね!?って言うか明らかに
死亡フラグ出てんじゃねぇかっ!!
不健全通り越して怖いわっ!!」
「なら違うお医者さんごっこ(深夜枠)で」
「おぉぉぉいっ!()の中を取れぇぇぇ!!」
叫び終わり、新八は肩を落とすと沖田の上からどき、そのまま同じように
ゴロリと畳みの上に寝転がる。
・・・朝からなんでこんなに疲れてるんだろう、僕。
「はぁ・・・で、結局どうすんですか」
そんな新八に、今度は上半身だけ起こした沖田がにじり寄り、上から
覗き込む。
「じゃあチャンパラごっこ」
「・・・アンタ、本気だすでしょ?」
出された提案に胡散臭げに見返せば、言い出した本人はニッコリといい笑顔
を浮かべた。
「遊びは本気でやるもんですぜィ?」
「やっぱりかぁぁぁ!
アンタそんなに僕を甚振りたいんですか!!」
「いやいや、そんな事ないですぜィ?怪我した後は勿論
お医者さんごっこに変更・・・」
「そっから離れてぇぇぇ!!!」
「なんでィ、新八は文句ばっか言いやがって」
「いや、当たり前ですからね?文句でもないですからね?」
ムッと口を尖らす沖田に、新八はツッコミを入れながらもなんだか可笑しくて
クスリと笑う。
だって平日なのに、サボリ確定の沖田と二人で部屋でゴロゴロして・・・
おまけに何で遊ぶか言い争って。
周囲に同年代があまり居なかっただけに、この状況は少しばかり
照れ臭い・・・が楽しい。
「まぁ、まだ時間もありますし、ゆっくり考えましょうか」
こうして考えるのも楽しいですし。ニコニコと笑う新八に、
口を尖らしていた沖田も漸く頬を緩め、
「同感でさぁ」
そう言って、年相応の笑みを浮かべた。
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10代トリオが大好きです(今回神楽が居ないけどι)